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音盤日誌「一日一枚」#141 ザ・ヤードバーズ「THE BBC SESSIONS」(Repertoire REP 4777-WY)

2022-04-04 05:00:00 | Weblog

2003年2月23日(日)



ザ・ヤードバーズ「THE BBC SESSIONS」(Repertoire REP 4777-WY)

(1)I AIN'T GOT YOU (2)KEITH RELF TALKS ABOUT THE BAND'S BACKGROUND (3)FOR YOUR LOVE (4)I'M NOT TALKING (5)I WISH YOU WOULD (6)KEITH RELF TALKS ABOUT USA TOUR (7)HEART FULL OF SOUL (8)I AIN'T DONE WRONG (9)TOO MUCH MONKEY BUISINESS (10)LOVE ME LIKE I LOVE YOU (11)I'M A MAN (12)EVIL HEARTED YOU (13)INTERVIEW ABOUT THE 'STILL I'M SAD' SINGLE (14)STILL I'M SAD (15)HANG ON SLOOPY (16)SMOKE STACK LIGHTNING (17)THE YARDBIRDS GIVE THEIR NEW YEAR'S RESOLUTIONS (18)YOU'RE BETTER MAN THAN I (19)THE TRAIN KEPT A-ROLLIN' (20)SHAPES OF THINGS (21)DUST MY BROOM (22)BABY, SCRATCH MY BACK (23)KEITH RELF TALKS ABOUT HIS SOLO SINGLE (24)OVER UNDER SIDEWAYS DOWN (25)THE SUN IS SHINING (26)SHAPES OF THINGS, VERSION 2 (27)MOST LIKELY YOU GO YOUR WAY (AND I'LL GO MINE) (28)LITTLE GAMES (29)DRIKING MUDDY WATERS (30)THINK ABOUT IT (31)INTERVIEW WITH JIMMY PAGE (32)GOODNIGHT SWEET JOSEPHINE (33)MY BABY

<制作データ>

英国のロックバンド、ヤードバーズは65年から68年にかけて、BBCのラジオ番組にたびたび出演し、演奏をレコーディングしているが、これはその総集編ともいうべきアルバム。

彼らの演奏のほか、メンバー・インタビューの抜粋も収録されている。

(1)~(4)は、エリック・クラプトンが脱退し、代わりにジェフ・ベックが参加してまもない、65年3月の録音。

(5)~(8)は同年6月、(9)~(15)は8月、(16)~(19)は12月、(20)~(21)は翌66年2月、(22)~(26)は同5月の録音。

以上、いずれも第三期ヤードバーズ、すなわちレルフ、ベック、ドレヤ、サミュエル・スミス、マッカ-ティがメンバーであった時代の演奏である。

(27)~(33)は解散間近の、68年5月の録音。第五期、すなわちレルフ、ペイジ、ドレヤ、マッカ-ティの4人編成の時代に収録されたものである。

<ジャケット>

第三期のメンバー5人のスタジオ収録風景を撮った1ショット。

ベックがピックアップを付けたギルドの12弦アコギ、サミュエル・スミスがウッドベースを抱えているのが珍しい。

この編成から察するに、(14)を収録した際、すなわち65年8月に撮影されたのではないかと思われますな。

<聴きどころ>

ヤードバーズの公式ライヴ・アルバムは第二期、クラプトン在籍時の「FIVE LIVE YARDBIRDS」と、第五期の「LIVE YARDBIRDS FEATURING JIMMY PAGE」(これは発売差し止めになっている)のみ。

つまり、ジェフ・ベック時代のライヴ演奏が良いコンディションで聴けるのは、この一枚だけなので、ファンは必聴といえよう。

演奏自体もなかなか気合いが入っていて、大半はオーヴァー・ダビングをしない「一発録り」にもかかわらず、よくまとまったものが多い。

また、ジミー・ペイジ時代のライヴも、ブートでは何種か(スウェーデン、ドイツ公演など)出ているものの、やはり本盤のテイクが録音状態が一番よいので、一聴の価値はあるだろう。

