NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#85 アーマ・トーマス「LIVE! SIMPLY THE BEST 」(ROUNDER CD 2110)

2022-02-07 05:50:00 | Weblog

2002年2月2日(土)



アーマ・トーマス「LIVE! SIMPLY THE BEST 」(ROUNDER CD 2110)

1.BREAKAWAY

2.TIME IS ON MY SIDE

3.HIP SHAKIN' MAMA

4.THAT'S WHAT LOVE IS ALL ABOUT

5.THINKING OF YOU

6.I NEEDED SOMEBODY

7.MEDLEY: I'VE BEEN LOVING YOU TOO LONG/PLEASE PLEASE PLEASE

8.HITTIN' ON NOTHIN'

9.IT'S RAINING

10.SECOND LINE MEDLEY: I DONE GOT OVER/IKO IKO/HEY POCKY WAY

11.WISH SOMEONE WOULD CARE

12.YOU CAN HAVE MY HUSBAND

13.OH ME OH MY(I'M A FOOL FOR YOU)

14.SIMPLY THE BEST

ニュー・オーリンズを代表する女性シンガー、アーマ・トーマスのライヴ盤。90年8月30・31日、サンフランシスコ「SLIM'S」にて録音。91年リリース。

つい先日もニュー・オーリンズの有名な音楽誌「OFF BEAT」にてべスト・シンガーに選ばれた実力派の彼女だが、41年生まれ、今年61歳になる大ベテラン。もちろん、今もバリバリの現役で活躍中である。

高校を卒業してウェイトレスをしながら、シットインで歌ったのがきっかけで認められレコード・デビュー、かのアラン・トゥーサンのプロデュースにより60年代前半でいくつものR&Bヒットを飛ばす。

その代表作が、ストーンズもカバーした「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」だ。

70年代は表舞台からは遠ざかっていたが、80年代に入って見事復活、現在に至っている。

近年ではゴスペル・ソングばかりを歌ったアルバムを出すなど、新しい分野にも大変意欲的なひとである。

そんな息の長いシンガーの、実力が最大限に発揮されるのは、やっぱり生のステージ。

このライヴ盤はアーマ49歳のときの録音だから、まさに脂ののり切った歌がぞんぶんに楽しめる。

まずは白人女性シンガー、ジャッキー・デシャノンでおなじみ、アップ・テンポの陽気なロックンロール・ナンバー、(1)でスタート。

アーマの少し低め、でも伸びやかな歌声にはピッタリの曲だ。

続いて、代表的オリジナル曲(2)を。ストーンズのラフな感じとはまた違い、きめの細かい歌いぶりは、さすがご本家の貫禄。

(3)は歌詞がちょっとユーモラスな、トラッド・ブルースの佳曲。アーマの歌は、どこか姐御肌で勇ましい感じだ。

決して男に媚びるようなことはなく、豊かな声量で豪快に、でももちろん細やかさを忘れることなく、歌いあげていく。

余裕たっぷりのフレージング、堂々たるブルース・フィーリングに感服!の一曲。

お次の(4)は、ロンゲの白人シンガー、マイケル・ボルトンの作品。

いかにも白人ポップスの「王道」のようなメロディを持ったバラードだが、彼女の手にかかると、しっかりブラックな味つけで料理されて、一流のソウルに仕上がってくる。

とにかく、ジャンルを選ばぬ、見事な歌唱力だ。

(5)は、オリジナル・ナンバー。前曲とは対照的な、黒い上にも黒い、きわめつけのソウル。

ファンキーなビートにも、彼女のよく伸びる歌声は、しっかりと乗っかっていく。

低音だけでない、シャープな高音もOKなアーマの歌声は、オール・マイティだ。

(6)はメンフィスで活躍する黒人女性シンガー、アン・ピーブルズのカバー。ディープなスロー・ソウル・バラードだ。

幾度となく繰り返される「Needed Somebody」のシャウトが、迫力満点。聴く者を熱くせずにはいられない。

(7)はその勢いをかって、さらにソウルフルでディープな世界へ突入。

前半はオーティス・レディングの作品として、あまりにも有名。アイク&ティナの超セクシー・ヴァージョンもよく知られているが、アーマ版も、これまた最高にエキサイティングな出来。

