NEST OF BLUESMANIA

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音曲日誌「一日一曲」#449 サント&ジョニー「Sleep Walk」(Canadian-American)

2024-06-28 07:26:00 | Weblog
2024年6月28日(金)

#449 サント&ジョニー「Sleep Walk」(Canadian-American)




サント&ジョニー、1959年8月リリースのシングル・ヒット曲。サント・ファリーナ、ジョニー・ファリーナ、アン・ファリーナの作品。レナード・ジマーによるプロデュース。

米国のインストゥルメンタル・ロック・デュオ、サント&ジョニーは実の兄弟、サント・アンソニー・ファリーナとジョン・スティーヴン・ファリーナのふたりである。サントは1937年10月、ジョンは41年4月、ニューヨーク州ブルックリンにてイタリア系米国人として生まれている。

父親は第二次世界大戦時に陸軍に従軍、駐留地のオクラホマでラジオから流れるハワイアンのスティールギターを聴き、「息子たちにこの楽器を習わせたい」と思い立ったという。

父親は復員後、ハワイアンを演奏出来る音楽教師を見つけて息子たちにスティールギターを習わせた。サントはアコースティックギターを改造して、ラップスティールとして弾くようになる。

さらにはギブソン製の6弦スティールギターも入手、サントは10代の半ばにはアマチュアショーで演奏するまでの腕前になる。彼は曲を作り、ギタリスト、ドラマーと共にトリオを結成して地元のダンスパーティなどで、オリジナル曲、ハワイアンの曲をとり混ぜて演奏する。

サントはそのギャラでついに3本ネックのフェンダー製スティールギターを購入して、さらに腕を磨いていく。

また、弟のジョニーも53年、12歳でエレキギターを入手して兄の伴奏をつとめるようになる。ふたりはサント&ジョニーという名でデュオを組み、学校、さらには地域のイベントなどで人気を獲得していく。

彼らはプロデビューを夢見てデモテープを録音し、レコード会社に送るなどしていた。だが、すぐにはその願望は叶わなかった。

59年、サント21歳、ジョニー18歳の時、ついにチャンスが訪れる。ある日、ライブを終えた後、興奮で眠れなかったふたりはジャムセッションを始めて、一編の曲を作り上げ、デモ録音した。これはイケる、という感覚が彼らに生まれた。

これを元にきちんとしたメロディを加えて完成させたのが、本日取り上げた一曲「Sleep Walk」である。

マンハッタンのトリニティ・ミュージックのスタジオで、兄弟とドラムス担当の叔父マイク・ディーの3人により録音され、新興レーベルのカナディアン・アメリカンより本曲がシングル・リリースされたのが同年の8月。

これにさっそく火が付いた。ロックンロールのDJとしてあまりに有名なアラン・フリードが紹介したことも手伝って、8月17日付けのビルボードでトップ40入りとなった。そして9月の最後の2週で連続1位という、大ヒットとなったのである。全英22位、カナダ3位、またゴールド・ディスクも獲得している。

クレジットには、当時すでに結婚していたサントの妻、アンも名前を連ねているが、実際には兄弟ふたりだけで作曲したという。

まったく無名のデュオが、デビュー曲(しかもインスト)でこれだけのビッグ・ヒットを飛ばすことはごく稀であったが、それもひとえに、この曲のハワイアン・フレーバー漂うメロディの美しさと、それを奏でるスティールギターの音色の強い魅力によるものだろう。

サント&ジョニーは、一夜にして時代の寵児となった。さっそく「Sleep Walk」を含む12曲を収めたデビュー・アルバム「Santo &Johnny」をリリース、またその中からシングル・カットされた「Caravan」(昨日本欄で取り上げたばかりの曲だ)も、全米48位のヒットとなった。

その後彼らは、60年代はコンスタントにアルバムをリリースし続けるが、ノンボーカルのインスト、しかもハワイアン色が強いそのサウンドは、次第に時代の流行からもズレてしまい、70年代以降はリリースもほぼ途絶える。

「過去の人」となってしまったサント&ジョニーだったが、それでもいわゆるインスト・バンドの走りとして、彼らが後のロックミュージシャンたちに与えた影響は結構大きい。

例えばインスト・ロックの代表格、英国のザ・シャドウズである。彼らは61年に本曲をカバー、ライブのレパートリーとしても長らく演奏することになる。

曲自体のカバーではないが、そのゆったりとした演奏スタイルは、フリートウッド・マックの「Albatross」やビートルズの「Sun King」に引き継がれることとなる。

時代は下って80年代にはフュージョン・ギタリストのラリ・カールトンがアルバム「Sleepwalk」(81年リリース)のタイトル・チューンとしてカバー。

その他、ジェフ・ベックやブライアン・セッツァーといったベテラン・ギタリストたちもカバーしており、本曲は完全にロック・スタンダード、インスト・スタンダードとなったと言える。

ただ、面白いのはいずれもエレクトリックギターによるカバーであり、オリジナルのスティールギターによるものではないことだ。スティールギター・サウンドの流行は、やはり一過的なもので、残念ながらロックの標準楽器にはなれなかったのである。

その後の英米のロックに強い影響を与えた、独自のサウンド。不思議な浮遊感がある彼らの音世界は、間違いなく唯一無二のものだ。

ヒットしてはや64年。ふたりの息の合った名演奏を、もう一度味わって見よう。






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