2005年1月10日(月)
#255 アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ「モーニン」(キングレコード/BLUE NOTE GXF 3002)
アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ、58年のアルバム。
この「モーニン」というタイトルで日本でもおなじみのアルバム、実はオリジナル・ジャケットにはグループ名があるのみで、何もタイトルが記されていない。「モーニン」という題のアルバムは68年に別に出ている。
だから「アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」というタイトルが正しいのだが、もう40年以上にわたってこのタイトルで通っているので、これでいかせていただく。
ピア二ストがホレス・シルヴァーからボビー・ティモンズに替わって初のレコーディング。他のメンバーは、リー・モーガン(tp)、ベニー・ゴルスン(ts)、ジミー・メリット(b)。
この五人の凄腕プレイヤーたちの演奏するタイトル・チューン「モーニン」がラジオで頻繁にかかるようになり、ジャズ・メッセンジャーズ(以降JMと略)の名は一躍メジャーなものとなる。また日本でも、61年の初来日以来、ファンキー・ジャズ・ブームを巻き起こしていく。
そういう意味でJMにとっては、ターニング・ポイントともいうべき重要な一枚なのだ。
さて、その「モーニン」なる曲は、ワーク・ソング風のブルース。ボビー・ティモンズのペンによる、ゴスペル色の強いナンバーだ。ミディアム・スローの力強いビートがまことに印象的。
演奏はテーマから始まり、モーガンのソロ→ゴルスンのソロ→ティモンズのソロ→メリットのソロと続いていく。いずれも非常に気合いの入った名演奏ばかり。
モーガンのブレイク破りのブローのインパクト、あるいはティモンズのグリッサンドの嵐やブロック・コード・ソロなど、何度聴いてもすごいの一言。
適当なやっつけ作業でなく、リハーサルを入念にやり、本番も満足のいくテイクが録れるまで何度でもやるブルーノートならではの「仕事」であるね。
10分近くという長さをまったく感じさせない、密度の濃い仕上がりに、脱帽である。
「アー・ユー・リアル」はゴルソンの作品。重厚な「モーニン」とは対照的な、ミディアム・テンポの軽快な曲調だ。
こちらはゴルスンのソロ→モーガンのソロ→ティモンズのソロ、そして各メンバーとブレイキーとのソロ交換と、それぞれのプレイヤーの「技」を思う存分堪能出来る。
続く「アロング・ケイム・ベティ」も、ゴルスンの作品。冒頭のテーマで、二管によるおなじみのゴルスン・ハーモニーが聴ける一曲。
60年代のライブでも頻繁に演奏されたナンバー。明るい曲調で快調にスウィングするさまが、なんともいい。
B面一曲目の「ドラム・サンダー組曲」はタイトル通りブレイキーのドラム・ソロをフィーチャーしたナンバー。ゴルスンの作品。
「ドラム・ロールをやらせたら世界一」とまで謳われたブレイキーの、パワーあふれるプレイを7分半にわたって楽しめる。彼の、しばしばナイアガラ瀑布に喩えられた熱演は、ハンパでなくすごい。
「ブルース・マーチ」は、この翌年にゴルスンがJMを脱退してアート・ファーマーらと共に結成する「ジャズテット」のファースト・アルバム「MEET THE JAZZTET」でも演奏されている、ブルース進行ながらもマーチの軽快なリズムを取り入れた、ハイテンションなナンバー。
ゴルスンの一分の隙もないアレンジと、各メンバーの気迫みなぎる演奏があいまって、最高の仕上がりだ。
ラストの「カム・レイン・オア・カム・シャイン」は、本アルバムで唯一、スタンダード・ナンバーを取り上げている。ハロルド・アーレン作曲。
テーマに続き、ティモンズのブロック・コードを多用したファンキーなソロ、ゴルスンのいぶし銀を思わせるブロー、華やかさではダントツのモーガンのソロ、そしてメリットの堅実なプレイ。こういう小唄風の曲にも、JMならではのダイナミズムが息づいている。
いまや五人のメンバーの大半は故人となり、JMの往年の演奏の素晴らしさは、音盤で偲ぶしかなくなってしまったが、今聴いても彼らのプレイは超人的だ。
繊細緻密なアレンジ、そして豪放なプレイ。並みのアーティストには望むべくもない、奇跡の融合がそこにある。
45年以上にわたり、聴く者の魂をゆすぶり続けてやまない、極上の演奏。ジャズというスタイルを取ってはいても、そこにはブルースの魂が強く感じられる一枚。聴かない手はないぜよ。
<独断評価>★★★★★