2010年5月22日(土)
#123 リル・サン・ジャクスン「Get High Everybody」(Restless Blues/Document)
#123 リル・サン・ジャクスン「Get High Everybody」(Restless Blues/Document)
シンガー/ギタリスト、リル・サン・ジャクスンのインペリアルにおける録音より。ジャクスンの作品。
リル・サン・ジャクスンは本名メルヴィン・ジャクスン、1915年テキサス州タイラー生まれ、76年同州ダラスにて60才で亡くなっている。
もともとはゴスペルを歌っていたが、ブルースにも興味を持つようになる。第二次世界大戦時は従軍し、帰還後本格的にミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせることになる。
まずはゴールド・スター、モダンにて録音、続いて50年以降はインペリアルにて約50曲ものシングルを出すことになる。
とりわけ、「Rockin' and Rolloin'」は大ヒットとなり、一躍人気シンガーとなる。のちのロックンロール黄金時代を予感させるようなタイトルだが、わりとゆったりしたテンポの弾き語りで、ロックというよりはブルースな一曲。
54年までは破竹の快進撃だったジャクスンも、インペリアルを離れた50年代後半からは表舞台から遠ざかってしまう。
60年に再発見され、アーフリーにてレコーディング。このときは、インペリアルにおいてメインであったバンド・スタイルではなく、彼本来の弾き語りであった。
人生のほんの一時期(12年ほど)、メジャーシーンで活躍したミュージシャンなのだが、50年たった今もCDが再発され聴かれているのは、草葉の陰の本人にとっても「望外の喜び」といったところではなかろうか。
彼の持ち味は、その力の抜けた素朴な歌声にあると思う。ちょっと鼻にかかった感じが、いなたくてGOOD。
今日聴いていただく「Get High Everybody」は、アップテンポのシャッフル。タイトル通り、ノリノリのダンス・ナンバーである。
バックのバンドは。完全にジャンプ仕様。ホーンセクションをバッチリ従えているが、彼のギタープレイは残念ながら表には出てこない。ジャクスンはまるでスタンダップ・ブルースマンのようだ。
せっかくメジャーブレイクしたのにその路線から降りてしまったのは、ジャクスン自身、こういうスタイルはあまりお好みでなかったのかもね。
ジャクスンのもうひとつの魅力、ギタープレイについてはここでは語らないが、興味のあるひとはアーフリーから出ている「Blues Come to Texas」を聴いてみてくれ。これもまたオツな味わいがある。
知る人ぞ知るテキサス・ブルースマン、リル・サン・ジャクスン。彼の音楽もまた、20世紀の重要な遺産だと思うね。