2004年5月23日(日)
#218 フォガット「フォガット・ライヴ」(ビクター音楽産業 VDP-28050)
ハード・ロック・バンド、フォガット、7枚目のアルバム。77年リリース。
彼らの最初にして、第一期では唯一のライヴ盤。
フォガットというと、その抜けのいい陽気なサウンドから、生粋のアメリカン・バンドみたいなイメージがあるが、もともとは英国出身。
伝説のブルース・バンド、サヴォイ・ブラウンにいたメンバー3人を中心に結成された4人組なんである。
そのサウンドはといえば、ブルース、ブギをべースとした、ひたすら単純明快なハード・ロック。
そんな彼らの本領が発揮されるのは、やはりライヴ。ということで、このアルバム、ファンには待望の一枚であった。
その出来はといえば、予想を裏切らぬ充実ぶり。
一曲目のミディアム・テンポのロックン・ロール、「フール・フォー・ザ・シティ」から聴衆のハートを鷲掴みである。
この曲は75年リリース、彼らの5枚目のアルバムのタイトル・チューン。
ハード・ロックのお手本みたいな、重心の低いビートに、見事なユニゾンのヴォーカル、そしてハモり。どこか、同じく英国出身ながらアメリカを制覇したバッド・カンパニーに通ずる匂いがある。
サウンドにいわゆる新味とか、他グループにはない独自性というのはないのだが、とにかくストレートでわかりやすい。
二曲目の「ホーム・イン・マイ・ハンド」もまた、典型的フォガット流ハード・ブギ。ストーンズの諸曲や、エルトン・ジョンの「SATURDAY NIGHT IS ALRIGHT FOR FIGHTING」を思わせるナンバーだ。
ここでの聴きものは、ロッド・プライスの粘っこいスライド・ギター・プレイだろうな。このへんに、彼らのルーツとしてのブルースが色濃く匂う。
三曲目は、これぞまさに彼らの看板曲。「アイ・ジャスト・ウォント・トゥ・メイク・ラヴ・トゥ・ユー」。
ウィリー・ディクスンの曲、というよりはマディ・ウォーターズのナンバーとして超有名なこのブルースを、フォガット一流の重厚なブギに料理して聴かせてくれる。
初出は72年のデビュー・アルバム「フォガット」。長年ステージで定番曲として演奏しているだけあって、練って練って練り上げたという印象のアレンジだ。
一糸乱れぬ、あるいは一分の隙もないとは、こういうアレンジのことをいうのだろう。8分半もあるのに、長さを全く感じさせない。
日頃筆者は「ロックとは、(アドリブ、即興で勝負する音楽ではなく)緻密なアレンジで勝負する音楽なのだ」という持論をもっているのだが、このフォガットを聴くに「我が意を得たり」という感じである。
後半へ行こう。こちらも、熱演、快演の連続また連続である。
四曲目の「ロード・フィーヴァー」はセカンド・アルバム「フォガット・ロックンロール」に収録のナンバー。
これまたフォガットお得意のハード・ブギ。
シンプルで力強いビートにのせて、リードシンガー、ロンサム・デイヴの熱いシャウトが冴え渡る。
そして間奏ではデイヴとロッドの、火の出るようなギター・バトル。これでノレなかったら、貴方は一生ロックとは縁がない(笑)。
ダブル・スライド・ギターのトリッキーでエキセントリックなサウンドに、もう完全ノックアウト。
続いてダメ押しの一発。「ハニー・ハッシュ」だ。
この曲、ビッグ・ジョー・ターナー作の方の「ハニー・ハッシュ」だが、イントロから「アレレ?」状態。なんと、アレンジがヤードバーズ、そしてエアロスミスでお馴染みの「トレイン・ケプト・ア・ローリン」のもろパクなんである。
フル・スピードの16ビートで、ゴリゴリ押しまくる「ハニー・ハッシュ」、ものスゴい迫力でっせ。
フィナーレは、やっぱりこれ。フォガット最大のヒット、「スロウ・ライド」である。
フォガットの音源を全く持っていないよ、という人でもこの曲は、メロディを聴けば、絶対耳に覚えがあるはず。フォガットの粘っこい個性が一番発揮された名曲だ。
ロッドのスライド・ギターが自由奔放に泣きまくり、リズム隊が縦横無尽に暴れまくる。へヴィーさにおいて、ハードロック史上屈指の演奏、そう筆者は信じて疑わない。
残念ながらセールス的には、ZEP、パープル、フー、バドカンといったあたりには到底及ばなかったものの、彼らのハードネスは永久に不滅だろう。
確かに、器用にまとまり過ぎで、オリジナリティに欠けていたのは事実で、それゆえB級バンド的扱いをされがちなのだが、こんなスゴい演奏をするバンド、歴史に埋もれさせるのは、ホント、もったいない。
フォガットはその後、83年の「ZIG-ZAG WALK」まで13枚のアルバムを出して解散。94年にオリジナル・メンバーで再結成するも長続きせず、現在はドラムのロジャー・アールがバンド名を引き継いで、他は新メンバーで活動しているようだ。
とはいうものの、「旬」はやはり、このアルバムを出した70年代後半あたり。
パワー、スピード、テクニック、そしてわかりやすさ。今のバンド・ピープルにも、大いに参考になるところがあるだろう。
最強のライヴ・バンド、フォガットのブギ、一度聴けば病みつきになること、請け合いです。
<独断評価>★★★☆