2004年4月11日(日)
#214 the brilliant green「the brilliant green」(SONY RECORDS SRCL4368)
ザ・ブリリアント・グリーンのデビュー・アルバム。98年リリース。彼ら自身のプロデュース(4曲では笹路正徳との共同プロデュース)。
つい先日、メンバー全員の結婚(うちふたりは職場結婚(笑))のニュースが公表された彼らだが、ここ数年、グループとしてはほとんど開店休業に近い。2002年12月のアルバム「THE WINTER ALBUM」以降、新譜は出ていない。
トミーこと川瀬智子のひとりユニット、「Tommy february6」は好評で、リリースも順調なんだけどね。
ブリグリとしては、この何年かは充電時期だったのだろう。結婚して、精神的にも落ち着いたろうから、これからのリリースに期待したいと思う。
ブリグリは97年9月、マキシシングル「BYE BYE MR.MUG」でデビュー。当時のナンバーはすべて英語詞で、知る人ぞ知るカルトなバンドだったのだが、翌年彼らに転機が訪れる。
テレビドラマ「LOVE AGAIN」のテーマ曲「There will be love there -愛のある場所-」で初めて日本語詞に挑戦、これが見事大ヒット、このファーストアルバムもベストセラーとなった。
で、このアルバム、聴いてみると、曲調に明らかに異なるふたつの系統がある。
すなわちフォーキーでポップなナンバーと、ロックなナンバー。
デビュー当時、ブリグリのウリは、英国系のけっこうハードなギターバンド・サウンドと、スウィートなロリータ・ヴォイスの取り合わせの「意外性」にあったと思う。
しかし、その音では、所詮マニア向けのものでしかない。おまけに、歌詞は全部英語ときている。マスに売れるわけがない。
そこで、スピッツ、プリンセス・プリンセス等のプロデュースで知られる名うての音職人、笹路正徳の登場となる。
日本語詞を川瀬に書かせ、サウンドもアコギやストリングス中心にすることで、一般リスナーにもスッと入っていけるポップなものに衣替えした。
狙いは見事的中。テレビのタイアップ効果も加勢したとはいえ、「There will be~」はじわじわとチャートを上り、3作目にしてオリコン一位というスーパー・ヒットになったのだった。
今聴き返してみると、「There will be~」って、彼らより前に登場し、人気を集めたマイラバことMy Little Loverへの対抗意識が相当感じられる音作りだ。
小林武史に負けるものかと、笹路正徳が放った必殺のカウンターパンチってとこか。
現在ではそのマイラバもブリグリも、ほぼ休止状態ってのが、なんとも皮肉なのだが。
(その路線は、実はEvery Little Thingが新曲「ソラアイ」でちゃっかり継承したりする。)
他の曲では「Stand By」「Rock'n Roll」あたりも、「There will be~」に連なる路線といえよう。
笹路プロデュースの曲でいえば、「You & I」も面白い。まるでヘアカット100みたいなラテン風アコギ・サウンドは、聴いていてとても邦楽と思えない。
コーラスやストリングスも、ブリグリの本来の硬質で無機質な音(実際、初期はほとんど宅録だったとか)を、見事に塗りかえている。
彼ら自身のプロデュースによる「Always And Always」もその影響を大いに受けていると思う。
一方、あくまでも「ロック」って感じの曲もある。「I'm In Heaven」しかり、「Baby London Star」しかり。これらの曲からは、「There will be~」のブリグリはまったく想像がつかない。日本語詞の「冷たい花」も、マイナーのメロディがいかにもへヴィーで、この路線。
ポップなブリグリ、ロックなブリグリ、どちらが好きかは、「There will be~」を聴いてファンになったのか、以前からのファンかによって大きく分かれてくるだろう。
でもポップとロック、このふたつはブリグリの音楽性において、クルマの両輪のようなもので、相反するものではない。
トミーの声のポップさと、作曲担当・奥田俊作のロックセンスの邂逅にこそ、ブリグリの真の面目、オリジナリティがあると筆者は思う。
「Tommy february6」はお遊び、息抜き程度にして、今年こそはぜひ、ブリグリに全力投球していただきたいものだ。
英語詞で歌うのがサマになる数少ないバンドのひとつとして、国際的な活動も期待できる彼ら。
「There will be~」や「そのスピードで」「Hello Another Way─それぞれの場所─」といった過去のヒット曲のイメージにしばられることなく、新しいブリグリ・サウンドを生み出していってほしい。
<独断評価>★★★☆