美しい顔

命が無くなったお顔は、それなりに凛として、静かで、皺もなく
美しいです。
肌の弾力もわりとあって、クリームを塗ったり、ファンデーションを塗ったり、
眉に色もいれることも苦労しません。

冷たいように見えますが、何となく表情があって今にも何か喋りだしそうな表情なのです。
昨日から、若い人を見送っています。
遺された娘さんや息子さんの悲しみは、はかりしれません。

お母さんは優しかったか訊いてみると、「叱るときには叱って、でも本当に優しかったです」
息子さんと二人で見守りながら、そっと息をひきとったのですが
その何時間か前にお部屋に行ったときに
「もう朝だから、お母さんは眠ったように見えるけど、声は聞こえていますよ」と伝えました。
若い頃のお話し、兄弟は似てないね～　一人は拾われた？
もうお母さんしか知らないね・・・・。
お弁当は美味しかったか、仕事はしていたのかしら？とか。

そうして話していたら、両目から涙がこぼれました。
意識は全くありませんでしたが、きっと聴こえていたのでしょう。

それからほどなくして、呼吸が止まったとコールがありました。
ご主人と息子さんとで、静かに過ごした時間です。

そして別に、昨日の娘さんも、今日の娘さんもお母さんにお化粧を
してくれました。
口紅をぬって、アイシャドーをごく薄くぬって。

昨日からお母さんばかり３人も・・・・・・・・・・・・・・。
やっと病気から開放されたのかもしれませんし、ご家族も、苦しむこともなく
静かに看取ることができたけれども、もう二度と話すこともないかと思うと
心から寂しくなります。
意識が遠のく前に、息子さんに花束をもらって、お別れした方もいらっしゃいます。
本当の最期のお別れを、どんな思いでしたのでしょう。

どうかあちらの世界があるのならば、せめて楽しく過ごして欲しいです。