2010年10月30日(土)
#145 シャ・ナ・ナ「Blue Moon」(Grease Original Soundtrack/Polydor)
#145 シャ・ナ・ナ「Blue Moon」(Grease Original Soundtrack/Polydor)
サーバー移転前ラストの更新は、この一曲。コーラスグループ、シャ・ナ・ナによるスタンダードのカバー。ロジャーズ&ハートの作品。
不朽のスタンダードとして知られる「ブルー・ムーン」も実は人気曲となるまでには、いろいろといわく因縁があった。
もともとこの曲は、人気女優ジーン・ハーロウが主演する予定のMGM映画「Make Me A Star」の主題歌「The Prayer」として33年に書かれた。ところがハーロウはMGMともめて主役を降板、映画制作は頓挫してしまう。曲も当然、宙に浮いた状態となる。
翌年、この曲は別の映画「Manhattan Melodrama」(クラーク・ゲーブル、ウィリアム・パウエル主演)に使われることになる。最初は「It's Just A Kind Of Play」という題にして歌詞を書き直したものの、ボツ。再度「The Bad In Everyone」という題で書き直して、ようやく採用。しかし結局、映画中での扱いは、女優シャーリー・ロスがメロディをちょっと口ずさんでおしまい、というトホホな扱い。
しかし、捨てる神あれば拾う神あり。楽譜出版社を経営するジャック・ロビンスが「歌詞がよくないので、書き直してくれたら出版したい」と申し出て、曲は再度日の目を見ることになる。それがこの「Blue Moon」として知られる曲だった、というわけだ。
同年11月にグレン・グレイ楽団が演奏したバージョンが翌年大ヒット。以来、ベニー・グッドマンをはじめとする楽団や歌手が次々と競作して、数あるロジャーズ&ハート・ナンバーの中でも不動の人気を得るに至ったのである。
同じくスタンダード「Fly Me To The Moon」にも似たようなエピソードがあったと思うが、いろいろとタイトルや歌詞を変えて、ようやくひとつの完成形に至る、なんてことは結構あるものだね。
さて、この曲を70年代に活躍し、現在も活動を続けている大所帯グループ、シャ・ナ・ナがカバーしている。
懐かしの映画、ジョン・トラボルタ、オリビア・ニュートン・ジョン主演の「グリース」(1978)に彼らも出演、その歌声を聴かせるシーンがあるのだ。
この「ブルー・ムーン」、音だけ聴く限りでは、ひたすらロマンティック&ノスタルジックなサウンドなのだが、そこはやはりド派手なパフォーマンスをほこるシャ・ナ・ナだけあって、映画ではお笑い一歩手前(いや十分に踏み込んでいるか?)の演出を見せつけている。興味のあるかたは、ぜひ映画のほうもチェックされたし。
聴いてよし、観てさらにGOOD。いかにもアメリカ的なロックンロール・ショーを提供してくれるシャ・ナ・ナ。
お家芸のドゥ・ワップ、ロックンロールだけでなく、ありとあらゆるアメリカン・ミュージックを料理してリスナーを楽しませてくれるサービス精神。本場ものはやっぱり違いますな。
わが国のロックンローラー、キャロルやクールスも一目おいていたパフォーマンス、ぜひチェックしてみてくれ。
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