NEST OF BLUESMANIA

ミュージシャンMACが書く音楽ブログ「NEST OF BLUESMANIA」です。

音曲日誌「一日一曲」#399 アルバート・リー「Country Boy」(A&M)

2024-05-09 13:45:00 | Weblog
2024年5月9日(木)

#399 アルバート・リー「Country Boy」(A&M)







アルバート・リー、1979年リリースのファースト・ソロ・アルバムからの一曲。リー自身の作品。ブライアン・エイヘムによるプロデュース。

英国のギタリスト/シンガー、アルバート・リーは1943年ヘレフォードシャー州リンゲンの生まれ。音楽家の父のもと幼少期よりピアノを学ぶ。バディ・ホリー、ジェリー・リー・ルイスらの米国のロックンロールに熱中し、10代半ばよりギターを弾き始める。

高校を中退してプロを目指すようになったリーは、R&B、カントリー、ロックンロールなど、数多くのバンドに参加する。最初の商業的な成功は、66年に結成されたクリス・ファーロー&サンダーバーズにおいてであった。

そのバンドでR&Bを主に弾いていたリーは、カントリーを弾きたい気持ちが高まって69年に脱退、同年ボーカルのトニー・コルトンと共にカントリー・ロックのバンド、ヘッド・ハンズ・アンド・フィート(HH&F)を結成する。ここで、リーは速弾きの名手としての高評価を得ることになる。

とはいえ、筆者的にはこのバンド、FMから時折り流れてくるのを聴いていたものの、右耳から左耳へとつつ抜けの状態で、まるで記憶に残らなかった。70年代初頭の当時、筆者はハード・ロックばかり聴いていて、カントリー・ロックにはほとんど興味がなかったためである。

HH&Fがバンド内の不仲により72年末に解散したのち、リーはセッション・ミュージシャンとしての活動が中心となり、米国のカントリー系シンガー、エミルー・ハリスのバックバンドでも活躍した。

筆者が初めてリーの名前と容姿を認識したのはその頃で、73年にジェリー・リー・ルイスが渡英して英国の若手ミュージシャンたちと共演したアルバム「The Session…Recorded in London with Great Artists」をリリースした時である。

セッション風景の写真に、ピーター・フランプトン、ロリー・ギャラガーらと一緒に、愛器のテレキャスターを弾く小柄なリーの姿があった。しかし、その時も他の人気ミュージシャンたちの陰に隠れてしまい、リーのプレイもさほどに印象に残らなかった。

そこから約7年後。筆者はついにアルバート・リーというギタリストの凄さを思い知ることになる。そう、エリック・クラプトンと共演した80年リリースのライブ・アルバム「Just One Night」においてである。

ここでのリーのプレイは見事のひとことであった。クラプトンとはまったく異なるスタイルを持ち、かつクラプトンを上回るスピーディなギター・プレイには、正直度肝を抜かれたリスナーも多かったはず。

「こいつ、もしかしてECを超える才能じゃね?」「世の中、上には上がいるものだな」と内心思わずにはいられないリーのプレイだった。

一例を挙げると「Further On Up The Road」後半での、クラプトンを完全に食ったソロ。これはホンマにスゴい。

リーは78年以降、83年までクラプトンのバンドに加わっており、「Just One Night」のほか、「Another Ticket」「Money and Cigarettes」のレコーディングにも参加した。

その一方で、リーは79年、ついに最初のソロ・アルバムをA&Mレーベルからリリースする。本日取り上げた一曲「Country Boy」の収められた「Hiding」である。

当アルバムは、長年のセッション・ワークやECのバンドでのプレイを認められた彼が、周囲の期待に応え、満を持して発表した一作と言えるだろう。本来、彼自身が最もやりたかったサウンドが、そこに満ち満ちている。

「Country Boy」はその中でも、一番彼らしいカントリー・ミュージック一色の、アップテンポのナンバー。フィドルも加わって、陽気で賑やかな音作り。ボーカルも彼自身がとっており、いなたいムードが漂っていてグッド。

そして何より、リーのスピーディでパーフェクトなギター・プレイが、聴くもの全員をノックアウトする。

アルバム音源だけでは物足りない向きのために、ライブ映像も合わせて聴いていただこう。オリジナルから30年以上が経った、2010年のBBCライブである。

もともと高かったギター・テクニックも、さらに磨きがかかり、神がかってさえいる。

このくらい物スゴい演奏を聴いてしまうと、ただただ驚嘆し、賛美するしかないよな。

「音楽の才能は90パーセント遺伝する」と言われているが、リーのパフォーマンスを目の当たりにすると、この言葉に完全に同意してしまう。

筆者を初めとして私たち凡才の大半には、到底辿り着けない高みに、リーは到達している。

でも、音楽を楽しむ姿勢においては、リーも我々も何も変わるところはないと思う。それぞれのレベルで音を奏でて、エンジョイすればいいのだ。

音楽は、彼のようなバーチュオーゾだろうが、素人や子供だろうが、世界中の人間に等しく与えられた果実。

皆で仲良くシェアしようではないか。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 音曲日誌「一日一曲」#398 藤... | トップ | 音曲日誌「一日一曲」#400 リ... »
最新の画像もっと見る