2004年8月5日(木)
#229 COMPLEX「BE MY BABY」(東芝EMI RTOZ-2324)
吉川晃司、布袋寅泰によるスーパーユニット、コンプレックスのデビュー曲。89年4月リリース。
88年、ボウイを解散した布袋は、ソロアルバム「GUITARHYTHM」を発表後、ソロ・シンガー吉川と新グループを結成することを発表。それがこのコンプレックスだ。
グループ名の由来は普通に考えれば、個性的なふたりの「複合」って意味だろうが、吉川のコメントによれば、異常なまでに高いふたりの身長、それを「コンプレックス」という一語で表現してみた、というのもあるそうな。
たしかに、このふたりが並んで立った姿、それだけで十分壮観だな。
コンプレックスが登場するまで、日本のロック界で一番イカしたヴォーカル&ギターのコンビといえば、キヨシローとチャボだったろうが、それをこのふたりは、あっさりと超えたといってよい。
なんのかんのいっても、ロックもまごうかたなきショービジネス。見映えのよくないヤツが演ってるよりか、カッコいいヤツが演ってるほうがいいに決まっている。
ということで、上背も肩幅もあり、立ち姿がさまになるふたりは、それだけでスターの貫禄十分。
もちろん、音楽的にもハンパじゃない。吉川の切れ味のいい日本人離れしたヴォーカル、布袋のパワフルで、スケールの大きいギターワーク、そしてコーラス。このふたつが合体すれば、最強ってもんだ。
この「BE MY BABY」、作詞は吉川、作曲とアレンジは布袋が担当。
タイトルからはフィル・スペクターみたいなモッタリとした、甘いポップスを想像しちまうが、もっとタイトで、ハードで、ガッツあふれるサウンド、そう、ロックそのものだ。
でも、どこかポップでスウィートな響きも感じる。日本のロックの多くにありがちなネガティヴさ、負け犬志向みたいなものがみじんもない。
筆者にいわせると、コンプレックスこそまさに、日本のポップスとロック、このふたつの相容れない潮流の、完璧な止揚(アウフヘーベン)なんじゃないかと思う。
限りなくロックでありながら、ムリなくポップをも体現しているユニット、それがコンプレックス。
これはやはり、天性のロックセンスを兼ね備えたポップシンガーの吉川、インディーズを振り出しに、ついに日本の音楽界の頂点まで極めたスーパー・バンド、ボウイの仕掛人布袋というふたりにして、初めて実現出来たことといえよう。
このグループ、実際には2年ほどしか活動せず、アルバムとしては2枚のスタジオ盤、1枚のライヴ盤を出しただけで解散し、その後はおのおの、ソロの道を進んでいる。
もともと、「思いつき的期間限定ユニット」という裏事情があったのかも知れないが、なんとももったいない話である。
彼らのような、文字通りの「大物」ならば、本場英米に乗り込んでいったって、見劣りのしないパフォーマンスを見せてくれるはず。
筆者的には、ときどき再燃するボウイ再結成説よりは、よっぽどコンプレックスの再結成のほうがありがたい。
もちろん、それぞれのソロ・ワークを主軸にした上で、ライヴを中心に活動するというのでいい。
1プラス1が3にも4にもなるスーパーユニットのパフォーマンス、「思いつきの再結成」でもいいから、ぜひまた観てみたいものだ。
<独断評価>★★★☆