2023年3月2日(木)
#470 THE YARDBIRDS「FIVE LIVE YARDBIRDS」(Rhino R4 70189)
英国のロック・バンド、ザ・ヤードバーズのデビュー・アルバム。64年リリース。ジョルジオ・ゴメルスキーによるプロデュース。ロンドン・マーキー・クラブでのライブ録音。
すべての伝説は、この一枚から始まった。ロック・ファンなら絶対聴かずに済ませるわけにいかない、そんなアルバムだろう。
MCによるメンバー紹介に続いて始まるのは「トゥー・マッチ・モンキー・ビジネス」。キング・オブ・ロックンロール、チャック・ベリー56年のヒットのカバーである。
アレンジは、ほぼベリーのオリジナル通り。この曲での主役はボーカルのキース・レルフと、リード・ギターのエリック・クラプトン。
ソリッドで切れ味鋭いクラプトンのソロに、オーディエンスの注目が集まるのが、手に取るように分かる。
「アイ・ガット・ラヴ・イフ・ユー・ウォント・イット」はルイジアナ・ブルースマン、スリム・ハーポことジェイムズ・ムーアのナンバー。
この曲ではレルフのブルース・ハープが全面的にフィーチャーされる。ボーカルよりも、むしろハープが表芸なんじゃないかと思うくらい、彼らのハープはカッコいい。音色、音量ともに、本場のブルース・ハーピストにタメを張れる腕前だと思う。
「スモークスタック・ライトニン」はシカゴ・ブルースの巨人、ハウリン・ウルフのナンバー。
オリジナル・バージョンより少しテンポ・アップしていて、ブルースというよりはブルース・ロック。
レルフのハープに、シャープに絡むクラプトンのギター。迫力は満点、オーディエンスもヒート・アップしてくる。
「グッド・モーニング・リトル・スクールガール」は戦前活躍したブルースマン、サニーボーイ・ウィリアムスン一世のナンバー。
レルフの紹介により、リード・ボーカルを交代してベースのボール・サミュエル=スミスとクラプトンが歌う。
ふたりの歌は上手いっていうのではないが、ちょっとトッポい感じで初々しい。
オリジナルのようにはブルースっぽくない、アップ・テンポ。オーディエンスがのりやすいようにということだろう、いかにもビート・バンドらしいアレンジだ。
「リスペクタブル」はR&Bバンド、アイズリー・ブラザーズのナンバー。彼らの59年のデビュー・アルバムより。ちょっとシブめの選曲だな。
フレーズの繰り返しの多い、リズミックなナンバー。オーディエンスもビートに合わせて身体を揺らしている、そんなシーンが目に浮かぶ。
その強烈なグルーヴにおされて、次第にオーディエンスはトランスに突入していく。
ブレイクを挟んで、後半のステージが始まる。
「ファィヴ・ロング・イヤーズ」はシカゴ・ブルースマン、エディ・ボイドのナンバー。オリジナルはスローなピアノ・ブルースだ。
ヤードバーズはこの曲をギター・バンド・スタイルのアレンジで、クラプトンの泣きのギターをフィーチャーして演奏する。
のちのクラプトン版「ファィヴ・ロング・イヤーズ」でもおなじみの、ラストに「She had the nerve」のフレーズを繰り返すパターンが既にここでも使われていて、思わずクスリとしてしまった。
「プリティ・ガール」はボ・ディドリーこと、エラス・マクダニエルのナンバー。
陽気なアップ・テンポのロックンロール。マラカスで場を盛り上げるレルフ、そしてコーラスでそれに応える他のメンバー。いい感じにエキサイトするマーキー・クラブ。
「ルイーズ」はキング・オブ・ブギ、ジョン・リー・フッカーのナンバー。アップ・テンポのシャッフル。
レルフのボーカルに、派手にオブリガードを入れるクラプトン。そして、怒涛のソロが展開される。
