2022年12月19日(月)
#400 JIMMY ROGERS「CHICAGO BOUND」(MCA/Chess CHD-93000)
ブルース・シンガー/ギタリスト、ジミー・ロジャーズ、70年リリースのアルバム。レナード・チェス、フィル・チェスによるプロデュース。
50年代(50〜56年)のレコーディングが集められ、ロジャーズの代表作として名高い一枚。
ロジャーズは本名ジェイムズ・アーサー・レイン。1924年ミシシッピ州ルールヴィルの生まれ。幼い頃からハープ、次いでギターに親しみ、イースト・セントルイスでプロのミュージシャンとしてのキャリアをスタート、40年代半ばにブルースの都シカゴに移住して、本格的な活動に入る。
47年にマディ・ウォーターズ、リトル・ウォルターのバンドに加入、大いに注目されるようになる。
彼らのバック・ミュージシャンをつとめる一方、ソロ・シンガーとして50年8月にシングル「That’s All Right」(とB面「Luedella」)を初録音する。
「That’s All Right」は残念ながらヒットには至らなかったが、このアルバムに収められてからは、ロジャーズを代表する1曲として、多くのブルースファンに聴かれるようになり、後続ミュージシャンにカバーされることも多い。
この2曲、マディ・ウォーターズのレコーディングの後、マディ抜きのメンバーで録ったそうだが、ウォルターのハープ、ビッグ・クロフォードのベースというシンプルな編成ながら、小味なスロー・ブルースとしてよくまとまっている。
ロジャーズの曲作りの上手さが、既に発揮されているいいサンプルだ。
同50年10月には「Goin’ Away Baby」もレコーディングする。こちらにはギターでマディ・ウォーターズが加わっている。ドラムレスで、「Rollin’ And Tumblin’」ふうのカントリー・ブルースっぽいサウンドだ。
翌51年1月には「I Used To Have A Woman」、7月には「Money, Marbles And Chalk」をレコーディング。ピアノ、ドラムスも加わったバンド・サウンドで、音にも厚みが出て来ている。
52年2月には「Back Door Friend」、52年8月には「Out On The Road」「Last Time」のシングル用2曲、53年5月には「Act Like You Love Me」を録音。
54年1月には「Blues Leave Me Alone」そしてアルバム・タイトル曲でもある「Chicago Bound」をレコーディング。
このセッション、バックがマジ最高だ。ウォルター、マディ、ヘンリー・グレイ(P)、ウィリー・ディクスン(B)、フレッド・ビロウ(Ds)と、チェス黄金時代のメンバーが勢揃い。
これで、ごキゲンな演奏にならないわけがないね。
特に「Chicago Bound」でのスピード感溢れるウォルター、ロジャーズのプレイはなんとも素晴らしい。ギターの自然な歪みの音でさえ、聴く者を快感に誘ってくれる。
同じく54年4月録音の「Sloppy Drunk」は、軽快なテンポのツービート・ナンバー。
こちらもバックにウォルター、オーティス・スパン(P)、ディクスン、ビロウとベストな布陣で、ノリノリの演奏を聴かせてくれる。
「Chicago Bound」と「Sloppy Drunk」は一枚のシングルにまとめられ、ブルースのスタンダードとして後々まで聴かれるようになる。
50年代のシカゴ・ブルースといえばこれ、といわれるくらい、ジミー・ロジャーズはメジャーな存在になった。
56年10月の「Walking By Myself」も、今も人気の一曲。
「Sloppy Drunk」のメンツからハープのみビッグ・ウォルター・ホートンに代わった編成での演奏も、これまたグルーヴィ。ホートンの縮緬ビブラートが実にいい味を出している。
ロジャーズというアーティストのよさは、都会的で洗練された感覚と、いなたさ、素朴さが無理なく同居しているところにあると筆者は思う。
彼の歌は上手いというよりは、どちらかといえばヘタウマなのだが、その「のほほん」とした味わいは唯一無二のものだ。
「That’s All Right」のようなフラれ男の歌でも、恨みがましさは感じられず、しみじみとした哀感が伝わって来る。
シャウトするシンガーばかりがブルース・シンガーじゃない。
鼻歌に近いような素朴な歌も、またブルースなのである。
時代は変われど、ジミー・ロジャーズのナイーブな歌の魅力はまだまだ褪せていない。
ブルースファン以外の方々にこそ、聴いて欲しい一枚。
