NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#432 JACKIE McLEAN「4, 5 AND 6」(ビクター音楽産業/Prestige VICJ-23514)

2023-01-23 05:00:00 | Weblog
2023年1月23日(月)



#432 JACKIE McLEAN「4, 5 AND 6」(ビクター音楽産業/Prestige VICJ-23514)

ジャズ・サックス奏者ジャッキー・マクリーンのスタジオ・アルバム。56年リリース。ボブ・ワインストックによるプロデュース。

マクリーンは55年、初リーダー・アルバムをアドリブ・レーベルより出し、翌年プレステージに移って67年までに9枚ものアルバムをリリースしている。本盤はその2枚目にあたる。

アルバム・タイトルはいうまでもなく、カルテット、クインテット、セクステット編成による演奏が収められているところから来ている。

オープニングの「センチメンタル・ジャーニー」はカルテットでの演奏。ベン・ホーマー、バド・グリーン、レス・ブラウンによる44年の作品。このスタンダード中のスタンダード・ナンバーを、10分という長尺でプレイしている。

バックはピアノがマル・ウォルドロン、ベースがダグ・ワトキンス、ドラムスがアート・テイラー。前2者はデビュー・アルバムでも共演している、馴染みのメンバーだ。

ウォルドロンといえば、彼がビリー・ホリデイのために書いた曲「レフト・アローン」であまりにも有名だが、60年にマクリーンを従えたリーダー・アルバム「レフト・アローン」をベツレヘム・レーベルにてレコーディングしており、以降、この曲はマクリーンにとっても代表曲になっている。

閑話休題、「センチメンタル・ジャーニー」の話に戻ろう。テーマ演奏の後はマクリーンの長いソロが続く。メロディアスながらブルースを感じさせるアドリブ・ソロは、ワトキンスに引き継がれる。そしてウォルドロンの短かめのソロから、マクリーンに戻って、テーマ演奏で締め。

あくまでもマクリーンの演奏が主体だが、他のメンバーもソロでそれぞれの持ち味をフルに発揮しているので、聴きごたえは十分だ。

「ホワイ・ワズ・アイ・ボーン?」はカーン=ハマースタインのコンビによるミュージカル・ナンバー。

30年にヘレン・モーガンの歌でヒット。ビリー・ホリデイやフランク・シナトラらもカバーしている著名曲だ。タイトルは知らなくても、メロディを聴けば、絶対既聴感はあるはずだ。

明るくテンポの速いこの曲は、テーマ演奏に続いてマクリーンのソロ、そしてウォルドロン、再びマクリーンのソロ、テーマという構成。マクリーンの紡ぎ出す豊かなフレーズが、ひたすら堪能出来る。

心が湧き立つような、ハッピーな一曲だ。

「コントゥアー」は、同時代のピアニスト、ケニー・ドリューの作品。トランペットのドナルド・バードも加えたクインテットによる演奏だ。

懐かしのスタンダードが2曲続いたので、テクニカルなフレージングに満ちた曲で、口直しといったところか。

テーマからのマクリーンのソロ、続いてバードのソロ、そしてウォルドロンの短いソロを経て再度テーマで締め。

「コンファメーション」はチャーリー・パーカーの作品。モダンアルト奏者なら一度は吹いてみたであろう、お手本的なナンバー。テナーサックスのハンク・モブレーも加わった、セクステットよる演奏だ。

テーマの後はマクリーン、続いてバード、モブレー、ウォルドロンの順にソロが続いた後、ホーンの3人で掛け合いへ。これが見事にキマっていて、カツコいい。11分以上におよぶ熱演だ。

「ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ」はエドワード・ヘイマン、ヴィクター・ヤングによる作品。52年の映画「One Minute To Zero」の主題歌である。ドリス・デイの歌でヒットしている。

マクリーンは、スタンダードというよりは比較的最近のヒット曲として取り上げたのだろうが、この曲もその後ナット・キング・コール、ジョニー・マティス、レターメン、ナタリー・コールらにより歌われてスタンダード化している、美しいバラードだ。

個人的には、バディ・グレコ版が一番のオキニかな。

この曲はカルテット編成でレコーディング。アップテンポでのテーマからのマクリーン、ウォルドロンのソロ、そしてマクリーンに戻ってテーマという構成。

最後にスローにテンポダウンして、スウィートな雰囲気で締め括っている。

この曲の優れたポイントを、きちんと分かっているね。さすがだ。

ラストは「アブストラクション」。ウォルドロンの作品である。クインテットでの録音。

内省的で静かなムードのスロー・バラード。終幕にいかにもふさわしい。

自然な流れでアドリブ・ソロに入るマクリーン。そのフレージングは「レフト・アローン」での名演に勝るとも劣らぬ美しさだ。

ソロを引き継いだバードも、ミュートを使った抑えめの表現が、本当に曲にマッチしている。

そして作曲者自身のピアノ演奏が、彼らの名演をしっかりと引き立てている。

この一曲だけのために、アルバムを買うというのも惜しくはないだろう。

以上、マクリーンの類いまれなる器楽の才能、そしてウォルドロンらのベストなバッキングによって生まれた佳作。

歴史的名盤とはいえないだろうが、忘れることなく、時々は晩酌のBGMとして聴いてあげたい一枚である。

<独断評価>★★★★

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