NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#241 CHIBO & THE BAYSIDE STREET BAND「BAYSIDE STREET 」(ポリドール 28MX 2044)

2022-07-13 05:00:00 | Weblog

2004年10月3日(日)



#241 CHIBO & THE BAYSIDE STREET BAND「BAYSIDE STREET 」(ポリドール 28MX 2044)

シンガー、チーボーこと竹村栄一が率いるベイサイド・ストリート・バンドのファースト(にしてラスト)アルバム。82年リリース。

チーボーといえば知る人ぞ知る、横浜本牧出身の伝説的シンガー。

68年、彼が高校生の頃、友人の陳信輝、加部正義らとともに結成した日本初のサイケデリック・ロックバンド「ミッドナイト・エキスプレス」を皮切りに、パワーハウス、パワーハウス・ブルースバンドといったグループで活動し続けるも、ゴールデン・カップスのように東京進出をせず、あくまでも横浜、あくまでも本牧にこだわり続けた男、それがチーボーなんである。

そのへんの話は元夫人、天井桟敷所属の女優でもあった、高橋咲さんの小説「本牧ドール」に詳しい。

80年代に入ってからのチーボーは心機一転、ベイサイド・ストリート・バンドを結成。2枚のシングルと、このアルバムをリリースする。

彼の音楽はひとことでいえば、ひたすらソウルなロック。60年代後半からサム・クック、ベン・E・キングといったアーティストのカヴァーを得意として来ただけあって、とにかくR&B、ソウルが好きでしょうがない、そんな音なのだ。

アルバムのトップはアップテンポのロックンロール「PETITE BOUR」。テナーサックスのソロをフィーチャーした、いかにもいかにもなGOOD OLD ROCK'N'ROLL。

続く「I'M WISHING TOMMOROW」。サム・クックを意識した、明るいテイストのミドルテンポ・バラード。まったくヒネりというもののない、シンプル極まりない歌詞。でもそれがよかったりする。ロックに小難しい理屈は要りまへん。

ちなみにこの曲は彼らのファースト・シングルでもある。

3曲目は彼自身十八番といっている「STAND BY ME」。アレンジはもちろん、ジョン・レノンではなくオリジナルのに近い。目新しさなどはまるでないが、気持ちがホッと落ち着くようなサウンドだ。

なにより、彼の塩辛い(誉め言葉だからね)歌声がいい。まるで本牧に吹き込む海風のような声。ハスキーなんだけど、中音域のタッチは実になめらか。そのへんも魅力だ。

サウンドにせよ、ヴォーカルにせよ、R&Bの黄金のワンパターンってやっぱいいよね。

「DOKI DOKI NIGHT」は、スライドギターをフィーチャーしたブルージーなロックンロール・ナンバー。もう、お約束の世界の連発。

A面ラストの「LONELY RAINY DAYS」はスローテンポの2拍3連バラード。チーボーが最も得意とする系統の曲と見た。

女声コーラスをバックに、気持ちよさげにねっとりと歌うさまは、彼が経営していたライヴハウスで、夜毎に繰り返すステージそのままだったんだろうな。

B面トップの「HOTTOITE KURE」はエルモア・ジェイムズ・スタイルのブギ。いわゆるブルーム調のナンバーであります。

日本語の歌詞でも、なんだか英語で歌っているふうに聴こえてしまうところが、チーボー・スタイルというべきか。

「HEY HEY HEY」は、ジーン・ヴィンセントのカヴァー。ピアノ、そしてロカビリー調ギターをフィーチャーしたパワフルなロックンロール。ノリのよさではアルバム随一かも。

アルバム・タイトル・チューンの「BAYSIDE STREET 」は唯一のインスト・ナンバー。

シャッフル・ビートに乗せて、オルガン、ピアノ、サックス、ギターがノリまくる。実にカッコええです。

「KISS MARK」、これまたワンパタ極まりないロックンロールなれど、何故か全然気にならない。

下手に今風のサウンドを取り入れようとか、オリジナリティを出そうとか考えずに、あくまでも過去のR&B、ソウル、ロックの伝統を引き継いで行こうという、頑ななまでのポリシーが感じられる。そこがいいのだ。

チャック・ベリー・スタイルのギターが何ともハマっております。

「ONE MORE TIME」、これもまた「LONELY RAINY DAYS」同様、彼が得意しているタイプの曲。昔のライヴハウスは「踊れる」曲を演る、というのが大前提だったが、この曲などはチークタイム(死語)にはうってつけだろう。

オリジナルは名シンガー、ヴァン・モリスンを輩出したバンド、ゼム。チーボーが15年近く歌い続けて来たであろうナンバー。

彼の、ヴァンにもまさるとも劣らぬディープな歌いぶり、聴きものです。

ラストは「TEENAGER」。彼らにしては珍しくサザンロック調なナンバー。カントリータッチの明るいメロディ、オールマンズをほうふつとさせるスライドギターがなかなか気分。

以上、流行とはまったく別のベクトルにあるサウンドなれど、何とも心やすらぐ11曲。

チーボーの歌は、声量とか技巧とかでは他に抜き出た存在ではないが、とにかく熱い「ハート」が感じられる。特にブルージーな曲では。

そして、それこそが、シンガーにとって一番大切なものなのじゃないかと思うんだよな。

ハマのロックの源流ともいうべき男、チーボー。彼の影響なしには、キャロルも、ダウンタウン・ブギウギバンドも、柳ジョージも、さらにはクレイジーケンバンドも出てこなかったんじゃないかと思う。

現在、50代なかば。「Mojos」というバンドで今もバリバリの現役というチーボー。シニア・ロッカー、まだまだ枯れてません。

彼の歌を聴くたび、年下のオレらも負けていられないと思いますね。

<独断評価>★★★☆



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