2010年10月22日(土)
#144 シーファス&ウィギンズ「Trouble In Mind」(Homemade/Alligator Records)
#144 シーファス&ウィギンズ「Trouble In Mind」(Homemade/Alligator Records)
アコースティック・デュオ、シーファス&ウィギンズによる、カントリー・ブルース・スタンダードのカバー。リチャード・M・ジョーンズの作品。
シーファス&ウィギンズはギター、ボーカルのジョン・シーファス、ハープ、ボーカルのフィル・ウィギンズのコンビ。ともにワシントンDCの出身だが、シーファスが30年生まれ、ウィギンズが54年生まれと、親子ほど年が離れているのが、ちょっと珍しい。1970年代の後半に知り合い、ともにウィルバート・エリスのバンドに参加したこともあって、コンビを組むようになる。
都市部の出身ではあったが、バージニアや南北カロライナのミュージシャン、ブラインド・ボーイ・フラー、ゲイリー・デイヴィス師、サニー・テリーといった人たちから強い影響を受け、テリー&マギーをお手本にしたデュオ編成で、アコースティック楽器のみの素朴な音楽を追究するようになる。
デビューは84年、エビデンス・レーベルからの「Sweet Bitter Blues」。以来、精力的に活動を続けてきたが、惜しくも昨年シーファスが78才で亡くなり、デュオは終焉を迎えている。
きょうの一曲は、ビッグ・ビル・ブルーンジー、ライトニン・ホプキンス、テリー&マギーなど、カントリー・ブルース系のシンガーなら必ず一度は取り上げた名曲。ブルーンジーの「Key To The Highway」にも共通した曲想をもつ、8小節ブルースのスタンダードだ。
日本でも、憂歌団がこの曲に想を得て「嫌んなった」を作っているなど、その人気はひじょうに高い。
シーファス&ウィギンズ版では、シーファスがギターを弾きつつリード・ボーカルを取り、それにウィギンズがハープで合いの手を入れている。
ふたりのよどみなく端正な演奏、そして優しく味わいの深いシーファスの歌声。
音的にはごくごく正統派、でも都会に生まれながら、田舎を強く指向するシーファス&ウィギンズは、やはり新世代のブルース・デュオといえるだろう。
だいぶん前(2001年12月)、彼らがパークタワー・ブルース・フェスティバルに出演したとき、そのライブに触れることがあったが、そのなんの衒いもハッタリもないステージングに、いかにも音楽一筋に生きている、ジェントルでピュアなひとたちなんだなと感じた。
心の悩みをせつせつと歌うこのブルースに、聴くものはみな共感をもつのではないかな。必聴です。