2012年4月22日(日)
#213 ザ・ステイプル・シンガーズ「Solon Bushi(ソーラン・ロック)」(The Ultimate Staple Singers:A Family Afair/Kent/Ace)
#213 ザ・ステイプル・シンガーズ「Solon Bushi(ソーラン・ロック)」(The Ultimate Staple Singers:A Family Afair/Kent/Ace)
きょうは、珍盤中の珍盤を紹介しよう、黒人ソウル・グループ、ザ・ステイプル・シンガーズが歌い演奏した北海道民謡「ソーラン節」だ。70年録音。
ザ・ステイプル・シンガーズ(後にはザ・ステイプルズとも)は50年代より2000年まで活動していた、ジャクスンズ、アイズリー・ブラザーズなどと並ぶ、黒人ファミリー・グループの代表格。父親のローバック”ポップス”ステイプルズを中心に、彼の息子、娘たちが参加した4人編成だ。
この曲の録音当時のメンバーは、ポップス、息子のパーヴィス、娘のクレオサ、メイヴィス(現在もソロ・シンガーとして活躍中)の4人。男2女2の混声コーラスだった。
「Solon Bushi」は日本では、日本グラモフォンよりシングル「ソーラン・ロック」としてもリリースされている。この曲の録音にいたる当時の事情はよくわからないが、60~70年代には来日公演を行う海外アーティストが、日本の曲をカバーしたり(アダモなど)、自分のオリジナル曲を日本語の歌詞で歌う(シカゴ、クイーンなど)ような例がしばしば見られたので、このステイプルズの場合も、おそらくそういったプロモーションを兼ねておこなわれたのだろうね。
とまれ、聴いてみよう。なんとも見事なアレンジに仰天すること間違いなしだ。
いかにも日本的な「エンヤトット」リズムだった民謡が、軽快なR&Bに仕上がっているではないか。
原曲を譜面通りにやるとバックビートに乗らない部分はうまくフェイクして、原曲以上にスピード感とリズムを強調している。
日本民謡ではまず聴くことのない、華やかな混声コーラス・アレンジもまた新鮮だ。
あまたある日本の曲の中でなにゆえこの曲が選ばれたのか。それもまた想像してみるほかないが、やはりその陽気な旋律とノリ、ユーモラスな合いの手などが、彼ら好みのグルーヴをもっており、カバーへの意欲をかきたてるものがあったのだろう。日本の民謡(トラディショナル)もまた、アメリカのブルース同様、現在のポピュラーな音楽の源流だってことだ。
バッファロー・スプリングフィールドの「For What It's Worth」、ボブ・ディランの「A Hard Rain's A-Gonna Fall」、など、ステイプルズにはジャンルを問わない名カバー曲が多いが、この1分半ほどの小曲も、それに加えていいんじゃないかな。
親子ならではの一体感あふれるコーラスと、抜群のリズム・アレンジ。一流のミュージシャンは、素材を選ばずどんな曲でもパーフェクトに料理(カバー)してしまう。
国や人種を越えた世界共通のグルーヴを、そこに感じとってくれ。