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音盤日誌「一日一枚」#391 THREE DOG NIGHT「That Ain’t The Way To Have Fun」(Connoisseur VSOP CD 211)

2022-12-10 05:22:00 | Weblog
2022年12月10日(土)



#391 THREE DOG NIGHT「That Ain’t The Way To Have Fun / Greatest Hits」(Connoisseur VSOP CD 211)

米国のロック・バンド、スリー・ドッグ・ナイトのベスト・アルバム。

スリー・ドッグ・ナイト(以下3DNと略)は67年結成、68年シングル「ノーバディ」にてデビュー。

ダニー・ハットン、チャック・ネグロン、コリー・ウェルズという3人のシンガーを軸に、4人のミュージシャンが加わった7人編成。

3人のシンガーはそれぞれリードボーカルを取れるだけの実力を持ちながらも、コーラス、ハーモニーでも最強の力を発揮出来る、強者たちであった。

3DNには他のバンドとは大きく異なる特徴が、ひとつあった。

それは、基本的には自分たちが作曲するのではなく、過去の曲のカバー、あるいは新進のシンガーソングライターの曲のカバー、さらにはそういったライターたちへの依頼、といったかたちでレパートリーを形成していたということだ。

昨日取り上げなエルトン・ジョンも、そういった紹介で世間に名前が広まったアーティストのひとりで、「僕の歌は君の歌」が、本人のシングルリリース以前にカバーされている。

たまには、自分たちでオリジナル曲を作ることもあるが、それはあくまでも「余技」の域を出ず、基本は他のアーティストの曲を演ることがポリシーであった。

この方針を取ることによって、3DNは実にさまざまなアーティストの、バラエティに満ちた曲を次々と世に送り出すことが可能になったのである。

実際、ハリー・ニルソンのカバーであるシングル「ワン」を69年にヒット(全米5位)させてからの進撃ぶりはめざましかった。

ランディ・ニューマンの曲「ママ・トールド・ミー」(70年)、トミー・ケイらによる「ワン・マン・バンド」(同)、そして何といっても71年のホイト・アクストンの曲「喜びの世界」の大ヒットだろう。全米1位のゴールド・レコード。

この一曲で、3DNは全世界に名を轟かしたと言っていい。日本でも人気に火がついて来た。

そして、とどめは71年、ボール・ウィリアムスの曲「オールド・ファッション・ラブ・ソング」のヒットかな。

「喜びの世界」がちょっと子供向けの作風だったのに対して、繊細で高い音楽性を持っており、より広範囲のファンを獲得した一曲であった。

このヒットのおかげで、オリジナルのウィリアムス版もヒットするというオマケまで付いた。

74年のヒット「ショウ・マスト・ゴー・オン」もまた、原作者レオ・セイヤーにスポットが当たるきっかけとなった。

こういうふうに、3DN自らのヒット→オリジネーターのブレイクという「シナジー効果」が生まれており、ヒット連発、彼らの隆盛もこのままずっと続くと思われていた。

が、好事魔多し、75年にネグロンがコカイン不法所持のかどで逮捕されて以来、バンド内の人間関係が悪化し、76年にハットン脱退、そして解散という最悪の道を辿ってしまったのである。

せっかく全世界的バンドになりながら、あっけない最期であった。

その後、81年に再結成を果たしたものの、ネグロンが解雇され、残りふたりのオリジナル・ボーカルで続けていくかたちになった。

そして、再開してからは過去のようなヒットは出せなくなった。

やはり、もはやバンドとしての「旬」を過ぎてしまったということかな。悲しい話だが。

2015年にキーボードのジミー・グリーンスプーン、そしてウェルズが相次いで亡くなった。

現在の3DNは、ハットンを中心に、ライブ活動を続けているという。

山あり谷ありの3DNだったが、それでも全盛期の記録であるこのCDを聴けば、いかにスゴい集団であったかが、よく分かるだろう。

3DNはロック、フォークなどさまざまな音楽的要素を包含したバンドではあるが、筆者が思うに、本質的には「ブルーアイドソウル」のバンドなのだ。

一曲目、コリー・ウェルズのソロによるオーティス・レディングのカバー「トライ・ア・リトル・テンダーネス」を聴けばいい。

イケメンの白人男性が歌っているとは到底思えない、真っ黒けなボーカル。

やっぱ、これがこのバンドの真骨頂でしょ。

そのソウルな世界から離れてしまうと、それはもう、3DNではないとさえ思う。

アメリカのどの小さな町にもひとつはありそうな、白人ソウルバンド。

幾千ものローカル・バンド。そのあまたある中で、最高のサウンドを提供してくれたのが、スリー・ドッグ・ナイト。

そう思うようにしている。

ヒット・メーカーとしての彼ら以上に、そんな「ジャスト・アナザー」なソウル・バンドを、筆者は今もこよなく愛しているのだ。

<独断評価>★★★★★


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