#151 流田Project「only my railgun」(流田P/ジェネオンユニバーサルエンタテイメント)
fripSide、2009年のヒットのカバー。この曲、実は今年3月に当欄でオリジナル版について書いていたのだが、まさかもう一度取り上げることになるとは思わなかった(笑)。
流田(ながれだ)Projectといっても、ごく一部のリスナーを除けば、まったくご存じないだろうが、ひょんなことでこの12月1日にいきなりメジャーデビューした、正体不明の4人組(+1)バンドなんである。
覆面バンドといえば、先日解散してしまったビート・クルセイダースが代表格だが、この流田Projectも、終始紙製のお面を被っており、その素顔をさらすことはまったくない。流田Pことボーカル&ギターの流田豊、ギターの穴澤淳、ベースの桃山竜二、ドラムの栗川雅裕に、S総帥という謎の人物が加わった編成。とはいえ、デビューアルバムのプロデュースを担当した、fripSideのsatこと八木沼悟志その人であろうことはほぼ間違いない(笑)。
彼らのデビューのきっかけとなったのが、ニコ動ことニコニコ動画という動画投稿サイト。大学の軽音楽サークルで他の3人とともに組んだバンドでアニメソングのカバーを歌い、そのスタジオ演奏の記録を流田が同サイトに投稿したことが、この電撃デビューにつながったのだ。「only my railgun」「LEVEL5」といったfripSideの曲をカバーした縁で、ご本家のsatにも才能を認められ、プロデュースまでしてもらえたのだから、かなりのラッキーボーイズ。
とはいえ、その実力はかなりのもので、きょうの「only my railgun」一曲を聴くだけでもそれは十分おわかりいただけるだろう。
まず、流田Pの歌がいい。もともと女性用の曲をカバーしていることからわかるように、かなりキーの高めの曲に果敢に挑戦している。だが実にうまいのである。こういう「ネタで勝負系」のバンドとはとても思えないくらいの高い歌唱力だ。ボーカルスタイルとしては、シャ乱 Q、つまりつんく♂のそれに近いのだが、キーはつんく♂より若干高めであり、彼ほどネットリした感じはなく、実に爽やかでカッコいい印象。でも演歌チックなビブラートも聴けたりするので、どうしてもシャ乱Qを連想してしまうのである。
バンド演奏のほうも、なかなかイケている。サウンドの基本はオルタナティヴ系のようだが、アンサンブルが非常に高レベルで安定していて、ボーカルを巧みにバックアップしている。また、ときおり聴かれるコーラスも上手い。キャリアの短さを、まったく感じさせないのである。
ニコ動やyoutubeで最近人気のあるのが「歌ってみた」「弾いてみた」というアマチュアミュージシャンによるカバーものだが、その手のなかでも、歌、演奏ともに最も高いレベルにあったのが、この流田Projectだったということだ。評判は評判をよび、彼らの動画は累計700万回以上、再生されることとなった。無名のアマチュアが、プロ以上に注目を集めたのである。
ここで連想されるのはやはり、動画投稿サイトの常連で、supercellのリードボーカルとして抜擢されたnagi(ガゼル)嬢だろう。彼女も初音ミクのカバーがきっかけで一躍メジャーデビューとなった。いかにもインターネット時代らしい、シンデレラストーリーだ。
ネットの時代には、オーディションから何年も経てデビューなどというまだるっこしいシステムを経なくとも、動画サイトにアップするだけで真にすぐれた歌や演奏は何万、何十万、いや何百万回も聴かれ、自然とプロたちの耳にも入っていく。
今後、こういった「オーバーナイト・センセーション(一夜明けたら、無名の人間が名声を勝ち得ていた)」のケースは、さらに増えていくのであろうね。
とはいえ、今回の彼らのアルバムは、プロジェクトと名付けたように、あくまでも「企画もの」という意識をもって出しており、二枚目以降の可能性はまったくの白紙なのかもしれない。いかにカバーが上手くても、オリジナルの出来がいいかどうかは判断できないしね。
でも、いいんじゃないかな、「企画もの専門です」というバンドがあったって。(昔のデッド・ツェッぺリンみたいに。)これだけの歌唱力と演奏力、アルバム一枚だけで終らせたんじゃもったいない。
次回もアニメソングカバーでもいいだろうし、筆者の個人的嗜好でいえば、そのつんく♂ばりの歌唱力、高いキーを生かした「ハロー!プロジェクト」のカバー集なんてのもいいんじゃないかな。ね、聴いてみたいでしょ?
