2024年5月16日(木)
#406 キャンド・ヒート「Let’s Work Together」(Liberty)
#406 キャンド・ヒート「Let’s Work Together」(Liberty)
キャンド・ヒート、1970年リリースのシングル・ヒット曲。ウィルバート・ハリスンの作品。スキップ・テイラー、彼ら自身によるプロデュース。1970年リリースのアルバム「Future Blues」に収録。
米国のロック・バンド、キャンド・ヒートは1965年、ロサンゼルスにて結成された。67年、レコードデビュー。メンバーはボーカルのボブ・ハイト、ギター、ハープのアラン・ウィルスン、ギターのヘンリー・ヴェスティン、ベースのラリー・テイラー、ドラムスのアドルフォ・デ・ラ・パラの5人。
ハイトとウィルスンのブルース愛好趣味から始まったバンドだけに、結成当初より、過去の黒人ブルース曲のカバーを前面に押し出していた。
67年7月のモンタレー・ポップ・フェスティバルへの出演で注目された彼らは、ハイペースでアルバムを発表する。70年8月リリースの「Future Blues」は、早くも5枚目にあたる。
前年の69年7月にはウッドストック・フェスティバルに出演、熱演で好評を勝ちとった後は、レコードセールスも上昇しており、その勢いを借りてのリリースであった。
このアルバムよりシングルとしてカットされたのが、本日取り上げた「Let’s Work Together」である。
本国に先立って70年1月の英国ツアーのさなかにリリースされた本曲は、全英2位というバンド最高記録を打ち立てた。米国ではアルバムリリース後直ちにカットされ、全米26位ヒットとなった。当時、いかに彼らの人気が高まっていたかがよく分かる。
この曲は元々、59年の「Kansas City」の大ヒットで知られる黒人シンガー、ウィルバート・ハリスンが62年に「Let’s Stick Together」のタイトルでリリースしたシングルの改作であり、69年に自身のギター、ハーモニカ、パーカッションというワンマンバンドスタイルで、AB面にパート分けして再録音された。
62年版はヒットしなかったが、69年版はそこそこヒットして、全米トップ40にチャートインしている。
キャンド・ヒート版は、この69年版をカバーしたものということになる。リード・ボーカルは、ハイトが担当しており、彼の力強い歌声が耳に残るナンバーに仕上がっている。
ギターソロ抜き、3分余りのごくシンプルな構成のロックンロール。いかにもシングル向きの曲である。
キャンド・ヒートといえば、古いブルースナンバーやそれに類した曲をもっぱらやるというイメージが強かっただけに、60年代のわりとポップな曲を取り上げたのは、彼らがバンドとして、より多くのリスナーにウケていこうという姿勢を見せた、ということなのだろう。
作者のウィルバート・ハリスンについて少し触れておくと、彼は「Kansas City」の大ヒットで一躍メジャーな存在になったものの、レーベルとの契約問題でもめることになってしまい、せっかく勢いのついた時期に、第2弾を出せず仕舞いになってしまった。本来ならば「Let’s Stick Together」を立て続けにリリースすることを目論んでいたらしい。
そういう経緯で「Let’s Stick Together」はリリースのタイミングを失して幻のヒットとなってしまい、ハリスンにも未練が残った。約10年後にリベンジとして世に出してようやくヒットたのが、この「Let’s Work Together」なのだと思う。
オリジナルの歌詞は男女の恋愛がモチーフで、「離れることなく、一緒にくっついていきましょう」というニュアンスであるが、一方改題版の歌詞は、労働歌ふうに「みんな一緒に働こうぜ」のような恋愛抜きの内容に変わっている。
見るからに男臭いというか、いささかムサい(失礼)イメージを持つバンド、キャンド・ヒートとしては、後者の方が合っているのは間違いない。
この曲のスマッシュ・ヒットで、バンドとして一層の活躍が期待されていた彼らであったが、同70年9月には主要メンバーのウィルスンがドラッグのオーバードーズにより不審死(おそらく自殺)を遂げるという悲劇が起きる。
その後もバンドは、メンバーを補う形で存続したものの、それまでの快進撃の勢いは、大きく削がれることとなり、ヒットとも無縁になっていく。
ウィルスンの存在は、バンドにとってあまりに大きかった。今回取り上げた曲では演奏していないが、彼の吹くブルースハープの音色は天下一品で、筆者も「このくらい、ハープ一本で深い音を出せるプレイヤーは滅多にいない」と思うほどである。ウッドストックなどの過去映像でウィルスンのブローを聴くたびに、そう感じる。
