昨年の秋に友達と一緒に見た映画「日日是好日」について、時々フッと思い出すことがあります。
この映画はエッセイストの森下典子さんが茶道教室に通う20年の日々を綴った『日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』を映画化したもので、樹木希林さんの最後の映画作品なのだそうです。
二十歳の大学生、典子は母に勧められて従妹と一緒に茶道教室に通うことになり、その茶道教室で出会ったお茶の先生との触れ合いを通して、季節を五感で味わう素晴しさや、生きる歓びを少しづつ実感していく姿が瑞々しいタッチで描かれています。
お茶を始めた当初、その意味も理由もわからないお茶の所作に戸惑う典子達に、「お茶はまず『形』から。さきに『形』を作っておいて、あとから『心』が入るものなの。」と武田先生の言葉。この武田先生を演じる樹木希林さんは、単に習いごとの先生という枠を大きく超えた、人生の師として典子たちを導いていきます。
「同じことが毎年出来るのは幸せなことですよ」とは武田先生の言葉ですが、毎年同じことを繰り返している平々凡々の暮らしに、つい愚痴を言っている自分に気付き、ホントにそうだな~なんて、映画を見ながら思ったりもしました。
樹木希林さんのことは何も知りませんが、彼女は女優さんだったので、今まであらゆる役を演じて来られたと思います。が、このお茶の先生という役を彼女にピッタリだな~と私は感じました。それは私にそんな風に感じさせるところが、彼女が演技力のある素晴しい女優さんだったことの証なのでしょう。
映画を見ながら、何だか私も武田先生にお茶を習いたい、導かれたいという気持になるとともに、時々フッと思い出す不思議な映画です。