2007年4月22日(日)
#355 ジャッキー・マクリーン「NEW SOIL」(BLUE NOTE CDP 7 84013 2)
昨年3月に73才でなくなったジャッキー・マクリーン、59年のアルバム。アルフレッド・ライオンによるプロデュース。
マクリーンに関する説明は不要だとは思うが、念のため書いておくと、32年ニューヨーク生まれ、パーカー派の白人アルト奏者で、バップ期以降、常にジャズの第一線で活躍し続けた名プレイヤーだ。
晩年に至るまで、オリジナル・アルバムを60枚近く出しており、まさに大御所中の大御所。
筆者も幸いにして一度、生前のマクリーンの演奏を聴く機会があったが、還暦間近ながら衰えることのないパワフルな演奏ぶりに、いたく感激したものだった。
この一枚は、マクリーンが一番アクティブ&アグレッシブだった20代の頃、50年代末の録音。
マクリーンはブルーノート(旧いほうの)に20枚近くアルバムを残しているが、それらの中でも評価の高い作品のひとつだ。ブルーノートにおける録音としては一番古いわけではないのだが、最初にリリースされている。
パーソネルはマクリーンのほか、ドナルド・バード(tp)、ウォルター・デイヴィス・ジュニア(p)、ポール・チェンバース(b)、ピート・ラロッカ(ds)。
曲はM1、M2がマクリーン、M3~M6がデイヴィスのペンによるもの。
ミディアム・テンポのブルース、M1に始まり、アナログ盤未収録のM6に至るまで、いずれも入念なリハーサルを経た上でレコーディングされた、極上の演奏の連続だ。
マクリーンが過去所属していたプレスティッジと、移籍先のブルーノートの最大の相違点は、前者がリハーサルをろくにせずにアルバムをガンガン量産していたのに対し、後者がリハーサルにこそ重きを置き、プレイヤーに十分なリハーサルをさせた上でレコーディングし、しかも満足のいく出来でなければボツもやむなしとする厳しいシステムをとっていたことにある。
これがあの名盤ぞろいと謳われた1500番台・4000番台のラインナップを生み出すことにつながったのは、間違いあるまい。
せいぜい40分程度のアルバムを作るために一ヶ月以上もリハをやる。なんという贅沢。
しかしそれこそが、最高のプロモーションとなって、ブルーノートのレコード群は、常に高い評価とセールスの両方を勝ち得たのである。
「いいものは売れる」ことを証明してみせた、好例。
本盤では、主役のマクリーンの演奏が冴えわたっていることはむろんだが、彼と切り結ぶドナルド・バードといい、ウォルター・デイヴィス・ジュニアといい、バックの演奏も高水準にある。
バードとマクリーンによる一糸乱れぬアンサンブル、たとえばM5のテーマ演奏などは、パーカー=マイルス、あるいはパーカー=ガレスピーのコンビのそれにも匹敵するといえよう。
この一枚を聴くなら、携帯プレイヤーとかそういうのでなく、ぜひいいオーディオセットで聴いてほしい。ひとつひとつの楽器の音色まで、じっくり味わって欲しいから。
でもって、手にはバーボン・ロックのグラスを忘れずにね。
<独断評価>★★★★★