2023年2月9日(木)
#449 ストリート・スライダーズ「がんじがらめ」(EPIC/SONY 28・3H-111)
ストリート・スライダーズのセカンド・アルバム。83年リリース。彼ら自身によるプロデュース。
ストリート・スライダーズ(以下スライダーズ)は同年にアルバム「SLIDER JOINT」、シングル「Blow the Night!」でデビューしている。
高校時代の友人で組んだバンドが発展、80年に現メンバーが揃い、スライダーズと名乗った。
ライブハウス出演、コンテスト出場を経てレコード会社どの契約にこぎつける。また、82年の映画「BLOW THE NIGHT 夜をぶっ飛ばせ」の音楽担当となり、ライブ・シーンで彼ら自身も出演して注目を集める。
そんな感じで、デビューして間もない頃の、イキのいいスライダーズが聴けるのが本盤だ。
福生のライブハウスに出ていた頃は「リトル・ストーンズ」などと呼ばれていたスライダーズは、もちろんローリング・ストーンズの強い影響を受けている。歌のテーマしかり、サウンドしかり、ファッションやライフスタイルしかり。
リードボーカルのハリーこと村越弘明、ギターの蘭丸こと土屋公平の絡みも、まんまグリマー・ツインズことミックとキースのコンビを彷彿とさせるものがあったしね。
オープニングの「Toa-Lit-Tone(踊ろよベイビー)」はジョーク・ナンバー。ヘビーなビートに乗って歌が始まったかと思いきや、すぐにストップ。本番はこれからだ。
「So Heavy」はライブでも定番のナンバー。アップ・テンポのロックンロール。
ハリーの激しいシャウトで、気分アゲアゲな一曲。
Heavyとはスラングで「イカしている」みたいな意味だが、果たしてその意味で使っているんだかどうかもよくわからない、支離滅裂気味の歌詞がいかにもスライダーズっぽい。
考えちゃダメで、感じればいいのだ、こういうノリ重視の曲でハリーの作る歌詞は。
ちなみに全曲、作詞・作曲はハリー、アレンジはスライダーズ。
「(Nobody Can) Catch Me」はスロー・テンポのブルース・ロック。
こういう重心の低いサウンドが、アップ・テンポの曲に負けず劣らずカッコいいのが、スライダーズ。
ジェームスこと市川洋二のベース、ズズこと鈴木将雄のドラムスの安定したビートあればこそのグルーヴだな。
「とりあえず, Dance」はダメ人間の日常を見ているようでユーモラスな、ビート・ナンバー。こういう曲を聴いたら、とりあえず踊るっきゃない。
「道化者のゆううつ」は一転してフォーキーな、ロック・バラード。繊細なギター・サウンドが印象的だ。
ハリーの書く曲は大半が脳天気なビート・ロック系なのだが、時にはこういう情感に満ちた歌も書いて、聴くものの心をざわつかせてくれる。
実は、おおもとのところでは詩人なのだ、ハリーという人は。
「Tokyo シャッフル」はギター・サウンドが激しいロックンロール。シャッフルと題していても、典型的なエイト・ビートだけどね。
ま、固いことはいわない、気持ちは100%シャッフルなんだから。これでいいのだ。
「鉛の夜」は幻想的でドラマティックな、バラード・ナンバー。
「動」のイメージが強いスライダーズだが、それとともに「静」の魅力も持ち合わせていることが分かる異色の一曲。
「Dancin’ Doll」はライブでも人気のナンバー。少しスローなテンポで奏でられるロック・ナンバー。
この曲でもハリーの抒情詩人ぶりがよく出ていると思う。
バイオレンスと抒情。このふたつのバランスが見事なのである。
「マンネリ・ブギ」は超アップ・テンポのツービート・ナンバー。ブルースに強く影響を受けたサウンドである。
退屈でワンパターンな日常への不満を激しくぶちまけていて、痛快な内容だ。
「SLIDER」はミディアム・テンポのロックンロール。歌詞内容、サウンド面ともに彼らのテーマソングとでもいうべきナンバー。オープニング・ソングのやり直し的な意味もありそう。
当時(80年代)の流行り(例えばニューウェーブ)とかをまるで意識せずに、ひたすら自分たちの好きなサウンド、やりたい音楽を追求する姿勢、これが彼らを唯一無二のバンドにした原動力なのだと思う。
スライダーズの歌は、おおむねテーマが決まっている。酒か、ダンスか、ロックンロールか。そのどれかは、必ず入っている気がする。
中でも何度となくモチーフとなっているのがダンスだ。
オープニングからしてそうだし、「とりあえず〜」や「Dancin’ Doll」もそうだ。
ダンスってのは言って見れば、セックスのメタファーだな。オンナと一緒にするボディ・ランゲージってことで。
わが国ではご法度のドラッグこそ出てこないが、もしそれも加えれば、そのままストーンズの世界になるな(笑)。
ある意味、パターン化された紋切り型なロックだが、筆者としてはけっこう嫌いじゃない。
ポピュラー・ミュージックは多くのリスナーの共感を得てナンボである。ニッチなところばかり狙ってちゃダメである。
スライダーズのやさぐれたロックも、現実にがんじがらめに縛られて、やり場のないフラストレーションを抱えた多くの少年少女たちの、突破口となった。
2000年の解散までの17年にわたって、男女問わず、幅広い層を惹きつけたのは、そのストレートでシンプルな音楽、そして彼らのマイペースで自由な生き方なのだと思う。