やはり、クラプトンはピュアなブルース・ナンバーとなると、気合いの入れ方が段違いだ。
本盤では一番ブルース・バンドっぽいサウンドで、筆者も気に入っている。
「アイム・ア・マン」は再び、ボ・ディドリーのカバー。彼の代名詞ともいえるジャングル・ビートのナンバー。
これはジミー・ペイジが率いる、第4期のヤードバーズに至るまで延々と引き継がれた、超定番のレパートリーだ。
ここでの主役は、ボーカルとハープで全編にわたり、八面六臂の活躍を見せるレルフ。
本盤ではわりとコンパクトなサイズだが、のちのライブでは10分近くの長尺になることもしばしばで、ステージのハイライトとなる一曲だった。
ラストは、またもボ・ディドリーのカバー。「ヒア・ティス」である。超アップ・テンポでグイグイ飛ばすビート・ナンバー。
これでもかとコール・アンド・レスポンスを執拗に繰り返すバンド・メンバー。そしてギターで煽りまくるクラプトン。
思わずオーディエンスも、興奮のるつぼに叩きこまれる。そして、MCが絶叫するうちに、ステージが終わる。
実際のステージではこれに1、2曲加わった程度で、当時のライブをほぼ忠実に再現した一枚である。
すべてがひとのカバー曲で、勝負出来るだけのオリジナル・レパートリーをほとんど持っていなかった、駆け出しの頃のヤードバーズ。
オリジナル・ナンバーはようやく次のアルバム「フォー・ユア・ラヴ」から登場する。
演奏にはまだまだ荒削りなところも多く、ツッコミどころも多いが、それでもイキの良さはビンビンと伝わってくる。
オーバー・ダビング一切なし、すべて一発録りという、いさぎのよさを筆者としては高く評価したい。
世界の多くの若者をこの一枚でロックの世界に引きずり込んだ「ファイヴ・ライヴ」。
60年近く経とうが、これを聴くたびに筆者も血が熱くたぎります。
<独断評価>★★★★
英国のロック・バンド、ザ・ヤードバーズのデビュー・アルバム。64年リリース。ジョルジオ・ゴメルスキーによるプロデュース。ロンドン・マーキー・クラブでのライブ録音。
すべての伝説は、この一枚から始まった。ロック・ファンなら絶対聴かずに済ませるわけにいかない、そんなアルバムだろう。
MCによるメンバー紹介に続いて始まるのは「トゥー・マッチ・モンキー・ビジネス」。キング・オブ・ロックンロール、チャック・ベリー56年のヒットのカバーである。
アレンジは、ほぼベリーのオリジナル通り。この曲での主役はボーカルのキース・レルフと、リード・ギターのエリック・クラプトン。
ソリッドで切れ味鋭いクラプトンのソロに、オーディエンスの注目が集まるのが、手に取るように分かる。
「アイ・ガット・ラヴ・イフ・ユー・ウォント・イット」はルイジアナ・ブルースマン、スリム・ハーポことジェイムズ・ムーアのナンバー。
この曲ではレルフのブルース・ハープが全面的にフィーチャーされる。ボーカルよりも、むしろハープが表芸なんじゃないかと思うくらい、彼らのハープはカッコいい。音色、音量ともに、本場のブルース・ハーピストにタメを張れる腕前だと思う。
「スモークスタック・ライトニン」はシカゴ・ブルースの巨人、ハウリン・ウルフのナンバー。
オリジナル・バージョンより少しテンポ・アップしていて、ブルースというよりはブルース・ロック。
レルフのハープに、シャープに絡むクラプトンのギター。迫力は満点、オーディエンスもヒート・アップしてくる。
「グッド・モーニング・リトル・スクールガール」は戦前活躍したブルースマン、サニーボーイ・ウィリアムスン一世のナンバー。
