#305 トッド・ラングレン「Two Little Hitlers」(Nearly Human/Warner Bros.)
トッド・ラングレン、89年リリースのアルバムより。エルヴィス・コステロの作品。
アメリカのマルチ・ミュージシャン、トッド・ラングレンは、筆者にとっても思い入れのあるアーティストのひとりだ。その存在は、73年にグランド・ファンクのプロデュースをしたころから気になっていたが、彼自身のレコードをちゃんと聴くようになったのは、多くの人がそうであろうが、76年にアルバム「Faithful(誓いの明日)」が出たあたりだ。それを聴いて、彼のサウンド・マジックに一発でノックアウトされたものだ。同年、ユートピアが初来日した時ももちろん、いさんで中野サンプラザへ観に行ったものでありますよ、ハイ。
その後、ラングレンはユートピアの活動を85年まで続けたが、グループを解散、おもにプロデューサー業をこなしつつ、マイペースでソロ・アルバムを出していくようになる。この「Nearly Human」というアルバムは4年の沈黙後、89年に発表したもの。プロデュースは言うまでもなく、彼自身がおこなっている。
プログレッシヴ・ロックを極限まで追求したバンド、ユートピアから一転、このアルバムでは歌もの中心、それもソウル色が極めて濃厚になっっている。
ラングレンといえば、前衛、プログレ、実験的、難解、みたいなイメージが強いが、その一方で非常にわかりやすい美しいメロディの、ソウルをベースとした名曲も数多く作っているのだよ。このふたつが、彼の音楽性の両輪だといっていい。
さて、きょうの一曲は他のアーティトのカバー。なんと、コステロ79年の曲(アルバム「Armed Forces」所収)である。いろいろと引き出しの多いラングレンではあるが、それでも結構意外な取り合わせだよね。
でもふたりの共通項はないわけじゃない。ともにR&B/ソウルフリークであるということだ。
ソウルへの偏愛にも近い志向が、ふたりの異才に共通してあり、だからこそこういう面白いカバーが生まれたのだろうな。
で、曲の仕上がりだが、ラングレンはコステロの原曲に漂う、スカをはじめとした中南米音楽のフレーバーをそのまま生かしたアレンジをおこなっている。
歌についていえば、ラングレンも表現力が豊かで、なかなかいい線を行っている。彼の歌ってあんまり話題にならないけど、けっこういいソウル・シンガーだと思うよ。
コステロの歌は、とくにその歌詞にひねりがあって、一筋縄ではいかない。ストレートなラブソングなんてほとんどなくて、たいていが斜に構えたシニカルな内容のもので、英語ネイティブでない日本人にとっては、非常にわかりにくい。この「Two Little Hitlers」も、歌詞を読んだところ、おおよそ男女の恋愛とエゴイズムの問題を歌っているのだと思うが、多くの比喩が使われていて、理解が困難だ。まあ、それがコステロらしさと言えるのだろうが。
歌詞はさておき、うねるような、はねるようなメロディラインはとても魅力的だ。けっこう難度の高い曲でもあるが、これをラングレンは陽気に歌いこなしている。コステロの粘っこい声よりも聴きやすくて、もっと一般ウケするかもね。
楽器演奏はほぼ他のミュージシャンに任せ、歌に全力投球したアルバム。トッド・ラングレンの歌ごころを知るには最適だろう。彼のことを名前しか知らない若いリスナーの皆さんにもお勧めしたい。意外とイケまっせ。
トッド・ラングレン、89年リリースのアルバムより。エルヴィス・コステロの作品。
アメリカのマルチ・ミュージシャン、トッド・ラングレンは、筆者にとっても思い入れのあるアーティストのひとりだ。その存在は、73年にグランド・ファンクのプロデュースをしたころから気になっていたが、彼自身のレコードをちゃんと聴くようになったのは、多くの人がそうであろうが、76年にアルバム「Faithful(誓いの明日)」が出たあたりだ。それを聴いて、彼のサウンド・マジックに一発でノックアウトされたものだ。同年、ユートピアが初来日した時ももちろん、いさんで中野サンプラザへ観に行ったものでありますよ、ハイ。
その後、ラングレンはユートピアの活動を85年まで続けたが、グループを解散、おもにプロデューサー業をこなしつつ、マイペースでソロ・アルバムを出していくようになる。この「Nearly Human」というアルバムは4年の沈黙後、89年に発表したもの。プロデュースは言うまでもなく、彼自身がおこなっている。
プログレッシヴ・ロックを極限まで追求したバンド、ユートピアから一転、このアルバムでは歌もの中心、それもソウル色が極めて濃厚になっっている。
ラングレンといえば、前衛、プログレ、実験的、難解、みたいなイメージが強いが、その一方で非常にわかりやすい美しいメロディの、ソウルをベースとした名曲も数多く作っているのだよ。このふたつが、彼の音楽性の両輪だといっていい。
さて、きょうの一曲は他のアーティトのカバー。なんと、コステロ79年の曲(アルバム「Armed Forces」所収)である。いろいろと引き出しの多いラングレンではあるが、それでも結構意外な取り合わせだよね。
でもふたりの共通項はないわけじゃない。ともにR&B/ソウルフリークであるということだ。
ソウルへの偏愛にも近い志向が、ふたりの異才に共通してあり、だからこそこういう面白いカバーが生まれたのだろうな。
で、曲の仕上がりだが、ラングレンはコステロの原曲に漂う、スカをはじめとした中南米音楽のフレーバーをそのまま生かしたアレンジをおこなっている。
歌についていえば、ラングレンも表現力が豊かで、なかなかいい線を行っている。彼の歌ってあんまり話題にならないけど、けっこういいソウル・シンガーだと思うよ。
コステロの歌は、とくにその歌詞にひねりがあって、一筋縄ではいかない。ストレートなラブソングなんてほとんどなくて、たいていが斜に構えたシニカルな内容のもので、英語ネイティブでない日本人にとっては、非常にわかりにくい。この「Two Little Hitlers」も、歌詞を読んだところ、おおよそ男女の恋愛とエゴイズムの問題を歌っているのだと思うが、多くの比喩が使われていて、理解が困難だ。まあ、それがコステロらしさと言えるのだろうが。
歌詞はさておき、うねるような、はねるようなメロディラインはとても魅力的だ。けっこう難度の高い曲でもあるが、これをラングレンは陽気に歌いこなしている。コステロの粘っこい声よりも聴きやすくて、もっと一般ウケするかもね。
楽器演奏はほぼ他のミュージシャンに任せ、歌に全力投球したアルバム。トッド・ラングレンの歌ごころを知るには最適だろう。彼のことを名前しか知らない若いリスナーの皆さんにもお勧めしたい。意外とイケまっせ。
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