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音曲日誌「一日一曲」#213 ザ・ステイプル・シンガーズ「Solon Bushi(ソーラン・ロック)」(The Ultimate Staple Singers/Kent/Ace)

2023-10-31 05:24:00 | Weblog
2012年4月22日(日)

#213 ザ・ステイプル・シンガーズ「Solon Bushi(ソーラン・ロック)」(The Ultimate Staple Singers:A Family Afair/Kent/Ace)





きょうは、珍盤中の珍盤を紹介しよう、黒人ソウル・グループ、ザ・ステイプル・シンガーズが歌い演奏した北海道民謡「ソーラン節」だ。70年録音。

ザ・ステイプル・シンガーズ(後にはザ・ステイプルズとも)は50年代より2000年まで活動していた、ジャクスンズ、アイズリー・ブラザーズなどと並ぶ、黒人ファミリー・グループの代表格。父親のローバック”ポップス”ステイプルズを中心に、彼の息子、娘たちが参加した4人編成だ。

この曲の録音当時のメンバーは、ポップス、息子のパーヴィス、娘のクレオサ、メイヴィス(現在もソロ・シンガーとして活躍中)の4人。男2女2の混声コーラスだった。

「Solon Bushi」は日本では、日本グラモフォンよりシングル「ソーラン・ロック」としてもリリースされている。この曲の録音にいたる当時の事情はよくわからないが、60~70年代には来日公演を行う海外アーティストが、日本の曲をカバーしたり(アダモなど)、自分のオリジナル曲を日本語の歌詞で歌う(シカゴ、クイーンなど)ような例がしばしば見られたので、このステイプルズの場合も、おそらくそういったプロモーションを兼ねておこなわれたのだろうね。

とまれ、聴いてみよう。なんとも見事なアレンジに仰天すること間違いなしだ。

いかにも日本的な「エンヤトット」リズムだった民謡が、軽快なR&Bに仕上がっているではないか。

原曲を譜面通りにやるとバックビートに乗らない部分はうまくフェイクして、原曲以上にスピード感とリズムを強調している。

日本民謡ではまず聴くことのない、華やかな混声コーラス・アレンジもまた新鮮だ。

あまたある日本の曲の中でなにゆえこの曲が選ばれたのか。それもまた想像してみるほかないが、やはりその陽気な旋律とノリ、ユーモラスな合いの手などが、彼ら好みのグルーヴをもっており、カバーへの意欲をかきたてるものがあったのだろう。日本の民謡(トラディショナル)もまた、アメリカのブルース同様、現在のポピュラーな音楽の源流だってことだ。

バッファロー・スプリングフィールドの「For What It's Worth」、ボブ・ディランの「A Hard Rain's A-Gonna Fall」、など、ステイプルズにはジャンルを問わない名カバー曲が多いが、この1分半ほどの小曲も、それに加えていいんじゃないかな。

親子ならではの一体感あふれるコーラスと、抜群のリズム・アレンジ。一流のミュージシャンは、素材を選ばずどんな曲でもパーフェクトに料理(カバー)してしまう。

国や人種を越えた世界共通のグルーヴを、そこに感じとってくれ。
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