2000年11月某日
#368 CREAM「FRESH CREAM」(ATCO SD 33-206)
クリームは66年から68年にかけて活躍したグループだから、もうオールディーズみたいなものだが、そのサウンドは依然として新鮮さを失っていない。まさにこのアルバム・タイトルのように。
クリームの凄いところは上げていったらキリがないが、ブルースを型にはめず、さまざまなアレンジを加えて、革新的なポップ・ミュージックに仕上げていったところが意外に言及されていないように思う。
その到達点がアルバム「クリームの素晴らしき世界(Wheels Of Fire)」であろうが、その萌芽はすでにデビュー・アルバムである本作に見ることができる。全11曲中、5曲がスタンダード・ブルースというコテコテ状態なのだが、聴いてみるとさほどでもない。ライブとは違った、ヴァラエティ豊かな編曲の賜物であろう。
クリームの代表曲といえば、なんといっても「スプーンフル」である。ライブでも名演を残しているが、コンパクトなスタジオ録音版でも、ジャック・ブルースの熱唱とクラプトンの粘っこいソロが聴ける。
「猫とリス」は、知る人ぞ知るマルチ・ミュージシャン、ドクター・ロスのカバー。ブルースは得意のハープをご披露。
「フォー・アンティル・レイト」はかのロバート・ジョンスンの作品。シビアな歌詞の割りに妙に陽気なカントリー調の曲。あまりにも有名な「クリームの素晴らしき世界」収録の「クロスロード」とはガラッと趣きを異にして、リラックスした感じの演奏である。
「ローリン・アンド・タンブリン」はマディ・ウォーターズの代表曲。ベースレスでブルースがハープを吹きまくる、きわめつけの熱演。「ライブ・クリーム」にも収録されている。
「アイム・ソー・グラッド」はスキップ・ジェイムズの作品。ジンジャー・ベイカーを加えた三声コーラスが聴ける、珍しい曲。デビュー・シングル「包装紙」もそうだが、クリームは米国市場を相当意識しているようで、コーラスやピアノの使い方に英国のグループらしからぬアメリカンっぽさがぷんぷんと漂っている。
この66年発表の1枚が、ブルース・ブームの後押しにきわめて大きな役割を果たしたのはいうまでもない。
<独断評価>★★★★☆