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音盤日誌「一日一枚」#163 ジョージ・ベンスン「ベスト・オブ・ジョージ・ベンスン」(Warner Bros. WPCR-473)

2022-04-26 05:15:00 | Weblog

2003年5月25日(日)



#163 ジョージ・ベンスン「ベスト・オブ・ジョージ・ベンスン」(Warner Bros. WPCR-473)

ジョージ・ベンスン、ワーナー・ブラザーズ時代のベスト・アルバム。95年リリース。

76年の「ブリージン」から、86年の「ホワイル・ザ・シティ・スリープス」に至るまでのアルバムから、厳選された14曲を収録している。

ベンスンといえば、ヴォーカリストというイメージが一般的には強いようだが、もともとはジャズ畑のギタリスト。

64年にレコード・デビューした当時は、もっぱら「ポスト・ウェス・モンゴメリー」という扱いだったと思う。

その後、ビートルズの「アビイ・ロード」のカヴァー・アルバムなどを出し、その中でヴォーカルもとったりして、次第にポップスの世界に接近。

意外に歌がうまいということが世間にも知られるようになり、ワーナーとも契約、ヴォーカル・アルバム「ブリージン」を出してみたら、これが予想以上にヒット。なんと全米ポップ・アルバム・チャートで1位を獲得する。

並行してCTIでジャズ・アルバムも出していくが、そちらとは比べものにならないセールスを記録するのである。

以来、95年までの在籍期間中に、ワーナーで13枚ものオリジナル・アルバムを出すに至る。

その後彼は、ジャズの世界に本格復帰、現在までGRP等で作品を発表し続けている。

そんな「二足のわらじ」な彼の、「流行歌手」時代が総括できる一枚なんである。

<筆者の私的ベスト3>

3位「THIS MASQUERADE」

ご存じレオン・ラッセル作の名曲。ベンスンのシンガーとしての地位を不動のものにしたヒット・ナンバーだ。「ブリージン」収録。

一番よく知られるカーペンターズ版よりは、気持ち遅めのテンポで、ディープな歌をご披露。

ピアノとストリングスの音色が実に美しい、洗練されたサウンドと、ベンスンのメロウかつソウルフルなヴォーカルが見事にカクテルされて、リスナーに心地よい酔いを提供してくれる。

これが売れないわけがない。シングルは全米ポップ・チャートで10位にランク・イン。

グラミー賞の最優秀レコードにも選ばれ、ベンスンの名声を一躍世界中に広めたのである。

ここで注目すべきは、ギターとスキャットのユニゾンという、難易度の高い「合わせ技」だろう。

トゥーツ・シールマンスの、ギターと口笛のユニゾン・プレイと並ぶ、トップ・ミュージシャンならではの名人芸だと思う。

これは、いかなスゴテク・ギタリストでも、そう簡単に真似の出来るものではあるまい。

2位「ON BROADWAY」

三枚目にしてライヴ・アルバムでもある79年リリースの「メロウなロスの週末(WEEKEND IN L.A.)」から。

ドリフターズの大ヒットのカヴァー。リーバー&ストーラー、マン&ウェイルという豪華なチームによる作品。

こちらも全米7位のヒットだったというから、当時の彼の人気がいかにすさまじかったかが、よくわかるだろう。

この曲でも、スキャット&ギターの超絶技巧を披露しているので、聴きのがせない。

ドリフターズの原曲よりテンポも早く、ファンキー度もさらにアップ、実にごキゲンなソウル・チューンに仕上がっている。

ベンスンのみならず、バックをつとめるキーボードのホルヘ・ダルト(アルゼンチン出身)、同じくロニー・フォスター、リズム・ギターのフィル・アップチャーチ、パーカッションのラルフ・マクドナルド、ベースのスタンリー・バンクス、ドラムのハーヴィー・メイスン、いずれも名うての巧者ぞろいで、聴きごたえは十分である。

1位「GIVE ME THE NIGHT」

80年リリースのアルバム「ギヴ・ミー・ザ・ナイト」のタイトル・チューン。

これも他アーティストの提供作品。マイケル・ジャクスンに「ロック・ウィズ・ユー」「オフ・ザ・ウォール」「スリラー」等一連のヒット曲を書いたコンポーザー、「ブギー・ナイツ」をヒットさせた「ヒートウェイヴ」のリーダーでもあったロッド・テンパートンのナンバーだ。

キャッチーなファンク・ナンバーを得意とするテンパートンの生きのいいメロディを、これまたスゴ腕でアレンジ、プロデュースするのは、かのクインシー・ジョーンズ。もう、これだけでも、期待するなというのが無理だよね。

ベンスンはここでは、他の曲とは違って歌い込み過ぎず、飄々とした感じなのが面白い。でも、サビでは危なげなくソウルフルにキメてくれる。

ギター演奏はやや抑え気味、全体のアンサンブルに溶け込むような弾き方なのも、興味深い。

また、バックがものスゴく豪華なのも、ベンスンならでは。リー・リトナー、ハービー・ハンコック、リチャード・ティー、エイブ・ラボリエル、エトセトラ、エトセトラ。実力派女性シンガー、パティ・オースティンもバック・ヴォーカルで参加しているので、これも要チェキです。

とにかく、ベース・ラインがビンビン、腰にきます。ノリのよさで、一位にケッテーイ!

もちろん、他にもごキゲンな曲は一杯あります。「愛の幾何学(LOVE X LOVE)」しかり、「僕の愛を君に(I JUST WANNA AROUND YOU)」しかり、「キッス・イン・ザ・ムーンライト」しかり。ベンスンは声域も広く、どの曲も実にソツなく器用にこなしている。

とてもギタリストの「副業」のレベルではない。ギターを一切やめて、ヴォーカル一本に絞ったとしても、十分やっていけるレベル。

逆に、そういう「器用貧乏」さがいささか災いして、ギタリストなのかヴォーカリストなのか、どっちつかずになっている気もしないではないが、これはギター、歌、どちらでも勝てない才能のない人間のヤッカミというものだろう(笑)。

あっさりと「流行歌手」のポジションを返上して、今はジャズに専念している(歌はうたうが)彼だが、ヴォーカリストとして開花した76~95年は、まさに黄金の20年だったと思う。

声よし、曲よし、アレンジよし。これぞ、プロフェッショナル・ミュージック。違いのわかる「おとな」なひとには、ぜひのおススメである。

<独断評価>★★★


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