NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#228 古内東子「サヨナラアイシテタヒト」(ポニーキャニオン PCCA-80022)

2022-06-30 05:17:00 | Weblog

2004年8月4日(水)



#228 古内東子「サヨナラアイシテタヒト」(ポニーキャニオン PCCA-80022)

身も心も疲れ果てて帰って来た夜に、ふと聴きたくなるシンガー。それが、古内東子だ。

シングル「はやくいそいで」でデビューしたのが93年だから、彼女、もうけっこうなベテラン。

恋に悩むOLたちの気持ちをみごとに捉えた歌詞で、「ラブソングの女王」の異名をとり、若い女性たちにとって恋愛の教祖的存在だった彼女も、はや十年選手。

昨年、新しいレーベルに移籍、11月にリリースしたのがこの「サヨナラアイシテタヒト」だ。

タイトルでわかるように、恋人との別れを歌ったナンバーだが、あいかわらず、歌詞が何ともいえず素晴らしい。

まずは「さよなら愛してた人、すべてを忘れない/いつか誰かに抱かれる夜も/あなたのこと考えてる悪い女になるでしょう」という冒頭のリフレインで、グッと来てしまう。

こんな台詞、現実の生活でいわれたことなどまずないけれど、もし別れのときに言われたら、その女性は一生忘れることの出来ない、特別な存在になるに違いない。

別れのときにこそ、その人の本質がはっきり出るというからね。究極のキメ台詞だよな。

「素顔の方が好きだと言われても/会える日はきれいでいたくて/自分に似合う口紅の色を/探して歩いた、週末の街で何度でも」このくだりもいいなあ。ここまで好きになってもらえたら、その彼、オトコ冥利に尽きるってもんだぜ。

別れるまでのふたりには、決してハッピーなことばかりじゃなかったろうに、最後はここまでふたりの思い出を美しいものにして、そしてあっさりと別れてゆく。いいよね。

恋する若い女性のみならず、男性のハートまで捉えて離さない歌詞だ。さすが「ラブソングの女王」。

歌詞ばかりではない。この切ない思いを歌う、古内の声がまたいい。透明感があって、実にみずみずしい。

10年以上の歳月を経てなお、変わることのない初々しさ。でも、その一方で、確実に大人の雰囲気も身につけている。

サウンドを担当するのは、新進気鋭のアレンジャー、春川仁志。彼の編曲も、ごくごくオーソドックスなAOR路線ながら、古内ワールドにぴったりとハマっている。

筆者的に特に気に入っているのは、べースラインかな。非常に気持ちよく、自然と体が動いてきてしまう。

古内東子はこの移籍第一弾の発表後、今年2月には「stay」もリリース。こちらも、同じく春川がアレンジをつとめる佳曲だ。

近年の彼女の作品としては、いつになく充実した出来ばえとの評判が高い。

さらには、アルバム「フツウのこと」も3月に発表。サウンドは春川、そして一昨日も注目した河野伸が担当。これはもう、期待するなという方が間違っている。

文句のつけようのないクォリティの高さで、完全復活した古内東子。

オトコもオンナも強く引きつけてやまない、彼女の歌声。ぜひもう一度、聴いてみてほしい。

<独断評価>★★★★


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