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音盤日誌「一日一枚」#256 ラリー・カールトン「エイト・タイムス・アップ」(ワーナー・パイオニア P-13012)

2022-07-28 05:02:00 | Weblog

2005年1月23日(月)



#256 ラリー・カールトン「エイト・タイムス・アップ」(ワーナー・パイオニア P-13012)

ラリー・カールトンのライブ盤。82年1月28日東京・郵便貯金ホールにて収録。

「夜の彷徨」(78年)のヒットで一躍、日本でもトップ・ギタリストとなったカールトンの、79年の「Mr.335ライヴ・イン・ジャパン」につぐセカンド・ライヴ・アルバム。

アルバム「ストライク・トワイス」「夢飛行」の曲を中心に、6曲を聞かせてくれる。

この一枚の売りはなんといっても、史上初のデジタル・マルチ録音に成功したライヴ盤だということだな。

実際、音質は極めてクリアでキメが細かく、カールトンらトップ・ミュージシャンの演奏をダイレクトに伝えてくれる。

一曲目「ストライク・トワイス」は81年リリースの同題のアルバムから。トロピカル感覚たっぷりの、アップテンポのナンバー。

「レディーズ・アンド・ジェントルマン、ミスター・サンサンゴ、ラリー・カールトン!!」というMCと共に登場したカールトンは、さっそく猛烈なスピードで複雑なパッセージを弾きまくり、オーディエンスを圧倒する。

彼の高速プレイをサポートするバック陣も実にノリがいい。エイブラハム・ラボリエル(b)、ジョン・フェラロ(ds)の超強力なリズム隊を中心にした最強メンバーばかりだから、当然か。

二曲目「サリュート」はラボリエルの作品。ミディアム・テンポの爽やかな曲調。

この曲でのカールトンのプレイも、まことにのびやか。愛器のサンバースト335が最高に艶っぽい、いい音を出している。

どうやったら、こんな滑らかなプレイが出来るのか、同じ楽器を弾く身としては、ただただうらやましいばかりナリ。

三曲目はアルバム「夢飛行(原題・SLEEPWALK)」(81年リリース)からのナンバー、「ブルース・バード」。

そのタイトルが示すように、ブルース・フィーリングにあふれた、スロー・ナンバー。

ここでのプレイがまたいい。明らかにカールトンは、その音楽的ルーツのひとつにブルースがあって、ときには隠し味的にプレイに織り込み、ときには前面にはっきりと押し出すなど、曲によって差はあるものの、彼の演奏がブルースなしでは絶対に生まれえなかったのは間違いなかろう。

何曲かの例外を除き、歌はほとんど歌わないカールトンではあるが、そのプレイこそは、まさにギターを駆使しての「歌」だと思う。とにかく、そのスリリングでエモーショナルな演奏は、黒人ブルースマンの歌にも決してヒケをとっていない。

「ブルース・バード」を聴けば、そのことは皆さんにおわかりいただけるのでないかな。

後半のトップは「ブラック・アンド・ホワイト」。

テリー・トロッタのエレピ・ソロで始まるこの曲は、わりとジャズ・フレイバーの強い、速いテンポのナンバー。

途中から加わってくるカールトンのソロも、実にスピーディでテクニカルな印象。

「カーン河上流」は「夢飛行」収録の作品。ラテン風のリズムが、耳に心地よい。

ここでのプレイは、もうギター泣きまくりというか、泣かせまくりというか。ラリカル節の見本みたいな感じ。

ギターに続くハモンドのプレイも、高揚感があって素晴らしい。キーボードの二人も、ホントにピタリとツボを押さえた楽器の使いかたをしてるよなあ。

ラストは「ハウス・オン・ザ・ヒル」。ミディアム・テンポのナンバー。

トロッタのエレピをフィーチャーした前半に続き、カールトンのワウ・ペダルを使った迫力たっぷりの演奏が聴ける。

レパートリーは残念ながら近作中心で、「ルーム335」に代表される、旧譜でのおなじみのナンバーはやっていないのだが、それでも中身の濃さで十分楽しませてくれる一枚。デジタル技術ならではの、くっきりした音像はやはりスゴい。

最近では原点回帰ということだろうか、2004年の最新作「サファイア・ブルー」ではもっぱらブルースを演奏するなど、56歳にしてまだまだ意欲的な音作りを続けるラリー・カールトン。相変わらず、目が離せない。

来月には来日し、ブルーノート東京に出演、そのブルース曲を生で聴かせてくれるという。当然、筆者も観に行きまっせ。ラリカル版ブルース・ギター、今から、本当に楽しみである。

<独断評価>★★★★



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