2024年2月26日(月)
#326 フリートウッド・マック「Madison Blues」(Blue Horizon)
#326 フリートウッド・マック「Madison Blues」(Blue Horizon)

フリートウッド・マック、69年リリースのアルバム「Blues Jam In Chicago Vol.1」より。エルモア・ジェイムズの作品。マイク・ヴァーノン、マーシャル・チェスによるプロデュース。
フリートウッド・マックは69年1月に渡米、シカゴのチェスレーベルのスタジオで、現地のブルースマンたちとの共演を果たす。それがアルバム「Blues Jam In Chicago」である。
マックの5人のメンバーに加えて、昨日取り上げたピアノのオーティス・スパン、ベースのウィリー・ディクスン、ハープのビッグ・ウォルター・ホートン、ギターのハニーボーイ・エドワーズ、バディ・ガイといった面々が、和気藹々と、あるいはホットに共演する様子を2枚のレコードに収めている。
その1枚目に収録されているのが、この「Madison Blues」だ。オリジナルは、63年に亡くなっているエルモア・ジェイムズ。60年にアルバムの中の一曲としてリリースされている。
マックには、先日の本欄でも触れたようにジェレミー・スペンサーという、エルモア・ジェイムズを神と崇めるメンバーが居たので、もちろん彼の希望により、このナンバーがセッションで演奏されたのだろう。
そして、特筆すべきは、かつてジェイムズのバンドでテナーを吹いていたJ・T・ブラウン(当時50歳)がこのレコーディングに参加していることだ。
名手ブラウンと共に、尊崇するジェイムズの曲を演奏する。スペンサーにとっては、至福この上ない時間であったに違いない。
実際、ここでのスペンサーの歌と演奏への気合いは、ハンパない。煌めくようなスライド・ギター、そしてスゴみのあるボーカル。それを引き継ぐ、ブラウンの力強いソロ・ブロー。
フリートウッド、ディクスンら、バックの叩き出すリズムも、実にご機嫌だ。シャッフルのリズムに、思わず知らず、身体が踊り出しそう。
国籍や人種、そしてプレイ・スタイルの違いによる違和感など、微塵も感じさせない、全地球的なブルースがそこにはある。
ブルースを愛する者たちが集えば、そこに余計な言葉はいらない。ただ一緒に演奏すれば、それでOK。
ジャム・セッションの楽しさを教えてくれるナンバー。
スパン、ブラウン、共にこのレコーディング後、ほどなく亡くなってしまったが、彼らの晩年の演奏を聴くことが出来る貴重な記録でもある。何度でも、レコード・ライブラリーから引っ張り出して聴きたい、そんな一曲である。