2012年4月29日(日)
#214 ゼム「Baby Please Don't Go」(World of Them/Decca)
#214 ゼム「Baby Please Don't Go」(World of Them/Decca)
アイルランド出身のロック・バンド、ゼムのベスト盤(69年)より。ビッグ・ジョー・ウィリアムズの作品。
ゼムは北アイルランドの首都、ベルファストにて63年結成された(当初は5人組)。翌64年ロンドンに進出してこの「Baby Please Don't Go」でシングルデビューしたが、そのB面である「Gloria」がヒットしたことで一躍注目される。
翌年、デビューアルバム「Them」をリリースしたが、この「Baby Please Don't Go」は収録されず、69年のベスト盤でようやく日の目を見たというわけである。
リード・ボーカルのヴァン・モリスンはセカンド・アルバム「Them Again」(66年)まではバンドに参加したが、その後脱退、ひとりシンガー/ソングライターの道を歩むことになる。
66才の現在もなお、第一線で活躍し続けるモリスン。その原点はこのゼムというバンドにあるわけだが、今聴いてみても、パンキッシュでとんがった感じのサウンドが実にカッコいい。
ビッグ・ジョー・ウィリアムズの鄙びたブルースも、アップテンポのビート、オルガンの味付けでいかにも60年代風なサウンドに変貌している。
とりわけ、モリスンの攻撃的でエッジの立った歌声は、一度聴くと耳から離れない。
ストーンズ、ヤードバーズ、あるいはアニマルズといった少し先輩格のビート・バンドを意識しつつも、よりブラック・ミュージックに近い(ジョン・リー・フッカーあたりにも通じるものがある)エグ味とコクのあるサウンドを聴かせてくれるのだ。
この曲の録音当時、モリスンはまだ10代だったっていうのだから驚く。シブすぎるよ、ヴァンさん!(笑) 映画「コミットメンツ」のシンガー、デコもそうだったけど、アイルランドは、音楽的に早熟な人が多いのかね?
バックの演奏といい、歌といい、ご機嫌なことこのうえなし。個人的には、ちょっと単調な「Gloria」よりずっといいと思うのだよ。
見た目はジミだが、音はストーンズ以上にヒップだったゼム。その才能は本物だ。聴くべし。