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音盤日誌「一日一枚」#221 山下達郎・伊藤銀次・大滝詠一「ナイアガラ・トライアングル VOL.1」(CBSソニー 27KH 962)

2022-06-23 05:00:00 | Weblog

2004年6月13日(日)



#221 山下達郎・伊藤銀次・大滝詠一「ナイアガラ・トライアングル VOL.1」(CBSソニー 27KH 962)

circustown.netによるディスク・データ

大滝詠一を中心に、シュガー・ベイブの伊藤銀次、山下達郎の3人が結成したユニット、ナイアガラ・トライアングル初のアルバム。76年3月リリース。

76年3月といえば、筆者的には高校を卒業した時。あれから28年もたってしまったんやね~(遠い目)。

現在ではほとんど表舞台に登場しない、文字通り"大御所"の大滝詠一、"大プロデューサー"伊藤銀次、"大歌手"山下達郎をはじめ、そうそうたる面子がこのアルバムに参加している。

達郎率いる「シュガー・ベイブ」組の大貫妙子、寺尾次郎、村松邦男。レコーディングの時点で、バンドの解散は既に決定していたそうだが。大滝のはっぴいえんど時代の朋友、鈴木茂、細野晴臣。彼らと共にキャラメル・ママ~ティンパン・アレーのメンバーだった松任谷正隆に林立夫。

後に、達郎の曲の作詞担当として重要な役割を果たす吉田美奈子、説明不要の坂本龍一、上原裕、斎藤ノブ。さらには初期ブルース・クリエーションのヴォーカルだった布谷文夫も。

三人のコネクションにより呼び集められた、当時最強のセッションだったといえそう。

全11曲のうち、4曲ずつを達郎と銀次、3曲を大滝が作っている。

印象に残る曲といえば、まずは「パレード」だろうね。これは達郎がシュガー・ベイブのレパートリーとして作った曲なのだが、実際にはバンドではリリースせず、このヴァージョンがレコードでの初お目見えとなった。

その後は、テレビ番組のテーマ曲で使われたり、カヴァーされたりして、その甘いメロディが人気を集め、達郎の作品中でも最も息の長いナンバーのひとつとなった。つい最近では、つじあやのがカヴァーしとったなあ。(アルバム「COVER GIRL」所収)

今回、聴き直してみて、この曲のサウンドのキモは、坂本教授のピアノとヴァイブだなぁと実感。大貫・吉田コンビのホワーッとしたファンタスティックなコーラスもいい。

「ドリーミング・デイ」も、「パレード」にひけを取らない名曲だ。のびやかな歌いぶりは、後年の達郎節を思わせるものがある。達郎のソリッドなギター・カッティングも聴きもの。

すでにサウンドは、シュガー・ベイブ風というよりは、のちのソロのスタイルにシフトしているのが、興味深い。

「遅すぎた別れ」は達郎が作り、銀次が語りを担当したナンバー。

スローテンポで、ゴスペル・テイストの演奏がちょっと異色で面白い。

一転、ウェスト・コースト風のサウンドなのは「日射病」。伊藤銀次がかつて率いていたバンド、「ココナッツ・バンク」の代表的レパートリーである。元メンバーの平野肇・融も参加。

ココナッツ・バンクは、ショーボート・レーベルのオムニバス・ライヴ盤に登場した以外はアルバムを残していないので、貴重な記録といえそう。例によって銀次氏なので、ソロ・ヴォーカルはあまり上手くないのだが、達郎のコーラスというサポートを得て、軽やかなハーモニーがキマっている。どことなく、スティーヴ・ミラー・バンドあたりを彷彿とさせる。

「ココナッツ・ホリデイ'76」は同じく銀次作曲のインスト。ココナッツ・バンク時代のレパートリーの再録音。なんちゃってオールマンズな、トロピカル・ムード満載の一曲。

「幸せにさよなら」は、メロディ・メーカー伊藤銀次の真骨頂とでもいうべき作品。西海岸風サウンドにのせて、歌われる甘酸っぱいメロディが○。このアルバムでは彼だけのソロだが、ナイアガラ・トライアングルのシングル・ヴァージョンでは、三人でソロを回している。

「新無頼横町」も、銀次のココナッツ・バンク時代の作品。彼にしては珍しくファンク色の濃いナンバー。歌のみならず、リード・ギターも彼が弾いていて、これがなかなかカッチョいい。

「フライング・キッド」で再び達郎登場。やたらエコーのかかった録音法が印象的な、AOR風ナンバー。

キーボード、オルガン、サックス、エレピ、ヴァイブ等、沢山楽器を使った、ゴージャス(?)な作り。いささか凝り過ぎのきらいはあるが。

ちなみに、浜崎貴司が率いていたバンド、フライング・キッズはこの曲名から取ったらしい。

最後に大滝御大登場。彼の作った三曲がそれぞれバラバラな作風なのが面白い。

「FUSSA STRAT Part-I」は「福生ストラット!」のシャウトを繰り返すだけのインスト。ファンキーな演奏は坂本、村松、細野、上原が担当。ヴォイスは布谷ほか全五人が担当。

「夜明け前の浜辺」は一聴してわかる、大滝版「サーファー・ガール」。駒沢裕城のスティールが、ひたすら甘ったるい音を奏でている。カントリーというよりは、ハワイアンみたいな音色ですが、これまたご愛嬌。

ラストの「ナイアガラ音頭」は大滝の作品。だが、自身では歌わず、布谷がリード・ヴォーカルをとっている。

民謡のお囃子も加えての賑やかな演奏、ナンセンスな歌詞を大マジメに歌う布谷に、合いの手の茶々が入る。大滝の茶目っ気がそのまま出たような仕上がり。

大滝は何度もこの手の試みを好んでやっており、見事ヒットに結びついたのが、金沢明子の「イエローサブマリン音頭」だったね。

以上このアルバム、正直言ってまとまりには欠けるものの、セッションに参加した各人が、やりたいことをやりたいようにやっている、そこが実にいい。遊び心も随所に感じられる。

和製ポップスとは、結局「洒落っ気」」が大切なのだということを教えてくれた作品。

いま聴くと、音の処理法など、ものすごく時代がかっていて違和感を覚えるところもあるけど、それはそれで現在のJ-POPにはない魅力を感じるなあ。

<独断評価>★★★☆


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