2005年10月9日(日)
#286 スティーリー・ダン「two against nature」(GIANT/BMGファンハウス BVCG-21003)
スティーリー・ダン、2000年リリースのアルバム。彼らによるプロデュース。
出す作品、出す作品がファンの期待を裏切ることがない、つまり高いクォリティを常に維持できるという意味において、スティーリー・ダンは稀有なユニットといえるだろう。曲、ヴォーカル、サウンド、いずれをとっても手抜きというものが全くない。
サウンドだけをとってみれば、スティーリー・ダンと同様の、質の高い演奏を聴かせるフュージョン系、あるいはジャズ系ミュージシャン、グループは少なからずいる。
だが、ヴォーカルも含めてとなると、そうはいかない。というか、他に誰もいない。スティーリー・ダンのユニークさはまさにその一点、インストではなく「歌もの」が基本である、というところに集約されるのだと思う。
ドナルド・フェイゲンのあの独自の「声」抜きには、スティーリー・ダンのサウンドは成立しない。
一般に「歌もの」の曲は、メロディがいかに美しいか、印象に残るか、ということが大切なのだが、彼らにおいては、もはやそれさえ余り重要なことではなく、フェイゲンの声という「楽器」がどのようなトーンで曲を奏でるかが一番ポイントになっている。「エイジャ」のころにはまだあったポップさも、影を潜めている。
言い直せば、一曲一曲に大した違いなどなくて、ほぼ金太郎飴状態。起承転結みたいな構成はまったくない。
もし、メリハリのようなものがあるとすればリリック、つまり歌詞面においてであろうが、残念ながら英語ネイティブではない筆者には、そのへんの批評・評価はうまくできない。スマソ。
ある意味相当ワンパターン。にもかかわらず、音の質はおそろしく高い。
ツアーのバックバンドを母体に、有名ミュージシャンのゲスト(ヒュー・マクラッケン、ポール・ジャクスンJRほか)も加えたバックは、ジャズ、フュージョン、ファンク、ラテン等々、どのようなスタイルの演奏もソツなくこなす集団。
この助っ人たちの好サポートを得て、おなじみの成熟した精緻なサウンドが展開する。
あまりに成熟し過ぎているためか、いまどきの若いひとたちにはピンと来ないかもしれないが、すぐれた音楽とはこういうものだよと、おせっかいながら彼らにこそ聴かせたいサウンドだ。
まずはオープニング・チューン「ガスライティング・アビー」から聴いてみるべし。流行りのヒップ・ホップなんかより百倍ヒップな音楽が、そこにはあるぜ。
<独断評価>★★★★