ともあれ、一番パワーに満ち溢れていた頃のキャンド・ヒートを代表する一曲。聴くと間違いなく、エネルギーがビンビンに湧いてきまっせ。
米国のロック・バンド、キャンド・ヒートは1965年、ロサンゼルスにて結成された。67年、レコードデビュー。メンバーはボーカルのボブ・ハイト、ギター、ハープのアラン・ウィルスン、ギターのヘンリー・ヴェスティン、ベースのラリー・テイラー、ドラムスのアドルフォ・デ・ラ・パラの5人。
ハイトとウィルスンのブルース愛好趣味から始まったバンドだけに、結成当初より、過去の黒人ブルース曲のカバーを前面に押し出していた。
67年7月のモンタレー・ポップ・フェスティバルへの出演で注目された彼らは、ハイペースでアルバムを発表する。70年8月リリースの「Future Blues」は、早くも5枚目にあたる。
前年の69年7月にはウッドストック・フェスティバルに出演、熱演で好評を勝ちとった後は、レコードセールスも上昇しており、その勢いを借りてのリリースであった。
このアルバムよりシングルとしてカットされたのが、本日取り上げた「Let’s Work Together」である。
本国に先立って70年1月の英国ツアーのさなかにリリースされた本曲は、全英2位というバンド最高記録を打ち立てた。米国ではアルバムリリース後直ちにカットされ、全米26位ヒットとなった。当時、いかに彼らの人気が高まっていたかがよく分かる。
この曲は元々、59年の「Kansas City」の大ヒットで知られる黒人シンガー、ウィルバート・ハリスンが62年に「Let’s Stick Together」のタイトルでリリースしたシングルの改作であり、69年に自身のギター、ハーモニカ、パーカッションというワンマンバンドスタイルで、AB面にパート分けして再録音された。
62年版はヒットしなかったが、69年版はそこそこヒットして、全米トップ40にチャートインしている。
キャンド・ヒート版は、この69年版をカバーしたものということになる。リード・ボーカルは、ハイトが担当しており、彼の力強い歌声が耳に残るナンバーに仕上がっている。
ギターソロ抜き、3分余りのごくシンプルな構成のロックンロール。いかにもシングル向きの曲である。
キャンド・ヒートといえば、古いブルースナンバーやそれに類した曲をもっぱらやるというイメージが強かっただけに、60年代のわりとポップな曲を取り上げたのは、彼らがバンドとして、より多くのリスナーにウケていこうという姿勢を見せた、ということなのだろう。
作者のウィルバート・ハリスンについて少し触れておくと、彼は「Kansas City」の大ヒットで一躍メジャーな存在になったものの、レーベルとの契約問題でもめることになってしまい、せっかく勢いのついた時期に、第2弾を出せず仕舞いになってしまった。本来ならば「Let’s Stick Together」を立て続けにリリースすることを目論んでいたらしい。
そういう経緯で「Let’s Stick Together」はリリースのタイミングを失して幻のヒットとなってしまい、ハリスンにも未練が残った。約10年後にリベンジとして世に出してようやくヒットたのが、この「Let’s Work Together」なのだと思う。
オリジナルの歌詞は男女の恋愛がモチーフで、「離れることなく、一緒にくっついていきましょう」というニュアンスであるが、一方改題版の歌詞は、労働歌ふうに「みんな一緒に働こうぜ」のような恋愛抜きの内容に変わっている。
見るからに男臭いというか、いささかムサい(失礼)イメージを持つバンド、キャンド・ヒートとしては、後者の方が合っているのは間違いない。
この曲のスマッシュ・ヒットで、バンドとして一層の活躍が期待されていた彼らであったが、同70年9月には主要メンバーのウィルスンがドラッグのオーバードーズにより不審死(おそらく自殺)を遂げるという悲劇が起きる。
その後もバンドは、メンバーを補う形で存続したものの、それまでの快進撃の勢いは、大きく削がれることとなり、ヒットとも無縁になっていく。
ウィルスンの存在は、バンドにとってあまりに大きかった。今回取り上げた曲では演奏していないが、彼の吹くブルースハープの音色は天下一品で、筆者も「このくらい、ハープ一本で深い音を出せるプレイヤーは滅多にいない」と思うほどである。ウッドストックなどの過去映像でウィルスンのブローを聴くたびに、そう感じる。
ともあれ、一番パワーに満ち溢れていた頃のキャンド・ヒートを代表する一曲。聴くと間違いなく、エネルギーがビンビンに湧いてきまっせ。