2000年11月某日
近年、70年代の末に結成、88年まで活動していた九州出身のロックバンド、ルースターズの再評価の気運が高まっている。
なんといっても、ミッシエル・ガン・エレファントの発言が大きかったと思うが、ミッシエルやケムリらをはじめとした活躍中のバンドがトリビュート・アルバムを出したことも手伝って、ガレージ系のロック愛好者を中心に旧譜もコンスタントに売れている(らしい)。
で、この「FOUR PIECES」なのだが、これは彼らのスタジオ録音としてはラスト・アルバムにあたる作品だ。
グループのカリスマ的存在であったボーカルの大江慎也が諸々の事情により脱退、花田裕之がフロントマンとなって活動していた後期ルースターズの、最後の一閃とも言える作品群で、あらためて聴いてみると、これが意外にいいのである。
12年も前の音なのに、まるで古さを感じさせない。
このアルバムからリズム・セクションが交代し、ベースが元ロッカーズの穴井仁吉、ドラムスが元ローザ・ルクセンブルグの三原重夫になったこともあって、サウンドの安定感が増している。
特徴的なのは、花田作曲のナンバーが3曲に対して、下山作曲のそれは6曲と、明らかに以前より下山主導型になっているということだ。
下山淳はグループに途中から参加したギタリストだったが、次第に頭角をあらわし、このアルバムでは曲のみならず、「EVERYBODY'S SIN」「曼陀羅」「予言者」でリード・ボーカルをとっている。花田のワイルドでぶっきらぼうな感じの歌とはまた違った、ややハスキーで高めのボーカルを聴くことができる。
サウンドの方も、サイケデリックなもの、フォーキーなもの、トッド・ラングレン風のものなど、従来のラフさを売りにしてきたルースターズとは違う、緻密な構成美が感じられる。これも、下山がイニシアティブを取るようになったことの賜物だろう。
せっかく再スタートをきった新生ルースターズであったが、残念ながらこれを発表してまもなく、解散することになる。
やはり、花田と下山の音楽的指向の違いが大きすぎたのだろうか。
解散後もそれぞれソロやグループ活動、あるいはプロデューサーの仕事を続けているふたりであるが、このアルバムは、まさに彼らの「岐路」にあたるものと言えるだろう。
下山は今年2000年にフラワーカンパニーズの「怒りのBONGO 」という傑作を全面プロデュースしたが、「プロデューサー下山淳」としての、最初の成果がこの「FOUR PIECES」だと思う。一聴をお薦めしたい。
<独断評価>★★★★
(88年当時のルースターズ。左から三原重夫(ds)、花田裕之(vo,g)、穴井仁吉(b)、下山淳(vo,g))