2011年7月17日(日)
#180 アルヴィン・ヤングブラッド・ハート「Gallows Pole」(Big Mama's Door/Sony Music Distribution)
#180 アルヴィン・ヤングブラッド・ハート「Gallows Pole」(Big Mama's Door/Sony Music Distribution)
毎日暑いねぇ。そんなときは、清涼感溢れる、アコースティック・ギターの響きはいかが?
黒人シンガー/ギタリスト、アルヴィン・ヤングブラッド・ハートのデビュー・アルバムより、レッド・ツェッぺリンのカバー・ナンバー。ジミー・ペイジ、ロバート・プラントによるトラディショナルの改作。
アルヴィン・ヤングブラッド・ハートは63年カリフォルニア州オークランド生まれ。96年、33才にしてメジャーデビュー。以来、10年間で5枚のアルバムを発表している、新進気鋭のアーティストだ(もう48だけど)。
きょうの一曲は、皆さんご存知、ツェッぺリンのサード・アルバムのB面、いわゆるアコースティック・サイドの一曲目にあたるナンバーだ。
ハートもZEP同様、アコギを弾きつつ、このトラディショナルを歌う。その演奏スタイルは、そうだな、ゲイリー・デイヴィス師あたりを思わせる、リズミカルで軽快なサウンドだ。
また、その歌声は、派手やかなプラントとは対照的にひなびた、素朴な味わいをもつ。どこかの南部農園の片隅で、休み時間にギターをかきならしながら、歌う農夫。そんな趣きだ。
たとえてみれば、新時代のミシシッピ・フレッド・マクダウェル。そんなところか。
で、よく聴き込むと、実にギターの腕前が達者なことがわかる。早いパッセージも、難なくリズムにのせて弾いている。見事なもんだ。
デビュー・アルバムでは、タジ・マハールをゲストに迎えた3曲以外はすべて、この曲のようなアコギ弾き語りスタイル。オリジナルと、チャーリー・パットン、レッドベリー、ブラインド・ウィリー・マクテル、ウォルター・ヴィンスン(ミシシッピ・シークス)らのカバーが半々の構成だ。
2枚目以降は、スタイルを広げ、バンド編成でエレクトリック・ギターを弾き、スカやロックなども演奏しているのだが、ウケはイマイチといったところか。
やはり、彼の歌声は、アコースティックのサウンドにのることで本来のひなびた魅力を発揮できるような気がする。
だからかどうか、4枚目のアルバムでは、再び弾き語りでアコースティックという路線に戻っている。
60年代生まれだから、モダンなもの、コンテンポラリーなものをやって当然ではあるのだが、それでも彼の真の面目は、ブルースの一番原初的なかたちを再現できるところにある。
5枚目のアルバムは、再度ロック路線になったようだが、並行して戦前のアコースティック・ブルース曲群を、今後も歌い続けていってほしいものだ。
それらは、いってみれば、20世紀の無形の財産。誰かが生で歌い継ぐことで、今世紀にもしっかりと生き残っていくはずだから。