ともあれ、あの敏腕プロデューサー、satが認めた歌&演奏の実力、まずはじっくりとたしかめて欲しい。
fripSide、2009年のヒットのカバー。この曲、実は今年3月に当欄でオリジナル版について書いていたのだが、まさかもう一度取り上げることになるとは思わなかった(笑)。
流田(ながれだ)Projectといっても、ごく一部のリスナーを除けば、まったくご存じないだろうが、ひょんなことでこの12月1日にいきなりメジャーデビューした、正体不明の4人組(+1)バンドなんである。
覆面バンドといえば、先日解散してしまったビート・クルセイダースが代表格だが、この流田Projectも、終始紙製のお面を被っており、その素顔をさらすことはまったくない。流田Pことボーカル&ギターの流田豊、ギターの穴澤淳、ベースの桃山竜二、ドラムの栗川雅裕に、S総帥という謎の人物が加わった編成。とはいえ、デビューアルバムのプロデュースを担当した、fripSideのsatこと八木沼悟志その人であろうことはほぼ間違いない(笑)。
彼らのデビューのきっかけとなったのが、ニコ動ことニコニコ動画という動画投稿サイト。大学の軽音楽サークルで他の3人とともに組んだバンドでアニメソングのカバーを歌い、そのスタジオ演奏の記録を流田が同サイトに投稿したことが、この電撃デビューにつながったのだ。「only my railgun」「LEVEL5」といったfripSideの曲をカバーした縁で、ご本家のsatにも才能を認められ、プロデュースまでしてもらえたのだから、かなりのラッキーボーイズ。
とはいえ、その実力はかなりのもので、きょうの「only my railgun」一曲を聴くだけでもそれは十分おわかりいただけるだろう。
まず、流田Pの歌がいい。もともと女性用の曲をカバーしていることからわかるように、かなりキーの高めの曲に果敢に挑戦している。だが実にうまいのである。こういう「ネタで勝負系」のバンドとはとても思えないくらいの高い歌唱力だ。ボーカルスタイルとしては、シャ乱 Q、つまりつんく♂のそれに近いのだが、キーはつんく♂より若干高めであり、彼ほどネットリした感じはなく、実に爽やかでカッコいい印象。でも演歌チックなビブラートも聴けたりするので、どうしてもシャ乱Qを連想してしまうのである。
バンド演奏のほうも、なかなかイケている。サウンドの基本はオルタナティヴ系のようだが、アンサンブルが非常に高レベルで安定していて、ボーカルを巧みにバックアップしている。また、ときおり聴かれるコーラスも上手い。キャリアの短さを、まったく感じさせないのである。
ニコ動やyoutubeで最近人気のあるのが「歌ってみた」「弾いてみた」というアマチュアミュージシャンによるカバーものだが、その手のなかでも、歌、演奏ともに最も高いレベルにあったのが、この流田Projectだったということだ。評判は評判をよび、彼らの動画は累計700万回以上、再生されることとなった。無名のアマチュアが、プロ以上に注目を集めたのである。
ここで連想されるのはやはり、動画投稿サイトの常連で、supercellのリードボーカルとして抜擢されたnagi(ガゼル)嬢だろう。彼女も初音ミクのカバーがきっかけで一躍メジャーデビューとなった。いかにもインターネット時代らしい、シンデレラストーリーだ。
ネットの時代には、オーディションから何年も経てデビューなどというまだるっこしいシステムを経なくとも、動画サイトにアップするだけで真にすぐれた歌や演奏は何万、何十万、いや何百万回も聴かれ、自然とプロたちの耳にも入っていく。
今後、こういった「オーバーナイト・センセーション(一夜明けたら、無名の人間が名声を勝ち得ていた)」のケースは、さらに増えていくのであろうね。
とはいえ、今回の彼らのアルバムは、プロジェクトと名付けたように、あくまでも「企画もの」という意識をもって出しており、二枚目以降の可能性はまったくの白紙なのかもしれない。いかにカバーが上手くても、オリジナルの出来がいいかどうかは判断できないしね。
でも、いいんじゃないかな、「企画もの専門です」というバンドがあったって。(昔のデッド・ツェッぺリンみたいに。)これだけの歌唱力と演奏力、アルバム一枚だけで終らせたんじゃもったいない。
次回もアニメソングカバーでもいいだろうし、筆者の個人的嗜好でいえば、そのつんく♂ばりの歌唱力、高いキーを生かした「ハロー!プロジェクト」のカバー集なんてのもいいんじゃないかな。ね、聴いてみたいでしょ?
ともあれ、あの敏腕プロデューサー、satが認めた歌&演奏の実力、まずはじっくりとたしかめて欲しい。