2010年12月26日(日)
#153 ジョニー・ラング「Good Morning Little School Girl」(Lie To Me/A&M)
#153 ジョニー・ラング「Good Morning Little School Girl」(Lie To Me/A&M)
今年最後の更新であります。若手白人ブルースマン、ジョニー・ラングのメジャー・デビュー・アルバムより。サニーボーイ・ウィリアムスン一世の作品。
ジョニー・ラングは、81年ノースダコタ州ファーゴ生まれの、29才。
幼い頃からギターを始め、十代でいっぱしのセミプロとなり、15才の若さでA&Mよりメジャーデビュー。これまでにインディーズ盤、ライブ盤を含め、6枚のアルバムを出している。
デビュー当時はロン毛でなよっと中性的な感じだったが、セカンドアルバムの頃からツンツン・ショートに変え、男っぽくなってきた。
最近の白人ブルース界は、男性にせよ女性にせよ、とにかく若いうちにデビューさせる傾向が強く、彼ラングもその例外ではないのだが、筆者としては「ポップアイドルじゃないんだから、そーゆー青田買いって意味ないんじゃないかなあ」と思ってしまう。だって「人生」を歌う音楽、ブルースなんだぜ。右も左もわからない青臭いガキに歌わせてどうするよ、って感じだ。
とはいえ、才能があるヤツは、早く世に出てしまうのも、いたしかたないかな。
歌はともかくギターの腕前は、高校に入りたてとは思えないほど達者なのだ。メジャーレーベルが買いに走るわけだ。
さて、この「Good Morning Little School Girl」はサニーボーイ一世がオリジナル。サニーボーイといえば、二世のライス・ミラーのほうを指すことが一般的なようだが、一世も「Sugar Mama Blues」「Early In The Morning」など後世に歌い継がれる曲を数多く残していて、この曲はその際たるものだろう。
おもなカバー・ミュージシャンを上げてみると、そのスゴさがよくわかる。マディ・ウォーターズを筆頭に黒人ではライトニン・ホプキンス、ミシシッピ・フレッド・マクダウェル、ビッグ・ジョー・ウィリアムズ、ジュニア・ウェルズ、ビリー・ボーイ・アーノルド、リトル・リチャード、タジ・マハールなど。白人が意外と多く、ヤードバーズを皮切りに、テン・イヤーズ・アフター、オールマンズ、グレイトフル・デッド、バターフィールド・ブルースバンド、ジョニー・ウィンター、ロッド・スチュアート、ステッペンウルフ、ロベン・フォード、デレク・トラックスなどなど。まことにキリがない。
とにかく、これだけ多くのミュージシャンを引きつけた理由としては、やはり歌詞の魅力が大きいんじゃないか、そう思う。
BBの「Sweet Little Sixteen」じゃあないが、ティーンの女のコに臆面もなく求愛をする、このストレートというか捻りのない歌詞、これがポイントだろう。
若い男だろうが、オッサンだろうが、ジョシコーコーセイは、男の永遠の憧れなんである。
ブルースを分別くさいジジイのものと思っている人も多かろうが、基本的には人間臭~い、ボンノーのかたまりのような歌詞が意外と多かったりする。
ティーンネージャーにもストレートにアピールするブルースを作り出したジョン・リー・ウィリアムスンは、見事なセンスの持ち主だと思うのであります。
彼は吃音、つまりどもり気味のようだったのだが、それを生かした歌いかたで個性をアピールしたんだから、なかなかの策手だったのかも。
ところで本曲のカバー版は、アレンジにいくつか系統があるといえるが、ラング版はジュニア・ウェルズのバージョンをほぼ踏襲していて、落ち着いたミディアムテンポのビートにのせて、シャウトしまくってる。
若干青さはあるものの、高校生にしちゃなかなかシブい歌声。売り物はギターの腕前だけじゃないことをアピっていて、たのもしい限りだ。
まあ、まだ三十手前の若さ。ブルースマンとしての精進はこれから、といったところだが、十代なかばにしてこれだけの表現力があるのだから、前途は洋々。今後の活躍を見守っていきたい。日和ってポップな方向に寝返らないことをくれぐれも祈ってます(笑)。