ふるらんは部屋の中を歩いていて、そしてドアを開けてはその部屋と通り、いろんな部屋と通り・・・
その部屋の中には
「どうやって出るんだろう・・」とか
「ここにいるしかないんだよ」とか、
「外に出たって嫌なことばかりだし・・」とか
「もっとお金があったら自由になれるのに」とか、それぞれの部屋でぼやいている人がいました

でも数人はいろんな扉を開けて、驚いたり、泣いたりしていましたが、開けて通過するたびに「大人のステキな顔」になったり、気迫が強くなったりしていました。
(このとき「与えられるのではなく、経過が自分を変えるんだ・・」と思いました)
ふるらんはやっと外に出て・・・日差しを浴びました。
木漏れ日がキレイ・・・・
テニスの道具を入れるようなスポーツバッグのような大きなバッグが積んであって・・それをバスに乗る人がそれぞれ自分のバッグを持ってバスに乗り込んでいます
前に数台の大型バスが止まっていて、路線が書いてあって・・・
ふるらんも自分の荷物を・・と思うと、無い。
あれぇ・・困った。
「ふるらんのが無いんです」と言うと運転手さんが
「あなたのは違うところにあるので、今探させますね」と言いました。
すると少しして・・他の職員さんがふるらんの荷物を持ってきました。
バッグは大きいのですが、中身は少ないので軽い
他の人を見ていると大きい袋で中身が少ないのに
「重い・・」とか、大きい袋で中身がパンパンなのに「軽いのよ~」と言っている人とか、大きい袋と他にも袋を持っていて「仕方ないのよ」と言っている人とか・・います。
ふるらんが自分の袋を揺さぶっていると運転手さんが
「前はパンパンだったけど、減ったんだよ」と言いました
友達が71番の路線のバスに乗り込みました。
それを見て、ふるらんも自分の路線と同じなので乗りました。
友達が数人います。
(もう十数年会ってないけど・・元気なのかな?)
ふるらんは一人で座ることにしました。
でも・・何か変。
一応路線を確認しました。大阪市内をあちこち回るバスです。
「ん・・なんか違う」
思い切って降りました。
そして72番のバスを見ると
「大阪市○○区(ふるらんのすんでる区)循環」と言うバスで・・・
「大阪○○区-○○大社ー京都○○ー○○教会ー東京○○○」を循環、と書いてあります。
あ、これでいいわ、と思い、運転手さんに「よろしくお願いします」言って乗り込みました

乗ってるのは数人。
ふるらんとおばさん2人。
おばさん2人は
「この路線は家に着くまで時間がかかるけど楽しいのよね。でも変わり者しかのらないけれど。ただ、何回乗っての飽きないしね~」
運転手さんが笑っています。
そして振り返って
「この路線は道は悪いけど、たどり着くまでの景色は楽しめますよ。なにせ一番遠い路線ですけど、一番近い路線ですからね」。
走り出して少しすると都会の風景から緑の風景に変わりました。
帰るのは○○区のはずですが、道は山の中の○○大社へ向かっています。
点在する民家を見ながら
「あ・・このおうちはここの土地を守ってきたんだなぁ・・」と思いました。
おばさんが
「生きてるっていいわね~こうやっていろんな景色が見れるんだから」と言いました。するともう一人のおばさんが
「そうね~他の人はまっすぐ帰宅だけど、私たちはこうやっていろんなものを見る道を選んだしね」。
ふるらんはそれを聞いてうんうん、とうなずいていました。
おばさんが
「ねぇあなたはさっきの部屋をどうやって出ようとしたの?」と聞きました。するともう一人のおばさんは
「あ~出たいと思ったからよ」といい、続けて
「あなたは?」と聞きました。
「そうねぇ・・居たってしょうがない、と思ったのよ」と言いました。そして
「運転手さん、あなたは?」と聞くと運転手さんは
「僕ですか?僕は・・・」と言って
「お客さんは?」とふるらんに聞きました。
ふるらんは
「あ・・そうですね。(自分の才能を生かして大阪で生きて行きたい、そして)やりたい、と思ったら出られましたよ」というと運転手さんは
「そうですよね~やりたいと思うと出られるんですよね。僕はですね・・」といい女性3人で静かにその答えを待ちました。(運転中なので)

「僕は・・・・僕はですね。人の足になりたい、人を運んであげて‘ありがとう’と喜ばれることをしたい、と思ったら出られました」と言いました。
3人で「あ~~~」とおばさん声で納得。
外はまだ山の中を走っています。
大きな鳥居が見えてきて、バスが止まりました。
ふるらんに
「あなたはここで降りてください。バスは先を行っていますがあなたが終わったら呼んで下さい」と言いました。
私は
「それなら荷物を」というと
「このままでいいですよ。他の者に持たせますからあなたはあなたの仕事をしてください。あ~それから」
「はい?」
「次回荷物を持った時にまた軽くなってますから、盗まれたと思わないでくださいね」
そしてバスは発車しました。おばさんたちが窓から笑顔で手を振っています。


荷物がぽつんと砂利の上。
その横に一人立っています。
男性が「お預かりしていますので、どうぞ中にお入りください」と言いました。
○○大社の奥から太鼓の音が聞こえます。
ドン、ドン・・・神事が始る前の音です。
本殿の前でいつものご挨拶をすると巫女さんが2人、三宝を持って歩いてきました。目の前におき、
「お座り下さい」と言いました。
ふるらん、正座をして、神様の前で最上級のご挨拶を一回。
龍笛の音で舞楽が始り、それを見てると・・あ、降りられた。
しばしたたずみ・・・・・お話をして・・・○○大社さんから降りて行きました。
荷物を見てくれたおじさんが
「今バスが来ます。あ、来ましたよ」というとバスが来ました。
おじさんに礼をして・・・・荷物を持つと「軽い」

乗り込むとさっき運転手さん。
しかしおばさんが居ない。
「他のところで降りてるからまた乗るかもね」と言いました。
そして「どうでした?」と聞かれたので
「ステキな経験をさせてもらいました」と答えると
「それはよかった。僕もそんな風に言ってもらえると嬉しくて、この仕事やめられません」と笑顔でした。
バスに揺られてうとうとしていると・・目が覚めました。
時間が5時10分。
窓を開け、外を見ると・・あのバスが空を飛んでいるような気持ちになれました。
「トトロのバス」みたいな感じなのかなぁ・・と想像しながら。
今のあのバスはどこかを走っているのでしょうね・・・・あの運転手さんの笑顔とともに