レルフの紹介により、リード・ボーカルを交代してベースのボール・サミュエル=スミスとクラプトンが歌う。
ふたりの歌は上手いっていうのではないが、ちょっとトッポい感じで初々しい。
オリジナルのようにはブルースっぽくない、アップ・テンポ。オーディエンスがのりやすいようにということだろう、いかにもビート・バンドらしいアレンジだ。
「リスペクタブル」はR&Bバンド、アイズリー・ブラザーズのナンバー。彼らの59年のデビュー・アルバムより。ちょっとシブめの選曲だな。
フレーズの繰り返しの多い、リズミックなナンバー。オーディエンスもビートに合わせて身体を揺らしている、そんなシーンが目に浮かぶ。
その強烈なグルーヴにおされて、次第にオーディエンスはトランスに突入していく。
ブレイクを挟んで、後半のステージが始まる。
「ファィヴ・ロング・イヤーズ」はシカゴ・ブルースマン、エディ・ボイドのナンバー。オリジナルはスローなピアノ・ブルースだ。
ヤードバーズはこの曲をギター・バンド・スタイルのアレンジで、クラプトンの泣きのギターをフィーチャーして演奏する。
のちのクラプトン版「ファィヴ・ロング・イヤーズ」でもおなじみの、ラストに「She had the nerve」のフレーズを繰り返すパターンが既にここでも使われていて、思わずクスリとしてしまった。
「プリティ・ガール」はボ・ディドリーこと、エラス・マクダニエルのナンバー。
陽気なアップ・テンポのロックンロール。マラカスで場を盛り上げるレルフ、そしてコーラスでそれに応える他のメンバー。いい感じにエキサイトするマーキー・クラブ。
「ルイーズ」はキング・オブ・ブギ、ジョン・リー・フッカーのナンバー。アップ・テンポのシャッフル。
レルフのボーカルに、派手にオブリガードを入れるクラプトン。そして、怒涛のソロが展開される。
やはり、クラプトンはピュアなブルース・ナンバーとなると、気合いの入れ方が段違いだ。
本盤では一番ブルース・バンドっぽいサウンドで、筆者も気に入っている。
「アイム・ア・マン」は再び、ボ・ディドリーのカバー。彼の代名詞ともいえるジャングル・ビートのナンバー。
これはジミー・ペイジが率いる、第4期のヤードバーズに至るまで延々と引き継がれた、超定番のレパートリーだ。
ここでの主役は、ボーカルとハープで全編にわたり、八面六臂の活躍を見せるレルフ。
本盤ではわりとコンパクトなサイズだが、のちのライブでは10分近くの長尺になることもしばしばで、ステージのハイライトとなる一曲だった。
ラストは、またもボ・ディドリーのカバー。「ヒア・ティス」である。超アップ・テンポでグイグイ飛ばすビート・ナンバー。
これでもかとコール・アンド・レスポンスを執拗に繰り返すバンド・メンバー。そしてギターで煽りまくるクラプトン。
思わずオーディエンスも、興奮のるつぼに叩きこまれる。そして、MCが絶叫するうちに、ステージが終わる。
実際のステージではこれに1、2曲加わった程度で、当時のライブをほぼ忠実に再現した一枚である。
すべてがひとのカバー曲で、勝負出来るだけのオリジナル・レパートリーをほとんど持っていなかった、駆け出しの頃のヤードバーズ。
オリジナル・ナンバーはようやく次のアルバム「フォー・ユア・ラヴ」から登場する。
演奏にはまだまだ荒削りなところも多く、ツッコミどころも多いが、それでもイキの良さはビンビンと伝わってくる。
オーバー・ダビング一切なし、すべて一発録りという、いさぎのよさを筆者としては高く評価したい。
世界の多くの若者をこの一枚でロックの世界に引きずり込んだ「ファイヴ・ライヴ」。
60年近く経とうが、これを聴くたびに筆者も血が熱くたぎります。
<独断評価>★★★★