2003年5月14日(水)
#156 オスカー・ピータースン・ウィズ・ミルト・ジャクスン「VERY TALL」(VERVE POCJ-1928)
ほんに今日は、一日なんだかんだとあって疲れましたわ。
こんな日の締めくくりに聴くといえば、やはりリラックス出来るジャズ、それも癒し系の楽器、ヴァイブをフィーチャーしたヤツですかいのう。
というわけで選んだのがコレ。オスカー・ピータースン、61年のアルバム。
バグスことミルト・ジャクスンを迎えての、スペシャル・セッションだ。
バックはもちろん、レイ・ブラウン&エド・シグペンの黄金コンビ。もう、この顔ぶれを見るだけでも、たまりま千円(疲労でちょっと壊れ気味)。
どんな楽器をやってもすべてこなしてしまうという器用なバグスと、世界一のテクニシャン・ピアニスト、ピータースン。
このふたりが組んだのだから、さぞかし火花を散らすようなセッションになったと、ふつうは思うざんしょ?
ところがどっこい、むしろ「和気アイアイ」と評した方がふさわしい内容に仕上がっております。
いつもの自分のトリオでは百万馬力で弾きまくるピータースンも、ここではジャクスンに花をもたせてバックに徹し、極力出しゃばらず、でも自分にお鉢が回ってきたときは、しっかりとキメてくれます。
<筆者の私的ベスト3>
3位「JOHN BROWN'S BODY」
なんか、聴いたことがあるメロディ。それもそのはず、「ゴンベさんの赤ちゃん」といいますか、「リパブリック賛歌」といいますか、誰もが知っている例のあの歌でやんす。
元来は讃美歌だったのが俗謡化し、いろんな歌詞、タイトルがつくようになった曲。
この陽性でノリのいいメロディを素材に、気持ちよくスウィングしまくるバグスとオスカー。「ゴンベさん」がここまでジャズに化けてしまうとは、驚きだわい。
おたがいが好プレイで触発しあうことで、極上のファンキー・フレーズが即座に生み出されているのが興味深い。
2位「REUNION BLUES」
ジャクスンの作品。バグスはモダン・ジャズ・カルテット(MJQ)というクラシック指向の強いコンボに所属してはいたが、その一方ではブルース的なものを深く愛し、しばしば演奏していた。これもまた、タイトル通りブルース形式のナンバー。
この曲は63年にはMJQでもレコーディングしているが、ジョン・ルイスがピアノのそのヴァージョンより、当ヴァージョンの方が格段とファンキーでエキサイティングなのはいうまでもない。
リズム隊のみのリフ演奏ではじまり、そのうちヴァイブとピアノが加わっていく。
ソロはまずはバグス、続いてピータースン。音数は押さえて、シンプルなフレーズを紡いでいく。
これがまた、ツボにはまったプレイの連続。リズム隊のグルーヴも最高で、思わず体が動き出しちゃいます。
1位「GREEN DOLPHIN STREET」
もとは映画の主題曲だったのが、モダン・ジャズの巨人たち、マイルス、ビル・エヴァンスらに好んで取り上げられたことでネオ・スタンダードとなったナンバー。独特のコード進行が、なんとも深遠な印象を与える名曲だ。
ここでのバグスの優雅で透明感あふれるソロは、筆舌に尽くし難いほど美しい。
まさにバグスの前にバグスなし。バグスの後にもバグスなし、である。
そして後半、控えめに登場するピータースンのピアノ・ソロ。これまた極上の味わい。
いつもの饒舌きわまりないプレイとはまた違って、ピアニシモ中心の、抑制のきいた表現が実に効果的。
バックのベース&ドラムも、これ以上の出来を望めないくらい、完璧なグルーヴを提供してくれている。
最後はまたバグスにソロを戻し、大いに余韻を残しつつ、終わる。もう、溜息もの。
この一曲を聴くためだけでも、本盤を買う価値は絶対ありまっせ。
両巨頭の対決ならぬ、見事なコラボレーションにノック・アウト。ジャズはこれだから、やめられまへん!
<独断評価>★★★★☆