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音曲日誌「一日一曲」#440 エッタ・ジェイムズ「Roll With Me, Henry」(Modern)

2024-06-19 07:52:00 | Weblog
2024年6月19日(水)

#440 エッタ・ジェイムズ「Roll With Me, Henry」(Modern)




エッタ・ジェイムズ、1955年リリースのシングル・ヒット曲。ジョニー・オーティス、ハンク・バラード、ジェイムズ本人の共作。

米国の女性シンガー、エッタ・ジェイムズことジェイムゼッタ・ホーキンスは1938年1月カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。母親は黒人だが、父親は特定できていない。ジェイムズ本人の推測では、ブロのビリヤード選手、ミネソタ・ファッツ(白人)らしい。幼少期は里親や祖父母により育てられ、バプテスト教会に通い始める。

5歳でゴスペル合唱団に所属し、才能を認められ幼くしてソロシンガーとなった。

1950年、12歳の時に養母がなくなり、実母と共にサンフランシスコに移住。その地でドゥーワップを愛聴するようになり、自分も友人2人とクレオレッツという女性ボーカルグループを結成する。

52年、14歳の時、白人人気シンガーにしてバンドリーダー、ジョニー・オーティスと知り合う。彼の口利きによりジェイムズらはモダンレーベルと契約を果たし、グループ名もピーチズと変更になる。エッタ・ジェイムズという芸名も、オーティスによるものだ。

54年、16歳の時、最初のレコーディングを行う。それが本日取り上げた一曲「Roll With Me, Henry」である。

この曲はいわゆるヒット曲のアンサー・ソングであり、その元ネタは同年2月に人気黒人シンガー、ハンク・バラード&ザ・ミッドナイターズがリリースし、R&Bチャートで7週連続1位の大ヒットとなったナンバー「Work With Me, Annie」である。

この曲は歌詞が露骨に性的なものであったことで、大きな反響を呼び、同年のミッドナイターズによる「Annie Had a Baby」をはじめとする多くのアンサー・ソングが作られた。

オーティスはこの曲に注目して、そのメロディを活かしながら歌詞の異なる、女性側からのアンサー・ソングを作ろうと考えていた。その歌い手として、ジェイムズに白羽の矢が立ったのである。

54年後半にエッタ・ジェイムズとザ・ピーチズは「Roll With Me, Henry」をレコーディングする。レコードにクレジットされてはいないが、黒人男性シンガー、リチャード・ベリー(1935年生まれ)が加わり、ヘンリー役で彼女たちに絡んでいる。

この曲も元ネタ同様、性的な歌詞を含んでいた。タイトルであり重要な歌詞でもある「Roll With Me, Henry」は、明らかに性的な行為の比喩であった。このまま世間に出すには、刺激的すぎるタイトルだ。

そのため、翌55年のシングルリリースにあたっては「The Wallflower」という無難なタイトルに変更されることとなった。

それでも曲を聴けば、際どい内容であることは丸わかりだ。当然の如く大きなセンセーションを呼んで、本曲はR&Bチャートで4週連続1位の大ヒットとなったのである。

そして、新人シンガー、エッタ・ジェイムズの名も、瞬く間に全米に知られるようになる。

次のシングルはいかにも「2匹目の泥鰌」的な「Hey Henry」。しかし、これはヒットするに至らなかった。さすがに狙いが安易すぎた(笑)。

3枚目のシングルで、他のヒット曲にあやかるかたちでなく、際どい歌詞にも頼らず、ようやく本来の実力を発揮してヒットを出す。

それが同年リリースの「Good Rockin’ Daddy」である。この曲はR&Bチャートで6位を獲得した。

しかし、その勢いが続くことはなかった。モダン、そしてその後のケントレーベルではこの2曲に続くヒットはまるで出なかった。実力は十二分なジェイムズのような歌い手であっても、ヒットチャートの世界はひと筋縄ではいかないのである。

彼女がようやく安定した人気を得て、コンスタントにヒットに出すようになったのは、60年、チェスレーベルに移籍してからのことであった。

しかしながら、デビュー曲にして初ヒット「Roll With Me, Henry」において、ジェイムズはすでに大歌手となる片鱗を見せている。

その伸びやかでパンチの効いた歌声は、ストレートにリスナーの心を掴んで離さない。

また、そのきわめて特徴あるルックスも、一目見たら忘れられないものがある。

白人にも黒人にもない、唯一無二の個性、魅力を持つシンガー、エッタ・ジェイムズ。

2012年1月に73歳で亡くなるまで第一線で歌い続けたディーバの、力強いファースト・ステップをこの曲で感じ取ってくれ。





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