NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#65 V.A.「J-BLUES BATTLE VOL.1」(BLUE-Z)

2022-01-18 05:07:00 | Weblog

2001年9月23日(日)



V.A.「J-BLUES BATTLE VOL.1」(BLUE-Z)

実に「オモロイ」一枚を入手してしまった。その名も「J-BLUES BATTLE」。95年発表。

これをリリースした「BLUE-Z」というレーベルはビーイング・グループのひとつで、大阪にある。

もともと、このオムニバス・アルバム、かの有名なアメリカ村の中にあるクラブ、「GRAND Cafe」において95年1月以来行われていた「SUNDAY BLUES LIVE」という定例ライヴから生まれた企画。

「The Blues Is Roots of Rock」を謳い文句に、若いクラブ世代にも、ブルースを聴いてもらおうというイベントである。

そこに出演していた若手ブルース・シンガー、春名俊希をはじめとして、女性ブルース・デュオ「STORMY」、さらにはベテラン・近藤房之助や、B'Zのリード・ヴォーカル・稲葉浩志といった売れっ子まで参加しているのだから、ちょっと気になるっしょ?

トップは近藤房之助の十八番、BBの「ロック・ミー・ベイビー」。

ま、これは至極まっとうなブルースですな。ホーンも加わって、バリバリ、ファンキーな音であります。

松川純一郎の、泣きまくりのギター・ソロもカッコよろしい。

が、それ以外は各自それぞれの解釈でブルースしていて、これが結構「オモロイ」のですわ。

二番手は、立原燎(vo)、Maki(静沢真紀)(g)のデュオ、「STORMY」。レオン・グロスの「スタッガー・リー」を演っている。ブルースというよりは、カントリー・ロック風のサウンド。

ブルースマスター、塩次伸二氏にギターの手ほどきを受けたというMakiのプレイは、けっこう本格的。

彼女、先日のブルカニでも登場していたが、きちんと基本をおさえた堅実なプレイが光っている。

ちょっと見には可愛い女のコだからって、決してあなどれないっすよ。

立原燎の、ハイトーンを生かしたシャープなヴォーカルも、勇ましい感じで資質十分。

将来が実に楽しみなふたりである(現在デュオは解消、それぞれソロで活躍中)。

続いては、春名俊希による「セイム・オールド・ブルース」。

もちろん、フレディ・キングの名唱で知られるドン・ニックス作のあのナンバー。

アレンジとリード・ギターは、ビーイングの”裏番”的存在のプロデューサー、葉山たけし。

フレディのソロをほぼ完コピして、バリバリ弾きまくっている。

春名クンの歌の出来ばえはといえば、年齢ゆえかまだ青臭さはまぬがれず、フレディのあのド迫力にも到底かなわぬものの、結構ガンバっている。今後の精進次第ですな。

それにしても、こんな「セイム・オールド・ブルース」があったなんて、Dr.Toriさん、ご存知でしたかぁ~っ?

お次は、川島だりあ(vo)&倉田冬樹(g)、といえば、判るひとには判る、そう、後に「FEEL SO BAD」というバンド名で活躍するふたりである。

川島だりあは、最初川島みきという名前でデビューしたJポップ系のシンガー。ビーイングの中堅どころの歌い手で、ソングライターとしても活躍している。

それがなにやら、ジャニス・ジョプリン風のしゃがれ声に一変、左右トラックに飛び回るフリーキーな倉田のギターをバックに歌うは、ジミ・ヘンドリクスの「レッド・ハウス」。

この、のたうちまわるようなハード・ロックをブルースと呼ぶのも、いささか抵抗があるが、ジミも本来はブルース・ギタリスト。彼の音楽の根底にはすべてブルースが流れているのも事実だ。

ま、ブルースを広義に解釈してみれば、こんなのもアリでしょう。

五番目に登場するのは、千葉恭司(vo)、団篤史(g)のコンビ。

これも知っているひとは知っている、明石昌夫(b)率いるハード・ロック・ユニット、AMG(AKASHI MASAO GROUP)のメンバー。

歌うのは、ロック系のひとびとには絶大なる支持があるのか、またもやフレディ・キングのレパートリー、「パレス・オブ・ザ・キング」。

こちらのサウンドは、最初はアコースティックに始まり、途中でハード・ロックに一変するという、ZEPの「ブリング・イット・オン・ホーム」のパクりっぽい構成。でも、実力派のAMGだけあって、なかなかまとまってます。

千葉選手の声はへヴィメタの名残りがプチ匂いますが(笑)、まあ、細かいことは気にしますまい。

エンディングは、心なしかコーラス・アレンジがポール・ロジャーズの「マディ・ウォーター・ブルース」っぽいところもあったりして、アレンジの明石センセの、一筋縄ではいかない「合わせ技」を感じます(笑)。

Dr.Toriさん、これにもまたまたビックリでしょ?

ラストには、本アルバム一番の「問題作」が控えている。

「B'Zの」という説明ももはやいらないくらい、日本を代表するシンガーとなった稲葉浩志がトリを取っているのである。

カバーしているのは、なんと、ローウェル・フルスン67年のヒット「トランプ」。

このラップの元祖のようなナンバーを、稲葉は大胆に再構成、原曲のムードをまったく払拭して、新しい「トランプ」を作り出してしまった。

アコギ、ハープ(稲葉自身がやっているのだが結構上手い)、打ち込み風ドラムの重たいビートにからんで、野獣のような稲葉のラップ&シャウトが響き渡る。

ここまで来ると、カバーの域を完全に脱してしまっている。

オリジナルをサンプリングで取り入れたラップ、ヒップホップ系のアーティストらよりも、さらに大胆不敵な試みといわざるをえない。

これをブルースとよんでいいものか、賛否両論あるだろうが、なかなか「オモロイ」出来だ。

SKUNK Cさん、こんな「トランプ」、知ってましたかぁ~っ?

以上6曲のミニ・アルバム、なかなか好評だったようで、以後、VOL.2、VOL.3も出ている。

VOL.2には大黒摩季、VOL.3にはZARDの坂井泉水まで登場したというから、かなりドヒャーッ!な感じだが。

ま、若い世代に「ブルース」なる音楽ジャンルを知らしめた功績は、素直に認めることにしよう。

その中身は、だいぶんブルースとかけ離れたものもありますが(笑)。



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