<独断評価>★★★☆
ストリート・スライダーズのセカンド・アルバム。83年リリース。彼ら自身によるプロデュース。
ストリート・スライダーズ(以下スライダーズ)は同年にアルバム「SLIDER JOINT」、シングル「Blow the Night!」でデビューしている。
高校時代の友人で組んだバンドが発展、80年に現メンバーが揃い、スライダーズと名乗った。
ライブハウス出演、コンテスト出場を経てレコード会社どの契約にこぎつける。また、82年の映画「BLOW THE NIGHT 夜をぶっ飛ばせ」の音楽担当となり、ライブ・シーンで彼ら自身も出演して注目を集める。
そんな感じで、デビューして間もない頃の、イキのいいスライダーズが聴けるのが本盤だ。
福生のライブハウスに出ていた頃は「リトル・ストーンズ」などと呼ばれていたスライダーズは、もちろんローリング・ストーンズの強い影響を受けている。歌のテーマしかり、サウンドしかり、ファッションやライフスタイルしかり。
リードボーカルのハリーこと村越弘明、ギターの蘭丸こと土屋公平の絡みも、まんまグリマー・ツインズことミックとキースのコンビを彷彿とさせるものがあったしね。
オープニングの「Toa-Lit-Tone(踊ろよベイビー)」はジョーク・ナンバー。ヘビーなビートに乗って歌が始まったかと思いきや、すぐにストップ。本番はこれからだ。
「So Heavy」はライブでも定番のナンバー。アップ・テンポのロックンロール。
ハリーの激しいシャウトで、気分アゲアゲな一曲。
Heavyとはスラングで「イカしている」みたいな意味だが、果たしてその意味で使っているんだかどうかもよくわからない、支離滅裂気味の歌詞がいかにもスライダーズっぽい。
考えちゃダメで、感じればいいのだ、こういうノリ重視の曲でハリーの作る歌詞は。
ちなみに全曲、作詞・作曲はハリー、アレンジはスライダーズ。
「(Nobody Can) Catch Me」はスロー・テンポのブルース・ロック。
こういう重心の低いサウンドが、アップ・テンポの曲に負けず劣らずカッコいいのが、スライダーズ。
ジェームスこと市川洋二のベース、ズズこと鈴木将雄のドラムスの安定したビートあればこそのグルーヴだな。
「とりあえず, Dance」はダメ人間の日常を見ているようでユーモラスな、ビート・ナンバー。こういう曲を聴いたら、とりあえず踊るっきゃない。
「道化者のゆううつ」は一転してフォーキーな、ロック・バラード。繊細なギター・サウンドが印象的だ。
ハリーの書く曲は大半が脳天気なビート・ロック系なのだが、時にはこういう情感に満ちた歌も書いて、聴くものの心をざわつかせてくれる。
実は、おおもとのところでは詩人なのだ、ハリーという人は。
「Tokyo シャッフル」はギター・サウンドが激しいロックンロール。シャッフルと題していても、典型的なエイト・ビートだけどね。
ま、固いことはいわない、気持ちは100%シャッフルなんだから。これでいいのだ。
「鉛の夜」は幻想的でドラマティックな、バラード・ナンバー。
「動」のイメージが強いスライダーズだが、それとともに「静」の魅力も持ち合わせていることが分かる異色の一曲。
「Dancin’ Doll」はライブでも人気のナンバー。少しスローなテンポで奏でられるロック・ナンバー。
この曲でもハリーの抒情詩人ぶりがよく出ていると思う。
バイオレンスと抒情。このふたつのバランスが見事なのである。
「マンネリ・ブギ」は超アップ・テンポのツービート・ナンバー。ブルースに強く影響を受けたサウンドである。
退屈でワンパターンな日常への不満を激しくぶちまけていて、痛快な内容だ。
「SLIDER」はミディアム・テンポのロックンロール。歌詞内容、サウンド面ともに彼らのテーマソングとでもいうべきナンバー。オープニング・ソングのやり直し的な意味もありそう。
当時(80年代)の流行り(例えばニューウェーブ)とかをまるで意識せずに、ひたすら自分たちの好きなサウンド、やりたい音楽を追求する姿勢、これが彼らを唯一無二のバンドにした原動力なのだと思う。
スライダーズの歌は、おおむねテーマが決まっている。酒か、ダンスか、ロックンロールか。そのどれかは、必ず入っている気がする。
中でも何度となくモチーフとなっているのがダンスだ。
オープニングからしてそうだし、「とりあえず〜」や「Dancin’ Doll」もそうだ。
ダンスってのは言って見れば、セックスのメタファーだな。オンナと一緒にするボディ・ランゲージってことで。
わが国ではご法度のドラッグこそ出てこないが、もしそれも加えれば、そのままストーンズの世界になるな(笑)。
ある意味、パターン化された紋切り型なロックだが、筆者としてはけっこう嫌いじゃない。
ポピュラー・ミュージックは多くのリスナーの共感を得てナンボである。ニッチなところばかり狙ってちゃダメである。
スライダーズのやさぐれたロックも、現実にがんじがらめに縛られて、やり場のないフラストレーションを抱えた多くの少年少女たちの、突破口となった。
2000年の解散までの17年にわたって、男女問わず、幅広い層を惹きつけたのは、そのストレートでシンプルな音楽、そして彼らのマイペースで自由な生き方なのだと思う。
<独断評価>★★★☆