2003年6月21日(土)
#172 エアプレイ「ロマンティック」(RVC RVP-6456)
エアプレイ、最初にして最後のアルバム。80年リリース。
エアプレイとは、プロデューサー、コンポーザー、アレンジャーとして名高いデイヴィッド・フォスター(kb)、ジェイ・グレイドン(g)のふたりに、ヴォーカルのトミー・ファンダーバーグが加わったユニット。
アルバムには彼らに加えて、親交のあったミュージシャンが多数参加している。TOTOのジェフ&スティーヴ・ポーカロ兄弟、スティーヴ・ルカサー、デイヴィット・ハンゲイト、レイ・パーカー・ジュニア、ビル・チャンプリン、トム・ケリーほかの豪華な面々だ。
<筆者の私的ベスト3>
3位「NOTHIN' YOU CAN DO ABOUT IT」
フォスター、グレイドン、スティーヴン・キップナーの作品。
もともとは前年、グレイドンがマンハッタン・トランスファーのアルバム「EXTENSIONS」をプロデュースした時に提供した楽曲。
つまり、作者自身によるパフォーマンスなわけだが、これもマントラ版に負けず劣らず、いい出来だ。
衝撃的なブラスのイントロからいきなり、フォスター=グレイドンのファンクな世界が全開。
中間部では、グレイドンの天翔けるようなギターももちろん聴ける。
一分のスキもない緻密なアレンジ。完璧な演奏。そして最高レベルの技術を駆使したレコーディング。
もう、文句のつけようがありません。
そして意外に善戦しているのが、当時ほとんど無名だったセッション・ヴォーカリスト、ファンダーバーグだろう。
広い声域、のびやかな声質をフルに生かして、ソロはもちろん、多重録音コーラスにも挑戦しているのだが、これがなかなかキマっている。
こういう才能をもった人々がゴロゴロしているんだから、アメリカって国はスゴいやな。ホントに層が厚いわ。
2位「CRYIN' ALL NIGHT」
フォスター、グレイドン、スティーヴン・キップナーの作品。
早めのテンポのロック・ナンバー。シンセとツイン・ギターのからむイントロからして、ドラマティックでカッコいい。
ハンゲイト=ポーカロという最強のリズム隊のサポートを得て、なんともごキゲンなグルーヴだ。
そして、キレのいいファンダーバーグの歌声が、これらにからみ、互角で渡りあう。
グレイドンのリフも要所要所でバッチリと決まって、聴く者を唸らせる。名人はさすがに期待を裏切らないね。
キャッチーなメロディもまた、印象的。どうしてこう、いい曲ばっかり書けるんだろう。凡人はうらやむばかりであります。
1位「AFTER THE LOVE IS GONE」
いい曲がてんこもりのアルバムなので、迷いに迷ったのだが、これに決めた。
フォスター、グレイドン、ビル・チャンプリンの作品。
これまた彼らが、アース・ウィンド&ファイアーのために提供していた楽曲。前年のアルバム「I AM」に収められている。
数あるラヴ・バラードの中でも白眉といえるこの名曲を、当時最高級のメンバーがプレイしたのだから、出来が悪いわけがない。
特にこの曲におけるキー・ポイントは「ヴォーカル」であろうが、ファンダーバーグの歌いぶりは実に見事だ。
彼は、どちらかといえばTOTOのボビー・キンボールのように、ハイトーンで鋭角的に攻めるタイプの歌い手なのだが、モーリス・ホワイトのように中低音をきかせて、シブく歌いあげることも全然OKなのである。まさにオールマイティ。
やっぱ、本場にはかなわねーやと、二度脱帽である。
また作者のひとりチャンプリンの、コーラスでの好サポートも光っているし、グレイドンの多重録音ソロもエクセレント。
まさに珠玉の一編なり。
当時はAORとかなんだとかいろいろレッテルを貼って売られていたが、今改めて聴き返してみると「良質の音楽」、このひとことに尽きると思う。とくに曲作りとアレンジに関しては、超一流の「職人技」を感じるね。
今では音楽活動もマイ・ペースで、かなり寡作のフォスターとグレイドンだが、当時は若さ、パワーに満ちあふれた音楽を精力的に生み出していたのが、よくわかる。
当時からのファンはいうまでもなく、若いリスナーにも、おススメである。
<独断評価>★★★★★