2024年5月1日(水)
#391 リトル・ジョニー・テイラー「Part Time Love」(Galaxy)
#391 リトル・ジョニー・テイラー「Part Time Love」(Galaxy)
リトル・ジョニー・テイラー、1963年リリースのシングル・ヒット曲。クレイ・ハモンドの作品。クリフ・ゴールドスミスによるプロデュース。
米国の黒人シンガー、リトル・ジョニー・テイラーことジョニー・ラモント・メレットは、1943年アーカンソー州グレゴリー生まれ。
以前取り上げたことのあるジョニー・テイラー(1934年生まれ)とはまったくの別人である。ジョニーの綴りも、前者がJohnny、後者がJohnnieと異なっている。
幼少期の1950年にロサンゼルスに移住、ゴスペルを歌いはじめる。ゴスペル・グループ、マイティ・クラウズ・オブ・ジョイに参加。その後R&Bに転向、スウィンギンレーベルで初録音するもヒットには至らなかった。
1963年、20歳となったテイラーはファンタジー傘下のギャラクシーレーベルと契約。ここで彼の才能が開花する。プロデューサー、クリフ・ゴールドスミスのもと「You’ll Need Another Favor」をシングルリリース、R&Bチャート27位のヒットとなる。
続いてリリースしたシングルで大ブレイクを果たす。それが、本日取り上げたスロー・ブルース・ナンバー「Part Time Love」である。思い入れたっぷりなギターはダイアナ・ロスのバッキングなどで知られるアーサー・G・ライト。
この曲はR&Bチャートで1位を獲得しただけでなく、全米19位の栄誉にも輝いた。
この曲の作者、クレイ・ハモンドはソウルシンガーにしてソングライターでもあった。1936年生まれで、テイラーとともに前述のマイティ・クラウズ・オブ・ジョイを結成した、いわば盟友。ソロや弟ウォルターとのハモンド・ブラザーズでレコードをリリースしたが、鳴かず飛ばず。
そんな不遇時代を経て初めて得た成功が、この「Part Time Love」を作曲して得た大ヒットであった。その後は大成功とは無縁となったが、ケントレーベルでシングル数枚をリリースしたり、リビングトンズなどのドゥワップ・グループにも参加している。
テイラーもこの曲の成功後は、目立ったヒットを出せていない。71年にジュエル傘下のロンレーベルからリリースしたシングル「Everybody Knows About My Good Thing(Pt.1&2)」でR&Bチャート9位、全米60位となったぐらいである。
言ってみれば、テイラー、ハモンド共に典型的な一発屋で終わってしまったわけだが、たった一発すら簡単には当たらないショービズの世界、ただ一曲ナンバーワンヒットを出しただけでも充分スゴいと筆者は思う。
そして、この曲の良さは、ヒット後も長期に渡り、さまざまなアーティストがカバーしてきたことでも証明済みである。
なんと名前かぶりしているジョニー・テイラーが本曲をカバーしたのをはじめ、クラレンス・カーター(68年のデビュー・アルバム「This Is Clarence Carter」収録)、アン・ピーブルズ(70年のシングル、R&B7位・全米45位)、アイザック・ヘイズ(71年のアルバム「Black Moses」収録)といったアーティストが次々とレコーディングしている。
ちょっと変わったところでは、白人バンドのファビュラス・サンダーバーズが「Full Time Lover」というタイトルに改作している(アルバム「Girls Go Wild」に収録)。
クレジットではフランキー・リー、フランク・スコットの作品となっているが、一聴すれば明らかに「Part Time Love」のリメイクだと分かるはずだ。
満たされない愛に苦しみ悶える歌詞が、実に切ないバラード。哀感に満ちたテイラーの歌声は、万人の心に届き、共感を誘う。
カバーバージョンしかこの曲を知らない方も、オリジナルバージョンでそのディープな歌声に触れて、大いに悶えてくれ。