三井物産とGE、鉱山運営を効率化
資源大手向けにシステム 建機稼働データ把握
2015/8/11 3:30 日経朝刊
三井物産と米ゼネラル・エレクトリック(GE)は鉱山運営で提携する。「モノのインターネット化(IoT)」技術を活用して建機類の稼働を効率化し省エネで運営できるシステムを共同開発、世界の資源大手に販売する。併せて建機の動力源の転換も進めエネルギー消費を抑える。資源安を背景に、日立製作所やコマツも鉱山の運営費抑制に取り組んでおり、同分野での競争は今後激しさを増しそうだ。
三井物産はオーストラリアや南米、アフリカなどで資源大手の英豪リオ・ティントやブラジルのヴァーレなどと共同で石炭や鉄鉱石などの鉱山の権益を保有し、運営している。
三井物産の鉄鉱石権益生産量は年間約5千万トンで、このうち豪州のローブリバーが2千万トン、ニューマンが1500万トン、ブラジルのヴァーレが1500万トンに達する。共同開発したシステムを1年後をめどに豪州などの鉱山に導入し、実例をもとに資源大手に販売していく。
機器をネットで接続して稼働状況を分析、運用の最適化や故障の予防につなげるGEの技術を導入する。掘削現場での建機や運搬車両の稼働状況や、物流施設や港湾、積み出し船の配置状況などのデータを集め、採掘から積み出しまで全体の効率を改善する。
ガスのパイプラインや燃料を供給するガスステーションなどのインフラ設備、機械・車両などに各種センサーを取り付け、データを収集できるようにする。
燃料の転換による省エネも進める。現在、鉱山で使う掘削機や鉱物を運搬するダンプトラックなどにはディーゼルエンジンを搭載している。提携を機に、GEの技術やノウハウを活用し動力源を液化ガスに切り替える。
リオ・ティントや豪英BHPビリトンなど鉄鉱石の資源大手3社の操業費用は年間2兆~2兆7千億円に達するとみられる。このうち約2割を燃料コストが占めるとされる。採掘や運搬に使う建機を順次、ディーゼル駆動から液化ガスを使う新型車に切り替えることで燃料コストを2~3割削減する。
昨年後半からの資源価格の急落が商社の決算を左右するなか、三井物産の2015年3月期決算は連結最終利益が前の期に比べ12%減の3064億円に落ち込んだ。同社は商社の中でも連結純利益に占める資源・エネルギー部門の割合が7~8割と高いことから、今期はさらなる落ち込みが見込まれる。
今回のGEとの提携はこうした苦境からの脱却を目指したものだ。共同開発したシステムなどにより、まずは自社の鉱山のコスト競争力を高め収益の落ち込みを最小限に食い止める。さらに、そのシステムを他の商社や資源メジャーに販売し新たな収益源としたい考えだ。
三井物産はアフリカの鉱山などへの大型投資も控えており、GEとの今回の提携が業績反転の武器になるか注目される。