NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#162 チャック・ベリー「THE LONDON CHUCK BERRY SESSIONS」(MCA/Chess CHD-9295)

2022-04-25 06:05:00 | Weblog

2003年5月22日(木)



#162 チャック・ベリー「THE LONDON CHUCK BERRY SESSIONS」(MCA/Chess CHD-9295)

チャック・ベリー、72年リリースのアルバム。

チェス・レーベルは60年代後半より、自社の黒人アーティストと、白人ロック・ミュージシャンとのコラボレーションによるアルバムを次々と企画、リリースしていたが、これもその手の一枚。

往年のロックン・ロール・スター、チャック・ベリーが、自らのバンドを引き連れて英国はロンドンに乗り込み、現地のミュージシャンたちとも共演したのである。

アルバム前半の5曲は現地ミュージシャンたちとのスタジオ・セッション、後半の3曲はロンドンの郊外、ウェスト・ミッドランズ州コヴェントリーにおけるライヴ録音だ。

いずれも、おりからのロックン・ロール・リバイバルの波にのり、みごと復活を果たしたチャック・ベリーの健在ぶりがうかがえる。

<筆者の私的ベスト4>

4位「MEAN OLD WORLD」

チャック・ベリーもまた、立派なブルースマンであることを証明するナンバー。ご存じ、リトル・ウォルターの作品。

ロンドンのミュージシャンたちとのセッション曲のひとつだ。

チャックのギターによる前奏に続き、ヴォーカル、ギター・ソロと、6分近く、完全に彼の独演会状態。

彼のブルース・ヴォーカルは、多くのブルースマンに比べるとライト(明るい&軽い)な印象はあるものの、これはこれでひとつのスタイルとして完成していると思う。

いつも陽気な彼とは違った、レイジーで、どこか哀愁をただよわせる歌声が、意外とイケてます。

3位「LONDON BERRY BLUES」

チャックのオリジナル、というよりは、即興で作られたインスト・ナンバー。ブルースというよりは、早めのテンポのロックン・ロール。

タイトルは、当然「ロンドン・デリー」にひっかけてあるんだろうな。これもまた、セッション・サイドの曲。

ジョニー・Bスタイルのイントロから始まり、延々と最後まで弾きまくるチャック。フレーズの多様さに驚かされる。彼のギタリストとしての底力を感じさせる一曲だ。

バックをつとめるのは、昨日の「一日一枚」にも登場したスモール・フェイシズのイアン・マクラガン(ピアノ)とケニー・ジョーンズ(ドラムス)、そしてスタジオ・ミュージシャンのデイヴィッド・グリフィス(ギター)。

彼らは、あくまでも主役のチャックを立てるように手堅く、でもパワフルなプレイを聴かせてくれる。

2位「MY DING-A-LING」

ライヴ・サイドのハイライトとでもいうべきナンバー。チャックのMC、聴衆への"歌唱指導"を含む、実に11分半にもおよぶロング・トラック。

その内容は、いわゆる「春歌」で、ほのぼのとしたユーモアを感じさせるナンバーだ。

バックコーラスをまかされたイギリスの聴衆たちも、最初は手探りで歌っていたのが、回数を重ねるごとに次第に乗ってきて、最後は迫力ある大合唱となっていく。にわか仕立ての合唱団にしては、見事なまとまりかただ。

"指揮"をするチャックの、いかにも楽しげなMCを聴いていると、こっちまでなごやかな気分になってくる。ほんと、聴衆の「のせ方」「笑わせ方」がうまいんだ。

超一級のエンタテイナーとしてのチャックを知るには、一番いいサンプルだと思うね。

1位「JOHNNY B. GOODE」

「MY DING-A-LING」から間髪を入れず始まるラスト・ナンバーが、これ。やはりこの曲なしでは、始まらない。

米英、黒人白人を問わず、いろんなミュージシャンがカヴァーしてきた曲だが、やっぱり本家本元、そのヴォーカルとギターには誰にも真似の出来ない「味」がある。

がなるような乱調ヴォーカル、ギターの独特のソリッドな響き。これぞ、チャック・ベリー!!!

バックは、チャックのレギュラー・バンドに、ドラムスでロビー・マッキントッシュ(アヴェレージ・ホワイト・バンド)が加わった編成だ。

大熱演、大興奮のうちに、ステージは終了。その後も、聴衆の「WE WANT CHUCK」コールが、終わることなく続いていく…。

この一枚、チャックがブリティッシュ・ロックのミュージシャンと組んだところで、別にいつもと変わったことをやっているわけではない。

いかにもチャック・ベリーらしいナンバー(たとえば「MEMPHIS」タイプの「LET'S BOOGIE」とか)を、彼の曲を聴いて育ってきた若い連中と一緒に、楽しげに演奏しているだけ。

でも、それで十分だという気がする。だって、世界中どこへいったって、チャックはチャック。そのギター・プレイを一小節聴きさえすれば、一発で彼と判る、そういうひとなんだから。

「永遠のワン・パターン」ほど強力なものはない。そう、「ロックン・ロール」という不滅の切り札が、彼にはある。

チャック・ベリー、本盤の録音時、齢45歳の働き盛り。まさに、脂の乗り切った歌とプレイだ。

完成度うんぬんは置いといて、ほんとうに理屈抜きに楽しめる一枚であります。

<独断評価>★★★☆


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