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音盤日誌「一日一枚」#340 クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル「PENDULUM」(FANTASY FCD-4517-2)

2022-10-20 05:00:00 | Weblog

2006年12月17日(日)



#340 クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル「PENDULUM」(FANTASY FCD-4517-2)

クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル、6枚目のアルバム。70年リリース。ジョン・フォガティによるプロデュース。

本欄では、CCRは4年4か月ぶりに取り上げるが、筆者的には五本の指に入るくらい、フェイバリットなバンドではあるのだ、実は。

なんたって、自分の小遣いでアルバムを買った最初のアーティストであるし、ギターを弾き始めた当初はジョンのプレイが一番のお手本だったぐらいで。

そのくらい、思い入れのあるバンドだが、本盤については、正直評価は微妙だった。

前作「コスモズ・ファクトリー」が、あまりに完璧な出来で、しかもヒット曲てんこもりだったので、どうしてもそのカゲに隠れてしまうというきらいがあった。

でも、ひさしぶりにCDで買い直して聴いてみると、当時の印象とはまた違ったものを感じる。

皆さんご存じの大ヒット(日本ではたぶん最大のヒットだったような)、大江戸ジャムセッションでも定番レパートリーの「雨を見たかい」とそのC/W曲「ヘイ・トゥナイト」を中心にした10曲。全曲、ジョンのオリジナルだ。

カバー曲ゼロ。これは、かつてのCCRのアルバムと比較すると、ものすごい変化である。

これまでのアルバムの、シングル・ヒット集的な作りから脱して、ある意味コンセプト・アルバムを目指しているように思われるね。

前作の「ランブル・タンブル」の流れを汲むような、パワフルな前奏曲「ペイガン・ベイビー」でスタート。

続くは「水兵の嘆き」。サックス、オルガンを加え、まったりとしたR&Bを聴かせる。このへんは、わりと従来のCCR路線かな。

ホーンをフィーチャー、オーティス・レディングばりにソウルしまくるのは「カメレオン」。ギターがほとんど聴かれないあたり、従来のジャンプ・ナンバーとの微妙な差を感じる。

4曲目が「雨を見たかい」。雨をナパーム弾の暗喩として使い、反戦のメッセージをこめたナンバー。アメリカ本国では、放送禁止にもなっている。日本ではそういった歌詞の問題など起こるわけもなく、ふつうのフォーク・バラードのように解釈され、ヒットしてますが。

A面ラストの「ハイダウェイ」は、もちろんフレディ・キングのあの曲ではなく、オリジナルのバラード。オルガンのイントロから始まるあたりからして、従来のCCRらしからぬ雰囲気がプンプン。ボーカルが違うから区別はつくものの、なんかトラフィックとかプロコル・ハルムを想い起してしまう。

B面トップの「ボーン・トゥ・ムーヴ」でも、ソロはギターでなくオルガンをフィーチャー。これには驚き。従来、バックには加わっていても、キーボードがソロで前面に出てくることは稀だったからね。

「トラベリン・バンド」「アップ・アラウンド・ザ・ベンド」に連なる。これまでのCCRらしさを最も感じさせる「ヘイ・トゥナイト」の後は、再びオルガンをフィーチャー、ゴスペルを隠し味にもつナンバー「イッツ・ジャスト・ア・ソート」へ。ジョンは過去にもたまにピアノなどを弾いていたものの、「ギター・バンド」のイメージが圧倒的に強かったCCRなだけに、その変貌ぶりはかなり衝撃的。スティーヴ・ウィンウッドばりのオルガン・プレイ、まことにカッコいい。

もちろん、ライブ・ステージではこの手の曲はほとんど演奏しなかっただろうし、一種の実験的試みなのだろうけど。

ジョンのテナ-・サックス、コーラスをフィーチャーした、すごく懐かしいR&B調ナンバーは「モリーナ」。こういうのが入っていると、ホッとしますな。

ラストは「手荒い覚醒」。これがなんとも形容しがたい、変わったナンバー。絶対ライブではやりようのない、アバンギャルドな楽曲。スタジオにあるすべての楽器を使って遊んでみました、みたいな構成。テープ逆回しも使ってる。いってみれば、チャンス・ミュージックの一種か。一部、ピンク・フロイドみたいな雰囲気もある。

果たしてこれを「曲」として捉えていいものか、という疑問はあるが、「懐かし系の曲ばっかりやってる古臭いバンド」というパブリック・イメージ、過去のカラを打ち破ろうという、ジョンの試みなのではないか。

CCR「らしい」曲、「らしからぬ」曲が混在した異色作。でも「らしい」なんてのは、聴き手の側の勝手な決めつけという気もする。

あのビートルズだって、初期と終期ではまったく違うサウンドになっている。すぐれたバンドほど、過去のものにこだわらず、変貌をとげていくものだ。

CCRの場合は、必ずしもカメレオンの如き変身が成功したとはいえないのだが、過去の固定した「田舎くさい、古臭いサウンド」のイメージ、「ギター・バンド」のイメージを塗り替え、「また違ったことをやってくれそうだ」という期待をリスナーに抱かせるような、意欲作には仕上がっている。

「アメリカのトップ・バンド」という、ハンパなくきついプレッシャーをものともせず、新しい世界を切り開いていくジョンの才能、やっぱホンモノです。脱帽。

<独断評価>★★★★


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