2012年2月26日(日)
#205 ジョニー・テイラー「Something Is Going Wrong」(Lover Boy/Malaco)
#205 ジョニー・テイラー「Something Is Going Wrong」(Lover Boy/Malaco)
ジョニー・テイラー、86年のアルバムより。ロバート・A・ジョンスン、サム・モズレーの作品。
ジョニー・テイラーは2000年に62才で亡くなっているが、彼のシンガーとしてのキャリアの後半は、マラコ・レーベルとともにあった。この「Lover Boy」は同レーベルにての2枚目にあたる。
説明するよりとにかく、まずは曲を聴いてほしい。この歌の、圧倒的なパワーは、筆舌に尽くし難いというしかない。
ジョニー・テイラーというひとは、サム・クックに多大な影響を受けたソウル・シンガーであると同時に、ブルース・シンガーとしても見事な業績を残している。ただ、日本ではかなり過小評価されていて、めったに話題にも上らない。
それもこれも、わが国では、ギターなどの楽器をもたないスタンダップ系ブルース・シンガーを、軽視する傾向が強いからだ。まことに嘆かわしいのう。
たとえばこの「Something Is Going Wrong」にしてみたところで、ブルース・ファンはバックでギターソロを弾いているのは誰?みたいなことにばかり興味が向いていたりする。そんなの誰だってええやん!と思うんだがねえ。
たしかに、このギタリストはなかなかいいソロを弾いているのだが、あくまでも主役はジョニー・テイラー。彼自身が弾いているのではない以上、ギタリストはあくまでもワキ役だ。
いやいや、さらに言ってしまえば、シンガー兼ギタリストであったとしても、ブルースが「歌もの」の音楽である以上、いかにギターが上手くても歌自体がよくなきゃ、全然アウトなのだ。
そのへん、わかっていない日本人が多過ぎるのだ、プンプン。
ギターは激ウマ、でも歌はアマチュア・レベル、みたいなブルースマンをファンが容認している限り、ブルースはしょせんアマチュア音楽だね、とナメられてしまうのだよ。
さて、ボヤキはこのへんにして、この曲についてもうちょっと語らせていただこう。
歌詞、節回し、歌い口、そしてバックのサウンドに至るまで、ここまで「どブルース」な曲は、なかなかおめにかかれるものではない。
もう150キロ超のど直球!みたいな、あきれるほどのピュア・ブルース。
ジョニー・テイラーはとても器用なシンガーで、コンテンポラリーなR&B/ソウルも難なく歌いこなしており、マラコ時代にもその手の「Good Love」という大ヒットを出しているが、その一方で、何のてらいもなくこういう曲を熱唱するひとでもあった。
その歌のスケールの大きさにおいて、彼をしのぐブルース・シンガーはいまだに出てきていないような気がする。この一曲を聴いただけでも、それは明白なんじゃないかな。ブルース・ファンなら、必聴でっせ。