2011年12月4日(日)
#195 ジェイムズ・コットン「Buried Alive In The Blues」(GIANT/Alligator)
#195 ジェイムズ・コットン「Buried Alive In The Blues」(GIANT/Alligator)
ジェイムズ・コットン、2010年のアルバムより。ニック・グレイヴナイツの作品。
コットンは1935年生まれの76才。説明するまでもなかろうが、50年代後半、マディ・ウォーターズのバックで名を上げ、60年代後半からは自らのバンドを率いて活躍してきたブルースハープの大御所。シンガーを兼ねていたが、喉頭がんをわずらったためかすれ声となり歌うことが出来なくなって久しい。が、ハープのプレイのほうは健在、現在もレコーディングにライブにと、精力的な活動を続けている。バリバリの現役なのだ。
さて、現時点での最新アルバムは、彼自身のバンド「ジェイムズ・コットン・ブルース・バンド」の演奏によるもの。
きょう聴いていただく曲は、ジャニス・ジョプリンの遺作「パール」に収められていたナンバー。レコーディング中に彼女が亡くなってしまったため、歌抜きのインストゥルメンタルとして収録せざるをえなかったという、いわくつきの曲なのである。タイトルの特殊性とあいまって、まさに彼女の「葬送曲」として作られた曲のような印象を与えてしまったわけだが、もちろん、そういう意図で作曲されたわけではない。
エレクトリック・フラッグのボーカリストとしても活動していたニック・グレイヴナイツのペンによるこの曲は、もともとアップテンポで威勢のいい曲調。けっして、しんねりとした雰囲気のナンバーではない。
筆者が考えるに、白人女性ながらブルースという「生き方」を決然として選んだジャニス・ジョプリンのマニフェストを、代弁するかたちでグレイヴナイツが作った歌なのだと思っている。
だから、このうえなくアグレッシブで力強いのだ。
ジェイムズ・コットン版「生きながらブルースに葬られ」はコットンのかわりにバンドのギタリスト。スラム・アレンが歌っている。ちょっと軽快明朗にすぎるかなという感じはあるが、非常に勢いのある歌いぶりだ。ノエル・ニール、ケニー・ニール・ジュニア(名前からわかるように、ルイジアナのブルースマン、ケニー・ニールの兄弟と息子だ)のリズム・セクションも、ごきげんなシャッフル・ビートを聴かせてくれる。
そしてなにより、御大ジェイムズ・コットンのブロウが文句なしに素晴らしい。70代半ばとはとても思えない、もたつきのないパワフルなブロー。おなじみの速いパッセージを連発して、健在ぶりを見せつけてくれている。
「ジャイアント」というアルバム・タイトルは、そのままブルースの巨人、ジェイムズ・コットンのことを意味しているのだろう。老いや病などものともせず、ブルース道をひた進む綿爺、ハンパなくカッコええ!