もう、とことんシャウトしまくり。

これを聴いて、心をゆさぶられないようなら、ブラック・ミュージックのファンなんて、おやめなさい、ってなもんだ。

息もつかず、シームレスに歌われる後半は、もちろん、ジェイムズ・ブラウンの大ヒット。

ブラウンのステージ・ナンバーでも、最重要な位置をしめる曲で、これをアーマはエネルギッシュに歌い切る。

このメドレーを易々とこなすとは、ホント、脱帽もののパワーであるな。

そこいらのガキンチョ歌手には、到底真似できるものではない。

彼女は決して黒人女性シンガーにありがちの「太め」体型ではないのに。実に素晴らしい声量、強靭なノドである。

(8)もトラッド・ブルースに、アラン・トゥーサンが手を加えたナンバー。

ファンク・ビートがいかにも心地よく、観客もノリノリで踊っているのが、目に浮かぶよう。

(9)は彼女の60年代、インペリアル在籍時のスマッシュ・ヒット。トゥーサンのペンによる、ミディアム・スローの3連バラード。

こういうクラシカルな曲も、モダンな曲も、すべて自分のもの、それも現在の自分の感覚で消化して歌っている。

そこがただの「昔の名前で出ています」的なベテラン・シンガーとは違うところだ。古臭さというものがない。

60代になっての、ベスト・シンガー受賞も、大いに納得が行くな。

(10)のメドレーも、なかなか楽しい。「セカンド・ライン」と名づけられたことでもわかるように、ニューオーリンズ出身者の、あくまでも陽性なセンスが存分に発揮された選曲だ。

まずは、ニューオーリンズの名物男、アーニー・K-ドゥの作品「I DONE GOT OVER (IT)」から。途中でいろんなN.O.名物をMCに折り込みつつ、N.O.のテーマ中のテーマ、「IKO IKO」へ。

さらには、ミーターズの「HEY POCKY WAY」で、ファンキーに盛り上げ、最後は「I DONE~」に戻って締めくくり。

歌詞に折り込まれるさまざまなアイテムといい、ひたすら陽気なビートといい、とにかく、N.O.っぽさがプンプンと漂う、ごキゲンなメドレーである。

(11)も初期のヒット曲、アーマ自身がペンをとったナンバーだ。こちらもお得意のミディアム・スロー・バラード。

ちょっとセンチで、でも決して弱々しくはならず、あくまでもポジティヴなアーマの世界が全開である。

快調なシャッフル・ビート、歌詞がちょっとユニークでユーモアにあふれたブルース、(12)も、彼女の持ち歌。

ココ・テイラー、マーヴァ・ライトといった女性シンガーもカバーしている。

ここでも、(3)同様、抜群のビート感覚で歌いまくるアーマ。いやー、カッコいい。

「カッコいい」なんて、女性シンガーには普通使わない形容詞だけど、彼女に関しては、自然と使いたくなってしまう、そんな感じだ。

そして極めつけは、(13)。前の曲のノリノリ状態から一転、しっとりと、でも力強く聴かせるラヴ・バラード。

彼女の持ち歌の中でも、おはこ中のおはこと呼べそうな、キラー・チューン。「女王」アレサまでがカバーしたとゆー、名曲だ。

もし、付きあっている女性に、こんなディープな歌を歌われちまった日にゃ、結婚するしかあるまい、ってか。

このうえなくパワフルな「OH ME OH MY」のリフレインが、まことに印象的。この曲のこの一節を聴くために買っても損はない。

もちろん、他の曲も、じゅうぶんに素晴らしいけどね。

そしてラストは、アルバム・タイトルともなっている(14)。スイートやブロンディ、パット・ベネターらのプロデュースでおなじみの、マイク・チャップマンの作品。

ヘヴィーなロック・ビートに乗り、自信に満ちあふれた歌声でぐいぐいと観客をひっぱるアーマ。これも実に勇壮でカッコいい曲だ。

全編、どこを切っても、アーマの気合い十分で、しかも円熟した歌声が楽しめる。タイトル通り、「SIMPLY THE BEST」な一枚。

ひさびさに、絶対のおススメである。


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