ただし、欲をいえば、本盤からはすっぽり抜け落ちている第四期、つまりベック&ペイジのツイン・ギター時代に番組収録が行われていれば、なおよかったのだが。

実際には第四期はきわめて短く、アメリカ・ツアーに嫌気がさしたベックが脱退したことで、黄金のツイン・ギターは数曲録音されたに過ぎなかった。

また、インタビューのほうも、けっこう面白い。特にペイジの、声の響かない妙に女性的かつインテリチックな喋り方には、「いかにも彼らしいな」と、思わず笑ってしまった。

<曲についてあれこれ>

本盤は、収録曲も25曲プラス別テイク1曲と盛りだくさん。第三期以降のヒット、代表的ナンバーはほぼ網羅されている。

たとえば(3)は、クラプトン脱退のきっかけとなったヒット・シングル。後に10CCを結成したグレアム・グールドマンに作曲を依頼したナンバーだ。

クラプトンはこの録音を拒否して脱退、急遽、ジェフ・ベックを後任に迎えたといういわくつきの曲なのだ。

(3)同様、グールドマンのペンによる(7)、(12)も収められている。いずれも従来のブルース、R&Bカヴァー・バンドというイメージを打ち破る、ポップ感覚あふれるナンバーだ。

この他、外部作曲家への依託によるものでは、(28)、(32)などがある。

もちろん、ブルース、R&B系のカヴァー、そして改作も多く、(1)、(4)、(5)、(9)、(11)、(16)、(19)、(21)、(22)、(25)、(29)あたりがそれに当たる。

オリジナル・アルバムではメンバーの作品ということになっている(21)、(22)も、ここでは原曲の歌詞を歌っているのが興味深い。

一方、同時代のロック&ポップ・アーティストのカヴァーも意外に多いのが、彼らの特色。

たとえば、マッコイズのヒット(15)や、マンフレッド・マンのヒット(18)、さらにはボブ・ディラン作の(27)までカヴァーしいているのは、なかなか面白い。ヤードバーズというバンドの、非ブルース的な要素、多面性が垣間見れる。

そういったさまざまなアーティストの影響のもとに、(20)、(24)、(30)といった曲では、自らの独特な世界を作り上げているのだ。

(30)などは、後のレッド・ツェッペリンを十分に予感させるサウンドだ。一聴をおすすめしたい。

こうなると、既にその時期ライヴでは演奏していた「幻惑されて」のプロトタイプ、「アイム・コンフューズド」も収録して欲しかったなあ。あ、もちろん「幻の十年」も。

その二曲が加わっていれば、確実に四つ星は差し上げていたかと思いますです(笑)。

<メンバーのその後>

まあ皆さんご存じではあろうが、リーダー格のレルフはその後「ルネッサンス」等で活動後、感電事故により死亡。

ベック、ペイジは今ももちろん、現役でバリバリに活躍中。

サミュエル・スミスは脱退後、プロデューサーに転向。カーリー・サイモン、キャット・スティーヴンス、ジェスロ・タルなどをプロデュース。曲もオールマンズ、レインボウ、ボニ-・Mらが取上げている。

ドレヤは解散後、カメラマンに転職。ZEPのファーストのジャケ写は彼によるものだ。

80年代以降はグループ「BOX OF FROGS」に参加したりもしている。

マッカ-ティは、レルフと共に「ルネッサンス」で活躍。

現在も自己名義のアルバムを出すなど、地道に活動中。新生ヤードバーズ(ドレヤを含む5人編成)の結成にも一役かっている。

いずれも、亡きレルフ以外は、音楽界とその周辺で現在も活躍を続けている。

スタートは黒人音楽ファンに過ぎなかった美術学校の学生たちも、その後のポップス&ロック界を大きくリードする存在となったのである。

ミーハー・ロック・バンドから出発しながらも、世界のバンドの覇王となったヤードバーズ。その多彩な魅力を理屈抜きで楽しめる一枚であります!

<独断評価>★★★☆


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