2011年1月2日(日)
#154 ヘンリー・トーマス「Bull Doze Blues」(Ragtime Texas. 1927-1929/Document)
#154 ヘンリー・トーマス「Bull Doze Blues」(Ragtime Texas. 1927-1929/Document)
テキサスで活躍していた黒人ソングスター、ヘンリー・トーマスの代表曲。彼自身のオリジナル。
トーマスは1874年、テキサス州ビッグ・サンディの生まれ。ブルース、フォーク、バラッド、ミンストレル・ナンバーなどさまざまなジャンルの歌をレパートリーとする、生きたジュークボックス=ソングスターとして活動していたが、レコーディングをしたのは実に50才を過ぎてからだった。27年から29年の間に、ヴォキャリオン(後にあのロバート・ジョンスンもそこでレコーディングしたというレーベルだ)にて23曲を録音。30年には亡くなっている。
ヘンリー・トーマス?誰それ?というヒトが多いだろうが、きょうのこの曲を聴いて、ピンと来た人が結構いるのではないかな。そう、白人ブルースロック・バンドのキャンド・ヒートが「Goin' Up The Country」というタイトルでカバーしているのである。記録映画「ウッドストック」でも聴かれた、あのフォーキーな曲だ。
トーマスは歌、ギターのほかにパン・パイプ(パン・フルートともいう)も吹いており、それがこの曲でも聴くことが出来る。
フォルクローレなどでも使われることの多い、葦の笛の素朴な音(ね)が、この曲の見事なアクセントとなっている。
どこか遠くの草原から流れて来るような、実にのどかな調べだ。
形式的には12小節のブルースであるのだが、陰鬱さをみじんも感じさせない陽性の、そして力強い歌声。フィールド・ハラーをどこか想起させる。
ブルースにもいろいろあるが、これこそもっとも原初的なスタイルであるといっていいんじゃないかな。この後、さまざまなフォーク・ブルース、カントリー・ブルースのミュージシャンがレコーディングを行うようになるが、74年生まれのトーマスはそれらの最年長格のひとりといえる。
カントリー・ブルースの源流、ヘンリー・トーマスの歌を、ブルースファンならば一度は味わってみてほしい。一服の清涼剤、という感じです。