NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

音盤日誌「一日一枚」#107 シルヴィ・バルタン「シルヴィ・バルタン・ベスト」(BMGジャパン BVCM-37009)

2022-03-01 05:00:00 | Weblog

2002年6月16日(日)



シルヴィ・バルタン「シルヴィ・バルタン・ベスト」(BMGジャパン BVCM-37009)

1.アイドルを探せ

2.悲しきスクリーン

3.いつでもあなたを

4.わたしを愛して

5.ジョニーはどこに

6.しあわせの2分35秒

7.あなたのとりこ

8.男の子のように

9.ズン・ズン・ズン

10.想い出のマリッツア

11.悲しみの兵士

12.愛のかたち

13.アブラカダブラ

14.恋人を探せ

15.哀しみのシンフォニー

16.悲しきジプシー

17.悲しき雨音

18.いとしき若者(デルタの夜明け)

19.ディスコ・クイーン(愛しのジョニー)

20.愛はジタンのかおり

「4月からフォーマットを変えて書きます」と宣言したこのコーナーだったが、「独断評価」がくっついた他は、ほとんど変わっていないことに気がついた。こりゃいかん。

当初は、もっと一回分を軽めにして、週最低三枚は取上げようというもくろみをしていたのだが、筆者の性分なのか、ついつい一枚へのコメントが長くなってしまい、「ライト化」計画は二週目にして頓挫してしまった。

ということで、仕切り直し。

今回から、思い切って簡潔な内容にしますので、なにとぞヨロシクね、皆さん。

さて、今回はぜんぜんブルースでない一枚。

(とゆーか、このコーナーは上の惹句にもありますように「ノン・ジャンル」を基本ポリシーに始めたんですから、文句いわないように、そこのヒト。)

最近、映画主題歌やCFソングに連続起用されたこともあって、人気再燃しているシルヴィ・バルタン。このベスト盤もバカ売れしているそうな。

1944年生まれ、おん年58才なれど、現在でもマイペースで歌手活動を続けているという。

さて、バルタンといえばウルトラマン、じゃなくって、なんといっても(1)。詞はC・アズナブール。

このデビュー曲に、彼女の魅力がすべて集約されているといっても過言ではない。

バルタンは歌唱力(声量・声域)で勝負するタイプの歌手ではなく、リズム感、ビート感覚の素晴らしさで抜きん出ているひとだ。

この(1)も、ドリフターズ=ベン・E・キングのあたりの色濃い影響が感じられるR&Bサウンドに、フランスならではの繊細にして優雅なストリングス・アレンジを絡ませ、その上にバルタンの、頼りなげながらフレッシュこのうえない歌声を乗せて、見事なフレンチ・ポップスの逸品に仕上がっている。

オフ・ビートなシャンソンの伝統とは一線を画した、新時代のハイブリッド・ポップス。60年代のバルタンは、そういうアメリカン・ポップスの「本歌取り」の手法で次々とヒットを生み出していく。

(2)、(4)、(5)、(6)、いずれもそうである。(4)はカントリー・ソングのリメイクだったり、(5)では結構ヘヴィーなR&Bだったり、(6)ではラグタイム風だったり。ポール・アンカ作の(3)などでは、慣れぬ英語詞にまでチャレンジしている。

現在清涼飲料水のCFでさかんにオンエアされている(7)も、フィル・スペクター風サウンドに録音されている一方、ブラス・アレンジには当時流行していたアメリアッチ(ハーブ・アルパートなどに代表されるメキシコ風サウンド)の強い影響が見られる。

レコード制作スタッフが、いかにアメリカ音楽を熱心に聴き込んでいたかが、うかがえる。

一方では(8)、(9)などのようにヨーロッパならではの味わいのある曲も。特に(9)は60年代末のカンツォーネ・ブームを象徴する大ヒット曲のカバー。

(10)、(12)もシャンソンの伝統の上にあるラヴ・バラード。でも、こういう曲ではあまりバルタンの良さは発揮されていない。これなら、ミレイユ・マチユーが歌ったっていいじゃん!って思ってしまう。バルタンの本領は、あくまでもきめ細かい表現を要求するバラードでなく、ビート感覚あふれるナンバーにあるのだ。

(11)は70年に日本でもヒットした、反戦メッセージを持った異色のナンバー。こういうビートの利いたナンバーのほうが断然いい。

70年代からは、世界的な流行もあって、ディスコ色が強くなっていく。(13)しかり、(14)しかり。(19)にいたっては、タイトルまでまんまである。

(15)のように、クラシックを引用したり(モーツァルトの交響曲)、(16)のようにソニー&シェールのヒットをカバーしたり、「企画モノ」にも積極的に取り組むようになる。

(17)(カスケーズのカバー)、(18)(タニヤ・タッカー、ヘレン・レディのカバー)もその一環といえよう。

唯一80年代に入ってからのヒット、(20)もカバーもの。シーナ・イーストンの「モーニング・トレイン」が原曲。

以後の彼女はヒット・チャートとは疎遠になる。が、やはり60年代の一連のヒットは、現在に至るまで人気が衰えることなく聴き継がれている。

そして21世紀の日本で、ブーム再燃。「アイドルを探せ」、「あなたのとりこ」時代の、キュートそのものの「永遠のアイドル」は、万人に思春期の甘酸っぱい想い出を、思い起こさせていくに違いあるまい。

<独断評価>★★★



最新の画像もっと見る