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音曲日誌「一日一曲」#181 ロニー・ホーキンス「Neighbor, Neighbor」(Red Hot Blues/Castle Music)

2023-09-29 05:46:00 | Weblog
2011年7月23日(土)

#181 ロニー・ホーキンス「Neighbor, Neighbor」(Red Hot Blues/Castle Music)





白人ロックンローラー、ロニー・ホーキンスによるR&Bナンバーのカバー。ジミー・ヒューズの作品。

ロニー・ホーキンスは1935年、アーカンソー州ハンツヴィルの生まれ。50年代後半よりメンフィスでプロとなるも、ロックンロールが下火になったこともあって、59年カナダへ活動の拠点を移す。当時彼のバックをつとめていたバンド、ザ・ホークスが後の「ザ・バンド」である。

63年、ザ・ホークスと決別したホーキンスは、別のメンバーをバックに迎えて活動を継続する。60~70年代末までは比較的コンスタントにアルバムを出しており、そのいくつかは高い評価を得ている。単なる懐メロ歌手ではなく、コンテンポラリーなアーティストとして活躍を続けていたのである。ザ・バンド解散のときには、フェアウェル・コンサートにゲストとして出演している。

ロックンロールと一言でいっても、いろいろとスタイルがあり、ホーキンスの場合、出発点はいわゆるロカビリーだったといえる。59年、ルーレットで出したヒット「メリー・ルー」はその典型例だ。だが、彼のサウンドはロカビリーの狭い枠にとどまるものではなかった。

オリジナル以外に、黒人シンガーの曲も積極的にレパートリーに取り入れた。ボ・ディドリーの「フー・ドゥ・ユー・ラブ」、チャック・ベリーの「メンフィス」「メイベリーン」、ファッツ・ドミノの「エイント・ザット・ア・シェイム」などが好例だ。

こういった曲が意外とホーキンスの声になじんだのは、彼の歌声が白人にしては珍しく重く、太い「ブルースな」声質だったということが大きいと思う。

きょうの一曲を聴いていただくと、よくわかると思うが、「Neighbor, Neighbor」というかな~り鬱な内容のヘビーなブルースを、見事に歌いこなしている。知らずに聴いたら、白人シンガーと気づかないかもしれないね。

もともとこの曲は、60年代前半にR&Bシンガー、ジミー・ヒューズがアトランティックで録音、ヒットさせたものだ。オリジナルのヒューズ版では、かなり声が高めで、ホーキンスのそれとは趣きを異にしているが、ホーキンズ版もなかなかの出来映え。ヘビーなムードにおいて、原曲を上回っているように思う。

以前、ネヴィル・ブラザースを取り上げたときに「ロックンロールは軽くて重い音楽」と書いたことがあるが、ホーキンスについても、同様なことを感じる。ブルース的な重いものを隠し味にもってこそのロックンロールなのだ。

日本のチャンジー・ロックンローラー某氏(特に名を秘すw)も、軽めのロックンロールだけでなくこういうヘビーな曲がちゃんと歌えていたら、ロックの歴史に残っていたかもしれないんだがねぇ。

「ロックな」という形容は、ともすれば、アーティストの行動のありかたがロックっぽいという意味でばかり使われがちだが、それ以前に彼の歌そのものが、音楽として聴くに足るかということについて、語られるべきだと思う。歌自体がロックであること、これが大前提だと思う。

そういう意味でロニー・ホーキンスは、真にロックな歌い手であると思う。

弟子のザ・バンドがらみでしか、語られることのない、ちょっと気の毒なお人だが、そのタフな歌声にロックの本質を感じるぜ、ベイベー。


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