ロジャーズのシンガーソングライターとしての才能も、そこで発見できるはずだ。
<独断評価>★★★★
ブルース・シンガー/ギタリスト、ジミー・ロジャーズ、70年リリースのアルバム。レナード・チェス、フィル・チェスによるプロデュース。
50年代(50〜56年)のレコーディングが集められ、ロジャーズの代表作として名高い一枚。
ロジャーズは本名ジェイムズ・アーサー・レイン。1924年ミシシッピ州ルールヴィルの生まれ。幼い頃からハープ、次いでギターに親しみ、イースト・セントルイスでプロのミュージシャンとしてのキャリアをスタート、40年代半ばにブルースの都シカゴに移住して、本格的な活動に入る。
47年にマディ・ウォーターズ、リトル・ウォルターのバンドに加入、大いに注目されるようになる。
彼らのバック・ミュージシャンをつとめる一方、ソロ・シンガーとして50年8月にシングル「That’s All Right」(とB面「Luedella」)を初録音する。
「That’s All Right」は残念ながらヒットには至らなかったが、このアルバムに収められてからは、ロジャーズを代表する1曲として、多くのブルースファンに聴かれるようになり、後続ミュージシャンにカバーされることも多い。
この2曲、マディ・ウォーターズのレコーディングの後、マディ抜きのメンバーで録ったそうだが、ウォルターのハープ、ビッグ・クロフォードのベースというシンプルな編成ながら、小味なスロー・ブルースとしてよくまとまっている。
ロジャーズの曲作りの上手さが、既に発揮されているいいサンプルだ。
同50年10月には「Goin’ Away Baby」もレコーディングする。こちらにはギターでマディ・ウォーターズが加わっている。ドラムレスで、「Rollin’ And Tumblin’」ふうのカントリー・ブルースっぽいサウンドだ。
翌51年1月には「I Used To Have A Woman」、7月には「Money, Marbles And Chalk」をレコーディング。ピアノ、ドラムスも加わったバンド・サウンドで、音にも厚みが出て来ている。
52年2月には「Back Door Friend」、52年8月には「Out On The Road」「Last Time」のシングル用2曲、53年5月には「Act Like You Love Me」を録音。
54年1月には「Blues Leave Me Alone」そしてアルバム・タイトル曲でもある「Chicago Bound」をレコーディング。
このセッション、バックがマジ最高だ。ウォルター、マディ、ヘンリー・グレイ(P)、ウィリー・ディクスン(B)、フレッド・ビロウ(Ds)と、チェス黄金時代のメンバーが勢揃い。
これで、ごキゲンな演奏にならないわけがないね。
特に「Chicago Bound」でのスピード感溢れるウォルター、ロジャーズのプレイはなんとも素晴らしい。ギターの自然な歪みの音でさえ、聴く者を快感に誘ってくれる。
同じく54年4月録音の「Sloppy Drunk」は、軽快なテンポのツービート・ナンバー。
こちらもバックにウォルター、オーティス・スパン(P)、ディクスン、ビロウとベストな布陣で、ノリノリの演奏を聴かせてくれる。
「Chicago Bound」と「Sloppy Drunk」は一枚のシングルにまとめられ、ブルースのスタンダードとして後々まで聴かれるようになる。
50年代のシカゴ・ブルースといえばこれ、といわれるくらい、ジミー・ロジャーズはメジャーな存在になった。
56年10月の「Walking By Myself」も、今も人気の一曲。
「Sloppy Drunk」のメンツからハープのみビッグ・ウォルター・ホートンに代わった編成での演奏も、これまたグルーヴィ。ホートンの縮緬ビブラートが実にいい味を出している。
ロジャーズというアーティストのよさは、都会的で洗練された感覚と、いなたさ、素朴さが無理なく同居しているところにあると筆者は思う。
彼の歌は上手いというよりは、どちらかといえばヘタウマなのだが、その「のほほん」とした味わいは唯一無二のものだ。
「That’s All Right」のようなフラれ男の歌でも、恨みがましさは感じられず、しみじみとした哀感が伝わって来る。
シャウトするシンガーばかりがブルース・シンガーじゃない。
鼻歌に近いような素朴な歌も、またブルースなのである。
時代は変われど、ジミー・ロジャーズのナイーブな歌の魅力はまだまだ褪せていない。
ブルースファン以外の方々にこそ、聴いて欲しい一枚。
ロジャーズのシンガーソングライターとしての才能も、そこで発見できるはずだ。
<独断評価>★★★★