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音盤日誌「一日一枚」#214 the brilliant green「the brilliant green」(SONY RECORDS SRCL4368)

2022-06-16 05:00:00 | Weblog

2004年4月11日(日)



#214 the brilliant green「the brilliant green」(SONY RECORDS SRCL4368)

ザ・ブリリアント・グリーンのデビュー・アルバム。98年リリース。彼ら自身のプロデュース(4曲では笹路正徳との共同プロデュース)。

つい先日、メンバー全員の結婚(うちふたりは職場結婚(笑))のニュースが公表された彼らだが、ここ数年、グループとしてはほとんど開店休業に近い。2002年12月のアルバム「THE WINTER ALBUM」以降、新譜は出ていない。

トミーこと川瀬智子のひとりユニット、「Tommy february6」は好評で、リリースも順調なんだけどね。

ブリグリとしては、この何年かは充電時期だったのだろう。結婚して、精神的にも落ち着いたろうから、これからのリリースに期待したいと思う。

ブリグリは97年9月、マキシシングル「BYE BYE MR.MUG」でデビュー。当時のナンバーはすべて英語詞で、知る人ぞ知るカルトなバンドだったのだが、翌年彼らに転機が訪れる。

テレビドラマ「LOVE AGAIN」のテーマ曲「There will be love there -愛のある場所-」で初めて日本語詞に挑戦、これが見事大ヒット、このファーストアルバムもベストセラーとなった。

で、このアルバム、聴いてみると、曲調に明らかに異なるふたつの系統がある。

すなわちフォーキーでポップなナンバーと、ロックなナンバー。

デビュー当時、ブリグリのウリは、英国系のけっこうハードなギターバンド・サウンドと、スウィートなロリータ・ヴォイスの取り合わせの「意外性」にあったと思う。

しかし、その音では、所詮マニア向けのものでしかない。おまけに、歌詞は全部英語ときている。マスに売れるわけがない。

そこで、スピッツ、プリンセス・プリンセス等のプロデュースで知られる名うての音職人、笹路正徳の登場となる。

日本語詞を川瀬に書かせ、サウンドもアコギやストリングス中心にすることで、一般リスナーにもスッと入っていけるポップなものに衣替えした。

狙いは見事的中。テレビのタイアップ効果も加勢したとはいえ、「There will be~」はじわじわとチャートを上り、3作目にしてオリコン一位というスーパー・ヒットになったのだった。

今聴き返してみると、「There will be~」って、彼らより前に登場し、人気を集めたマイラバことMy Little Loverへの対抗意識が相当感じられる音作りだ。

小林武史に負けるものかと、笹路正徳が放った必殺のカウンターパンチってとこか。

現在ではそのマイラバもブリグリも、ほぼ休止状態ってのが、なんとも皮肉なのだが。

(その路線は、実はEvery Little Thingが新曲「ソラアイ」でちゃっかり継承したりする。)

他の曲では「Stand By」「Rock'n Roll」あたりも、「There will be~」に連なる路線といえよう。

笹路プロデュースの曲でいえば、「You & I」も面白い。まるでヘアカット100みたいなラテン風アコギ・サウンドは、聴いていてとても邦楽と思えない。

コーラスやストリングスも、ブリグリの本来の硬質で無機質な音(実際、初期はほとんど宅録だったとか)を、見事に塗りかえている。

彼ら自身のプロデュースによる「Always And Always」もその影響を大いに受けていると思う。

一方、あくまでも「ロック」って感じの曲もある。「I'm In Heaven」しかり、「Baby London Star」しかり。これらの曲からは、「There will be~」のブリグリはまったく想像がつかない。日本語詞の「冷たい花」も、マイナーのメロディがいかにもへヴィーで、この路線。

ポップなブリグリ、ロックなブリグリ、どちらが好きかは、「There will be~」を聴いてファンになったのか、以前からのファンかによって大きく分かれてくるだろう。

でもポップとロック、このふたつはブリグリの音楽性において、クルマの両輪のようなもので、相反するものではない。

トミーの声のポップさと、作曲担当・奥田俊作のロックセンスの邂逅にこそ、ブリグリの真の面目、オリジナリティがあると筆者は思う。

「Tommy february6」はお遊び、息抜き程度にして、今年こそはぜひ、ブリグリに全力投球していただきたいものだ。

英語詞で歌うのがサマになる数少ないバンドのひとつとして、国際的な活動も期待できる彼ら。

「There will be~」や「そのスピードで」「Hello Another Way─それぞれの場所─」といった過去のヒット曲のイメージにしばられることなく、新しいブリグリ・サウンドを生み出していってほしい。

<独断評価>★★★☆



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