2007年9月2日(日)
#10 ロイ・ブキャナン「After Hours」(Second Album/Polydor)
#10 ロイ・ブキャナン「After Hours」(Second Album/Polydor)
ブルース・ファンなら一聴しておわかりだろうがこの曲、ブルース党には、もっぱらピー・ウィー・クレイトンの「Blues After Hours」というタイトルで親しまれている。
が、ピー・ウィーのオリジナルではなく、もともとはビッグバンド・ジャズのナンバー。
戦前から活躍している、アースキン・ホーキンス楽団のリーダー、ホーキンスが、ピアニスト、エイヴリー・パリッシュとともに書いたブルースなのである。
タイトル通り、アフター・アワーズ・セッションのリラックスしたムードをぷんぷんと匂わせる曲調が、ジャズ界のみならず、さまざまなジャンルのミュージシャンに支持される。
おもだったところを上げるだけでも、ローリー・ベル、レイ・ブライアント、バック・クレイトン、ランディ・ブルックス、オスカー・ピータースン、ハンク・クロフォード、ディズィ・ガレスピー、ロイド・グレン、ベニー・グッドマン、ロイ・ヘインズ、ウディ・ハーマン、ジュールス・ホランド、アール・フッカー、ユタ・ヒップ、イリノイ・ジャケー、クインシー・ジョーンズ、ロニー・ジョーダン、ロバート・ロックウッドJr、ジミー・スミス、パイントップ・パーキンス、エディ・テイラー、ピー・ウィー・クレイトン、そしてこのロイ・ブキャナンと、錚々たる顔ぶれにカバーされている。
まさに、隠れたブルース・スタンダード。
そんな中でも、このブキャナンの演奏は白眉で、とにかくテレキャスターの音色が抜群にいい。
ほんと、出だしのワン・フレーズから、グイッと引きずり込まれてしまうような、妙なる音なんである。
これを聴くと、ホントにテリーが無性に欲しくなってしまう。危ない危ない(笑)。
先達ピー・ウィーの演奏が「クール」の極致なら、ブキャナンのそれは、まさに「ホット」そのもの。
おなじみのトリッキーなスクラッチ・プレイやらボリューム奏法を交えつつ、最後までグイグイと聴き手を引っ張っていく腕前、まさに名人技であります。
曲の素晴らしさ、そして弾き手の腕が、完璧なコンビネーションを生んだ、見事な例であります。